PFCS SS劇場!

パラレルファクター カルティベイトサーバーのSSをまとめるブログです。主にツイッターでのやり取りを纏めます!

【沿玉】コーンウォール

 大人のいない公園のベンチに座る、胡散臭い帽子の男、コーンウォールは静かに語る。


 ──さぁ友よ、ご覧なさい。このお話は遠いどこかの物語。懐かしいいつかの物語。あるいは、今ここで生まれた物語。私が読み聞かせるのは、君たちが初めて知る世界の物語だ。


 紅い髪の少年が、虫歯を見せて笑う。


 ──おじさん、そんなのが本当にあった話なわけないよ。だって、この世には悪魔もお化けもいないんだから!耳のとがった人たちも、俺見たことないもん!


 コーンウォールは、片目にかけた眼鏡を揺らし、鼻の下の細い髭を撫でて笑った。


 ──なるほど、君は妖怪や精霊の民を見たことがないという。見たことがないなら存在しない、そう、言いたいのだね。


 ──そうだ!お父さんもお母さんも、学校の先生だって見たことないに決まってる!だからそんなの、いるはずがないんだ!


 コーンウォールは、一枚の絵を胸から出して、得意気な顔でその少年に問う。


 ──これは、なんだと思うね。君もきっと知っている動物だろう。


 ──……あ!狼!絶滅した、ワコクオオカミ!


 他の少年たちがざわざわと近寄って絵を見る。虫歯の少年は、得意気にみんなに語る。その様子を見て、コーンウォールは少年の髪を撫でた。


 ──友よ。君はこのオオカミを知っている。だが、私はこのオオカミを見たことがない。はてさて、このオオカミは本当に存在していたのだろうか?


 ──それは……


 虫歯の少年がうつむき、言葉につまって泣きそうな顔をする。ふと、コーンウォールが手を振ると、いつのまにか少年の前にチョコレートが現れた。


 ──!!どうやったの!?


 ──これは手品と言うのだよ。なにもないところから何かを出すことが、私にはできる。だが、オオカミを出すことはできない。出し方を知らないからね。


 ──知ってれば、オオカミも出せるの?


 ──出せるとも。


 虫歯の少年は、目を輝かせて笑顔になった。コーンウォールが少年の赤い髪をひとなですると、ぽんぽん、と手を弾ませて、愉快に語る。


 ──君は、正しいのだよ。そう、この世界はまだこの世に存在しない。だが、もしも知ることができるならば、この話は現実にあったことになる。『観測』すれば、世界は新しく増えていく。……だが、この国がこの事実を受け入れる為には、もっと理解者が必要なのだ。


 子供たちは首をかしげた。難しい言葉が多く、理解が追い付いていないようだ。


 ──なに、今の言葉は、君たちが大人になればわかること。それは、時間が解決してくれるよ。それよりも、君たちはもっと沢山本を読みなさい。


 ──本を読んだら、本に描いていることが本当になるの?


 ──さぁ、それは私にもわからない。だが、君たちが視たいと心に願うのならば心に願った者にだけ、世界は現実になるだろう。


 コーンウォールはマントをはためかせると、子供たちにそれぞれ本を手渡して、スーツケースを持ち上げた。


 ──さ、あれをみたまえ友よ。あの光は、我々が見たことがない世界、すなわち宇宙に浮く星のひとつ。そして、いずれは我々の世界の一つとなる。新たな世界でまた会おう。


 ──うん!ご本ありがとう、おじさん!……おじさん……?


 少年たちが振り向くと、そこにおじさんはいなかった。周りを見ると、少年たちの母親が、世間話をしていたり、サラリーマンが弁当を食べていたりした。


 ──おじさんは?


 ──おじさん?お姉さんだろ?


 ──ちがうよ、大男だった!


 ──僕は老婆にみえたよ!


 皆、口々に違う姿がみえたと言った。性別のみならず、角が生えていた、とか、白目が黒かった、とか、耳が尖っていた、羽が生えていた、など絶対間違えないであろう特徴を言った。


 ──夢だったのかな……


 ──でも……


 虫歯の少年は、手に持った本とチョコレートを見て、笑顔で答えた。


 ──コーンウォールはほんとにいるよ。だって僕たち、見たんだもん!


 ──本に書いてる話も、ほんとかな?


 ──ある!


 赤い髪の少年は虫歯を見せて、大きく笑った。