PFCS SS劇場!

パラレルファクター カルティベイトサーバーのSSをまとめるブログです。主にツイッターでのやり取りを纏めます!

魔女みならい

 この森も目印くらいつければいいのに。こんなんじゃ、宅配とか使えないだろーにさぁ。たまにはピザとか食べたくならないのかな、精霊って。まぁ、よそと関わる必要がない気楽な生活に憧れがないわけじゃないけど。
 でも、毒キノコを使うなら万一のことを考えて医者が来れるくらいにはしておくべきだよ、絶対。だってこの森、道らしい道はないし草は生え放題だし、やたら成長が早い植物なんてのもある。二日三日家を開けると、素人目じゃ別世界に変わってるんだもん。まるでおとぎ話だ。
 ほら、ここからは日の光も当たらない。暗くてじめじめしてて、奇妙な動物の鳴き声だって聴こえてくる。キョウキョウと?シャーシャー?なんかそんな感じの音。あの音は、ボクのことを見てるのかもしれない。ね、凄い不気味。
 さて、今日の荷物に灯りは入ってないよ。灯りを灯すには火が必要だし、油は買わなきゃいけない。毎回毎回補充するために町に出るんじゃ、面倒だししんどい。
 そんなときこそこの本の出番。触媒は……現地調達だけど、まぁこれでいいや。この草は薬草のひとつで、森に縁がない人からすればカンテラ油くらいの価値はあるし。
 祈りやすいように木の枝で陣を作って、と。よし、簡易サークルも出来て、これで条件は満ちた。
 
 イメージするのは灯り。闇夜を照らす月明かり。信仰は夜空に煌めく一番星。よりしろたる血はキズナオ草。祈れ、捧げよ、願いよ届け。この術式こそ信仰なり。
 
ぱっふるぽいふるわたぱっち!』
 
 ……………………誰も見ていないことをさりげなく確認したいんだけど、この腰つきが数センチずれるだけで失敗するから我慢。
 詠唱が森にこだまする。応えるかのように、本に書いた呪文の文字がにぶい輝きを帯びた。やった!身もだえするほど恥ずかしかったのが決め手になったのか、正しく信仰と認められたっぽい!
 詠唱は少し声が震えたのが気にかかるな。左手に持った薬草を確認する。ほんとの形は球体のイメージなんだけど……あぁ、やっぱりね。ちょっといびつな、なんとも言えない形になっちゃってるし。ばばさまが見たらイッヒッヒって笑いそうだなこれ……。
 気になるコストは、まぁ森を抜ける位までは保ってくれればね。またやるのはちょっと嫌だし。ボクはそういうタイプの女の子じゃないんだ……。本当だって……。
 
 灯りはボクの1m先辺りに浮いている。ボクが歩けばこの灯りも一緒に動く。これは、ボクが考えたそういう概念の『魔術』。つまり、ボクは『魔女みならい』ってやつ?
 もちろん、世に出回ってる空想のお話の『魔女』じゃない。ボクのこの力には原理があるから、言わば『科学』の結晶で、それは意外にも単純なものだった。
 人間の上位種族と考えられている、耳の尖った精霊たちは、僕たち人間では知覚できない不思議なものを自由に扱う感覚が備わっているんだってさ。人間はそれを『マナ』とか『オド』とか、『エーテル』なんて呼び変えてるけど、つまりはこの地に昔からあるエネルギーのこと。ばばさまは「そんなに小難しく考えるのは人間くらいさ、イーヒッヒ!」って言ってたけど。
 科学で解明しようとすればするほどこのエネルギーとは縁が遠くなって、理屈じゃなく体感で感じようとするほど近しいものになる。その、「なんとなくある」って感覚をボクは最初からもっていたみたいだから、多少は才能があるのかも。
 
 原理はこの『魔導書(スペルブック)』と、特殊なインクで書いた『呪文詠唱(アリア)』で作る、簡易的な『おまじない』。おまじないは人間にも効果があって……っていうか、それが精霊の加護の根本なんだって。ばばさま曰く、人間は信仰の方法を間違ってるだけで、近いことは割りとしてるそうな。
 ともかくまず、スペルブックに願いを込めたアリアを書く。これはボクの手書き。響きやリズムを揃えて自然な想いの力を書くことで、このアリアに思い通りの『意味』が生まれる。コツは、『言葉』じゃなくて『唄』にすること。そっちの方が、連想させるイメージが壮大だから。
 そこまで出来たら次は、『祈祷』に入る。おまじないは必ず『誠意』を見せなきゃならない。そこまでしないと、人はなにかを心から信じることが出来ないんだって。お賽銭に少ないお金より貴重な宝石を入れたら、『ここまでしたんだから良いことがある筈』って思えるよね。その信じる心が、信仰なんだって。
 ボクはまだ未熟だから、サークルを作ってそれをちょっとした神殿に置き換えてるよ。昔の人々は、大きな祠とか、社のようなものを用意したりしてた。場所とか雰囲気にこだわるほど本格的になるって理由。くだらなく感じるかもだけど、実際結構臨場感とか出る。
 そしてもちろん、お祈りはタダじゃない。地獄の沙汰も……なんて言うし……。人間が自分の分をわきまえない奇跡を起こすのだから、精霊と違って代償は払わなきゃいけない。それが『コスト』……。お供えもの。
 
 ここまで揃いさえすれば、あとはスペルブックがボクの期待を加護に変換してくれる。精霊に近い生物とされる『雲羊』で作った羊皮紙の本だから、こちらの願いに応えてくれる。
 そのために、スペルブックには『想い』を形にして記す必要があってね。それがこのインクで書いた『アリア』ってわけ。アリアは声に反応するから、直接羊皮紙に刷り込まれ、ボクの言葉を変換し加護に変えてくれる。
 その際の躍りは……ただの儀式。覗くんじゃないぞ……。
 変換された『信仰』は『加護』となり、コストに使った媒体を通して具現化される。
 
 それが、この魔術の原理……なんて話してるうちに、はい、到着。なんとかコストも持ったみたいだ。以前は何度も途中で途切れて、結局ばばさまに先に見つかってたけど、ボクの魔女としての素質もどんどん成長してるってことかな。人前では使えないけど絶対。
 
「ばばさまー。頼まれてたの持ってきたけどー」
 
 ……まったく反応がない。留守か。あんなによぼよぼなのに、どこかアクティブなんだよな……。時折不安になるけど、でも精霊は長寿の種だから大丈夫だっていうし。今回だってこの頼まれてたキノコ、結構遠くで険しいところにあるのに自分で取りに行こうとしてたんだから。修行ついでに引き受けたけど、結局いつかまた自分でとりにいこうとするんだろうなぁあのおばば……。
 
「カァー!!」
 
「うわわ!!って、なんだ、今日の店番はチドサか……」
 
「カァー!!カァー!!」
 
 この黒い鳥は、ばばさまの使い魔のチドサ。契約がどうだのと、なんだかいろいろとあってばばさまになついてる感情豊かなペットのこと。他にもいろいろいて賑やかで、老女一人で暮らすのも寂しくないんだって。……まぁ、こいつは特にやかましいというか……
 
「カアァァー!!」バッサバッサ
 
「わわわ、な、なんだよ!!ちょ、やめ、ボクだって!!エナン!!『エナン・ポティロン』!!」
 
「カァwwwカァwww」
 
「……こいつ……わかってやってるだろ……」
 
 ……よく、人を馬鹿にしてくるイタズラ好きなやつだ。なんでわざわざこいつが店番をしてるんだろう……。なんかばばさまの笑い声が聞こえたような気もするし……。
 
「はぁー……ほら、店番。仕事仕事。これ、ばばさまが欲しがってたやつ。落とすなよな」
 
「カァ」
 
 ひとしきり満足したのか、僕の差し出した紙袋をくわえると、部屋の奥までゆったりと飛んで行った。チドサはめんどくさがりだけど、あぁして素直に働くってことは店番でずっと暇してたのがよくわかる。
 さて、届け終わったわけだけど森で歩き疲れたし、ちょっとお茶でももらっていこうかな。……と、戸棚に目をやればまた何か怪しげなものがある。
 
「なんだ、ばばさまの新薬?こんなところにおいて不用心だな……」
 
 ばばさまこと『クラウィッチ・パンプキン』は、薬を生成する加護をもつ精霊。たいてい趣味で作っているらしいんだけど、その効果は結構すごいのが多いらしくって、ここクローネンベルグではそれなりに高値で売れるって評判だ。なんでも、神出鬼没なうえに気まぐれ屋だし、必ずしも売ってもらえるとは限らない。お宝をこうやって置いておくってことはつまり……。
 
「……すこしくらい、もってっちゃっても構わないってことで……ふっふ……」
 
 お遣いのお駄賃としてちょっと拝借させてもらおう。なんたって、スペルブックはコストが必要で、ただでさえお金がかかるんだから……。ばばさまの薬なら上等な宝石くらいの価値がある。やりたくても出来なかった大型の魔術、シトロンマカロンマシュマロンも試せるかもしれない!
 いそいそとチドサに見つからないようにしまっていると、薬の下から紙が一枚、はらりと落ちてきた。
 
「なんだこれ。えーっと、グラマーキノコ、美声草、ラジビスクスの羽根……どれも女の子が夢見てる超高価な美容品の素材だけど……薬の材料?ってことは……」
 
 この薬はもしかするともしかして、ごくまれにグラマラスに変身してるばばさまの美女変身薬では……!?だとすると、この薬を飲めばボクもたちまちオトナの美女に大変身できるってことだろうか……。そんなまさかとは思いつつ……。
 
「……ちょ、ちょっとくらいなら舐めてみても大丈夫か……」
 
 ためしに、ちょっとこぼした薬をちょっとだけ舐めてみた。
 
「うわ……まず……」
 
 苦さとあまったるさが混じって、強い香水のような鼻をつんざく後味。舐めるだけでこれってことは、飲むなんて信じられない……。薬だからって味は考慮しないのは、なんていうか、すごいと思う……。
 
「……。身体に変化はなし。まぁ、そんな美味い話があるわけないカァ……」
 
 がくりと肩を落とす。まぁ、ばばさまの薬であることは確かだし、これはコストに使えばいい。それ以上求めるのは強欲ってことか……。
 水を一杯飲んでから、チドサに一言いって帰ることにする。
 
「そろそろ帰るカァー。チドサー!ん……?ボク、今なんて……」
 
 あれ?何かちょっとおかしい。変な違和感を感じてのどに手を当ててみる。
 
「どうたカァ……?なんカ変だカァ……カァー!?
 
 !!しゃ、しゃべるたびに喉からチドサみたいな声が出てくる!!
 
「カァー!!なんだコレ!!カァカァ!!チドサー!!カァー!!」
 
「カァwwwwwwwwwwwwwwwカァwwwwwwwwwwwwwww」
 
「わ、笑うなカァー!!カァー!!うわぁ勝手に出てくるカァー!!」
 
「カwwwwwwwwwwww」
 
「カァー!!!!!!!カァ?何か紙の裏に……」
 
『よこどりするおバカさんにはおしおきだよ。イーッヒッヒ!!飲んじまったら修行不足ってことさね!!』
 
「……あの魔女ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!カァァァァァー!!!!!!」
 
「カァーwwwwwwwwwwwカァーwwwwwwwwwwwwwカ、カァwwwwwwwカwwwww」
 
「呼吸困難になるほど笑うなカァー!!」