PFCS SS劇場!

パラレルファクター カルティベイトサーバーのSSをまとめるブログです。主にツイッターでのやり取りを纏めます!

不幸な幸運男。

 途方もなく続く砂漠の先にその町はあった。からからに乾いた大地と、半壊した建物。それと眩暈を起こすような火薬の匂い。つい先程まで何かしらの揉め事があったことが伺えるが、ちらほらと見える老人の様子から、それは日常茶飯事の出来事だとわかる。
 ともかく水をもらえれば充分だ。喉が焼かれたように痛い。金は持ち合わせていないが死に物狂いでなんとか辿り着いた人気のある所だ、交渉でなんとかするしかない。場合によっては追われることにもなるかもしれないが……。手探りでそれらしい店を見つけ、転がり込むように扉を開けた。


「マスター、客だぜ」


 木製のひび割れたテーブルに足を乗せて、偉そうな態度の男が店主を呼んだ。どうにもやる気が無さそうな、かつ暇で暇で退屈そうな態度が表れている。左手の、いかにも度の高そうな酒をカラカラ回しながら、右手に持つリボルバー式の拳銃を開けては閉め、流れるような手つきでガチャリと構える。
 その一連の流れはまるで機械的に正確で、男の短気でがさつそうな印象が瞬時に払拭された。


「待てラドラー。そいつは金の匂いがしない」


 カウンターの一番奥、窓の光に隠れた影の中から女の声が聞こえる。よく見れば大柄な鎧を着込み、派手な大剣を背負った傭兵のような女がそこにいた。あまりにも目立つ派手な外見とは裏腹に、気配を殺して佇むその姿からは暗殺者じみた悪寒を抱くに充分だった。


「……つまり、俺たちの客ってこった。じゃあな坊主」


 そう言うと男は、先ほどの手弄りの動作のまま躊躇うことなく、ガチャリと銃口を俺に突きつけた。しかし俺は銃口よりも、男の鋭く射すような目に動揺して一歩後ずさりをしてしまった。
 その瞬間、巨大な鉄の塊が俺の前に突然現れ、わけもわからないまま俺に突進してきた。


「がはっ……!!」


 爆発じみた衝撃音と共に、俺は扉ごと外に放り出され、地面に叩きつけられた。そのまま鉄の塊……もとい、デカい剣が頭の真横に突き刺さる。続いて、俺の下腹部にとてつもなく重い女の膝が勢いよくのし掛かり、出したこともないような情けない声が出てしまった。


「えぅ……」


「だぁーっ!!クロバーサ!!テメェはなんだってそういつも俺のエモノを取りやがる!!」


「貴様のそれは喧しいからだラドラー。それに、斬るよりも遅い」


「テメェさんが考えなしに突っ込むからだろうが!!クソ酔っ払い女!!」


「良く言ったなラドラー!!次は貴様だ!!」


「あぁ!?やんのか!?」


 遠退きそうな意識の中で彼らの喧嘩が始まり、寝させてくれそうもなくなった。つまり、この町が半壊している理由はこの女が大暴れし、鼻をつく火薬の匂いはこの男が女に向けて打ちまくった跡だろう。殺し合いに等しい喧嘩は、男の銃弾がなくなることで呆気なく終わった。


「弾がねぇわ。そろそろやめようぜクロバーサ」


「あぁ。こちらも酒が切れた。飲み直すぞラドラー」

 

「で、その坊主はどうなのよ?」

 

「恐らく普通の客だ。弱かった。無害だ」


「あ、あんたら!!うちの客になんてことすんだぁ!!おい、大丈夫かあんちゃん!!生きてるか!?マジで!?すげぇなあんちゃん!!」


 店主と思わしきゴツい男が、ゆさゆさと俺を揺らした。胃に響くのでやめてほしかったが、この状況を異常と思える常識人に会えたことが嬉しくなった。


「……み……水を……わけてくれないか……」


「あぁ、構わねぇ!金はあいつらから取るからよ、とりあえず何日かウチで休んでけ!!な!!悪かったなあんちゃん!!」


 色々あったが、なんとか水を手にいれる事ができた。良くわからないが彼らのお陰でどうにかなった。今度こそ遠退く意識の中で、人の優しさが改めて心に染みた。