PFCS SS劇場!

パラレルファクター カルティベイトサーバーのSSをまとめるブログです。主にツイッターでのやり取りを纏めます!

屍人、鬼ちゃんの憂鬱

「おやつ。おい、寝たのか?おやつー。……ったくウチの気もしらねーで呑気に寝やがって。お前立場わかってんのー?……なんてな」

 

 屍人は寝ない。四六時中起きてるが、この時間は外に出たくない。っつーか、寝ている間にもしおやつが誰かにとられたらウチが困る。

 

 ……ウチはやってしまったことをグチグチと後悔するような奴は嫌いだ。屍になっても、後悔はしてないつもりだ。

 

 元々鬼には、後悔だなんてそんな小さなことに一生を使う時間は残されて無い。無駄なことを考えるくらいなら、過去なんて捨ててさ、前を向いて走りゃいい。最期に、気持ちよく笑って死ぬ。それが鬼たちの考え方だ。


 だから、あの精霊のもやし野郎には頭来た。


 なぁ。この国の鬼はな、精霊が死ぬほど嫌いなんだ。だって、あんなに色々できて、あんなに永く生きるのに、ちっとも楽しそうにしやがらない。ずっとクソ真面目に生きて、使命だの、義務だの、わけわからないものの為に尽くして、死ぬその時まで働きづめだ。
 馬鹿かよ。そんなん、鬼から見りゃただの皮肉だろ?耳がとんがってるやつを見ると、ぶん投げたくなってくるってもんだ。


 その点もやしはもっともっと馬鹿だ。死ぬほど馬鹿だった。頭に来るほどだった。


 なんかな、加護ってやつは、一度信仰から背くともう許してはくれないんだとさ。結局、自分の考え方次第だが、罪悪感が信仰を薄くするんだとさ。情けないことにそいつは、若い頃のやんちゃが災いして精霊としての在り方を失っちまったってわけ。
 馬鹿だよな。子供の自分じゃ選択を間違えたっても、些細なことだろ。そんなに責めて何になる。大層な寿命を持ってんだ、いくらでも取り返せる時間があるんじゃないのかよ。鬼と違ってさ。
 精霊の唯一の取り柄のプライドが、そのもやし野郎は、もやしみてぇに味気なかったんだよ。自信喪失、自分なんか消えた方がいい、ウジ虫みたいな存在だってよ。
 目標を失ってただ死んだみたいな馬鹿を見ていると、ムカついて仕方ない。だから、ウチはもやしを死ぬほど楽しませてやろうと思った。


 そうこうしているウチらは、たぶん幸せだったんだ。


 ウチらの終わりは突然やってきた。
 あいつが、別れを切り出してきたんだ。聞きたくもない話と一緒にさ。
 もやしはウチに突然、愛してる、って言ってきた。
 ……今更かよって、正直おもったよ。当たり前だろ。こっちはとっくの昔に愛してる。言葉に出す必要なんて、無いだろ?
 ウチはそれを改めて言うことの意味がわからなかった。でも、もやしはもっと意味不明なことを言ってきた。


「君と僕とは寿命が違う。これ以上君を愛すると、僕は失うことがとても悲しい。一緒に暮らすことはできない」


 ……もやしはその昔、どっかの人間の女と恋に落ちて、精霊であることを捨てたんだってよ。結果、女の方が先に死んだ。……夢も力も失って、精霊に戻ることも出来なかったってよ。
 そんなに気にすることかよって思ったけどな。ウチもそいつと愛し合った仲だから、精霊のことを少し理解し始めてた。精霊ってのは使命や義務がないと生きる意味がないって考える。


 つまり、もやしはたった一度の恋の為に、精霊として生きる理由を捨ててきたってことになる。


 存在意義のない精霊ほど、己を許せない者はいない、とさ。かといって律儀な奴だよ、業とやらは生き続けて払拭しなきゃいけないんだそうだ。罪を背負って、死ぬときまで生きるってさ。
 あの日ウチらは別々になった。


 ……ウチは、もやしがウチから去って欲しくなかった。でも止められなかった。さっき、鬼は後悔する暇がない、なんて言ったけどさ。……失恋ってのは立ち直るのに時間がかかるもんなんだな。そんなこと、失ってから気づくのかよ。
 精霊は馬鹿だ。もやしは大馬鹿だ。……ウチは、やっぱりもやしよりも馬鹿だった。
 いろんなことを考えた。幸せだった日を思うと、日常がこんなに不幸だと思えるなんて。鬱な気分になったけど、ウチはまだもやしを愛していたから、もやしがいつもこんな気持ちだったんだと考えると本当に悲しくて。哀しくてさ。
 まだきっと、あいつもこんな気分なんだって。どうにかできないかなぁって。そればっか考えて考えて、ウチは不老不死の噂を知っちゃった。
 ウチが出来ること。してやれること。それは、永く生き続けるもやしの側に、ずっとずっと居てやること。鬼のウチじゃどうしたってあいつより先に死んじゃうのだから、それなら……それならってさ……。


 ……泣けないんだ。泣けないのに、泣くより辛いんだ。この身体。顔もほら、赤くならないし、感情が変わったって、脈とかドクドクしないんだ。でも、悲しい。辛い。孤独だ。

 


「あのな。会いに行こうと思ったら……。もやし……死んじゃった。事故であっけなく……」

 


 今ならわかるよ。もやし、辛かったんだなって。こういうことなんだな……。寿命が長いからって、良いことなんてないんだな……って。
 ウチは鬼だから、後悔しない。もう、やってしまったことはグチグチ言わない。
 だから後悔しない代わりにな……。

 


 馬鹿でごめんって、ただ謝りたい……。

 


「なぁおやつ……寝てるお前に代わりに言うのは、やっぱり卑怯なのかなぁ……」

 

 屍人になって、今、何がしたいのか自分でもまだわからない。ただ、ウチはおやつをもう手放したくないって、そう思った。

 

 こんなウチに愛する資格なんかなくても良いから。おやつに愛される資格なんてなくても良いから。お前はウチを憎んでもいいから。嫌いでもいいから。

 

 ただ、ずっと側に居てほしい。