PFCS SS劇場!

パラレルファクター カルティベイトサーバーのSSをまとめるブログです。主にツイッターでのやり取りを纏めます!

記憶を捨てた男

 目が覚めると、俺は砂だらけの砂漠に居た。

 

 身体のあちこちは埋まり、手足の痺れと喉の乾きが思考することを許さなかった。

 

 訳もわからずただ一人、砂漠の真ん中で倒れていた。日が暮れるまで、俺は動かなかった。


 気温が下がると頭が冷え、徐々に色々と思い出してくる。

 

 俺は、この砂漠に何日も居た。

 

 何故?……そう聞かれれば、こう答えるしか無い。


『死にたかった』


 だが、肝心の理由に関しての記憶がない。

 

 何故だか俺は一人、死ぬためにわざわざここに来た。

 

 そして、またそれは失敗したようだ。


 ……また?あぁ、そうか。

 

 きっと俺は何回も、何十回も試してるのだろう。

 

 その度にこうして生き延びて、生き延びて……。


 死に損なう度に、記憶を無くしている。

 

 ということだろうか。


 記憶を失ったという違和感、実感はある。

 

 起きたときに忘れてしまった夢のようだ。

 

 さっきまで確かにあった記憶が、さっぱり消えている。

 

 何かを覚えていた、それだけが今わかることだ。


 何をやっても死ぬことはない。

 

 そして、死にかけてまた目が覚めると、何かしらの記憶を失う。

 

 それでも俺は死のうとした。


 そんな無限に続く、苦痛の伴う馬鹿げた行動を俺は何度もやってきた。

 

 俺はそんな無駄な事をするような男なのだろうか。


 あるいは、『記憶を消す』のが目的か。


 何か、『死んでも忘却したい』と願うような、面倒な記憶でもあったのか。

 

 なんにせよ、その目的はきっと叶った。今回の俺には死ぬ理由は何もない。

 

 ならば、当面は生きてみてもいい。

 

 俺は自由なのだから。


 そうして俺は砂漠の夜道を歩いた。

 

 極寒の砂嵐の中、月に煌めく泉を見つける。

 

 水面を覗くと、酷く隈の浮かんだ『人間』が写った。


 背後には何もいない。

 

 何かがそこに居た筈の、忌々しい何かはそこにいない。

 

 それが何なのか今の俺にはわからない。

 

 だが、前までの俺はきっと、そいつを忘れたくて、死ぬほど忘れたくて仕方がなかったんだな、と思えた。


 旅立とう。

 

 まっとうに生きてみよう。

 

 絶望に生きたであろう過去の俺達に、俺は感謝の別れを告げよう。

 

 俺はもう、お前達とは違う男となった。


 だから名前も捨てていこう。

 

 今度は、死なずに。

 

 追悼の意味を込めて。

 

 二度と名乗らないその名をここに捨てていこう。

 

 

 

 

「──さようなら。安らかに眠れ、『アバターラ』」