PFCS SS劇場!

パラレルファクター カルティベイトサーバーのSSをまとめるブログです。主にツイッターでのやり取りを纏めます!

稲妻海賊団のカルヴァトス探検記

 お宝を匂いで探すことのできる狼型のサターニアのヤミタと、その付き人であり刀の達人でもある老人ゼンロを仲間に加えた紫電率いる稲妻海賊団一行は、ドレスタニア大陸の西側、カルヴァトス地方に到着した。今日の船番は床に埋まっている金弧ととばっちりをうけた冥烙、ついでに芦華である。


紫電「すげぇところだな……規格外のデカさだ……」


 紫電は砂浜に生えた、なんかやたら太くてたくましい木を見上げる。通常の幹の3倍は太いであろうその木は、ドレスタニア城の屋上にも届きそうな長さだ。試しにえいやえいやと一、二発ほど叩いてみるが、女性とはいえ鬼の、普通の木であれば数発で折れかねない威力の紫電のパンチですら揺らすことも叶わない。実にたくましい木であった。


忌刃「姉御、どいてナ」


 のそり、と前に出てきた3mほどもありそうな鬼、忌刃が拳を固めた。アニメのようにギチギチと拳が唸る。忌刃のパンチは本当に洒落にならないのだ。本当にだ。紫電はチッと舌打ち(みたいなかわいい声)をしながら、忌刃の後ろに下がった。この舌打ちは悔しさではなく、単純に木を殴ったのがこころもちちょっと痛かったのである。忌刃は、木の表面をコツコツと叩きつつ感心したように唸った。


忌刃「とんでもねェ木だゼ……海からジュースみてェに勢い良く水を吸い上げてやがる……パワーと耐水性、バイタリティに優れたパワフルな木ダ……良い形の奴を見つけりゃ大型船の竜骨にそのまま使えるだろうナ……」


 もしゃもしゃのもみあげをふんわり撫でつつ、冷静に分析する忌刃。忌刃の髭は剛毛だが毛先は柔らかいらしい。サバイバルでは火種にも使えるという代物だ。忌刃は木の表皮をじっくりと観察し、威力の通りやすい場所を探すと脇をしぼり、腰を回転させながら、固めた拳を一直線に突き出した。すごい。半端じゃない音がする。すごいパンチなのだ。数m離れたところで見ていた仲間たちの髪の毛が衝撃波で揺れる。とてもすごいパンチなのである。木は轟音を鳴らしてグォングォンに揺れたが、摩擦で湯気が立つわりに損傷は皮が一枚剥がれた程度であった。忌刃は心なしか口許を緩めた。殴りがいがある、という顔である。


忌刃「マジかヨ……とんだタフ野郎だゼ……」


ヤミタ「うぅー、お宝捜しはー!?」


 痺れをきらしたヤミタがぴょんこぴょんこしながら紫電の周りを走り回った。逸る気持ちを抑えられず、すでにケモミミと尻尾が出ている。あざとい。だが、自然なあざとさである。紫電はヤミタの頭をわしわしと撫でながら、笑顔を見せた。


紫電「もうお宝見つかっちゃったぜ!この木がそうだ!」


忌刃「俺たちにとっちゃ資源や原料も宝みてぇなもんダ……」


 成る程、と頷くゼンロ。物を見る眼に素直に感心した。鬼の価値観とはなかなか見上げたものだ。ゼンロは老後の楽しみを洞察に見いだしていた。ヤミタは依然、キョトンとしたままである。意味がまだわからないから、とりあえず尻尾をふっている。あざといのだ。


忌刃「だが、まぁ心配なこともあるがナ……」


紫電「心配?何がだ?」


忌刃「降りてすぐ見つかるようなものが、自然のまま残ってんだゼ。つまり、発見は簡単だが……」


ゼンロ「持ち帰る事は容易でない、と」


忌刃「そうダ。切り倒すだけでも半日はかかるゼ。俺でもコイツを運ぶのは気が進まねェナ……」


 喜び舞い上がったのも束の間、一同は現実を知ると落胆で肩を落とした。ガーン、である。目の前のお宝を持って帰れないなど、海賊にとっては実に歯がゆい話なのだ。紫電はかつて、無限に食べれるかと思って山盛りに作った生クリームが胸焼けで食べれなくなった事を思い出した。その例えは、恐らく意味が間違っている。


紫電「……ん、そういえば、なんか変なもんがところどころにあるな」


 ふと、目の前に転がる岩のようなものを見つけた紫電の呆けた表情につられ、一同はその物体を眺めた。でかい。その物体の周りの砂はクレーターのように盛り上がり、それが空から落ちてきたものだとわかる。


ゼンロ「火山岩にしては色も形も整い過ぎているようだが」


忌刃「……わかったゼ。姉御、伏せナ!」


 忌刃の突然の警告にびっくりし、ヤミタとともに伏せる紫電。同時に忌刃とゼンロは立ち上がり、空に向かってパンチと居合い斬りを繰り出し、すさまじい勢いで落ちるモノを迎撃した。スゴい。オーバーキルである。ひとたまりもない。ソレは中心から綺麗に真っ二つに割れ、くす玉のごとくヤミタと紫電を避けるように左右に落ちた。すると中から甘ったるい匂いの真っ白な汁が飛び散り、二人は頭からずぶ濡れになった。


紫電「きゃあ!!……じゃない、う、うわぁなんだ一体!!」


ヤミタ「あまーい!!」


紫電「お、おいっ!!ちょっと、やめ、舐めるなぁー!!」


 興奮によってほとんど獣化したヤミタが紫電に覆い被さってぺろぺろワンワンする。見せられない。微笑ましいがさすがにちょっと見せられない。そんな中、さりげなく手拭いでサッと刀を拭いたゼンロを見て、忌刃は訝しげな顔をした。


忌刃「(……落ちてきたコイツの筋をド真ン中で斬りやがったナ……。その上、まるで濡れてねェ……。ジジイ、とんでもねぇ眼と反射神経を持ってやがる……)」


ゼンロ「……優れた観察眼だ。構造を理解した上で貫通力のある打撃でなくては中身が飛散しよう」


 忌刃の視線に応えるかのように、ゼンロは刀を収めながら語る。忌刃のマックスの拳で破壊すれば辺りは白まみれだったため手を貸したつもりが、不要だったようだとゼンロは軽く微笑んだ。忌刃は面白くなさそうに鼻を揺らした。


忌刃「コイツぁココミナの実に似た果実だナ。ここまで分厚い繊維状の殻じゃ開けるのも困難だろうが、天然の樽みてェなもんダ。非常食にゃ持ってこいだゼ。殻にも使い道がある、コイツだけでも良い土産ダ」


 開けた実の外側を覆う固形の白い実をちぎり、口に含み、ゆっくりと咀嚼する。味見をするコックのようだ。体格が良い為か、なんか意外なほど似合っている。


忌刃「味も悪くねェ。好みは分かれるだろうがミネラルや糖分も豊富で、なんとも言えねェ弾力がある。毒素は問題ねェナ」


紫電「おいし……うめぇじゃんか。ココミナは殻ばっかでなんか筋張ってて喰えたもんじゃねぇけど、これはいいなぁ!次から次へとラッキーだぜ!!」


ヤミタ「うめー!!」


ゼンロ「幸先が良い、と判断するには早かろう。根本的な疑念は未だ晴れん」


紫電「疑念?」


 意外な言葉に首をかしげる紫電。ヤミタはお腹一杯で、おねいさん座りの紫電の太ももに頭をのっけて居眠りをはじめようとしていた。気づけば、片方の実は空っぽだ。夢中になって飲んでいたらしい。紫電は獣状態のヤミタのふわふわの頭を撫でた。


ゼンロ「何ゆえ誰も此の地方に訪れないのか、という事だ。ともすれば、考えられる理由は二つ。純粋な未開拓地であるか……」


忌刃「何かヤベェ障害があるか、だナ……」


紫電「障害って……ん……?なんか揺れてねぇか……?」


 その時、唐突な揺れが大地を襲った。遠くで何かが大爆発するような音と共に、空を灰色の煙が覆っていく。ヤミタは耳を尖らせて飛び起き、音の方向を見た。


ヤミタ「ふんか!!」


紫電「あ!?火山地帯かよここは!!まずいぜ、船に戻れ野郎共!!」


忌刃「待て姉御!!無闇に動くんじゃねェ!!」


 瞬間、紫電の目の前に大きな塊が落ちる。隕石ではない、先程の木の実である。爆音と衝撃で身体が弾かれ、飛ばされた紫電を忌刃がキャッチする。木の実は傷ひとつついていないが、砂ほこりがぶわっと舞い上がった。


紫電「きゃああぁぁぁ!!ななな、なに!?なに!?」


忌刃「オイオイオイ……!そういうことかヨ!!バカヤロウ!!」


ゼンロ「ぬ……!!これは……!!」


 ゼンロが落ちてくる木の実を斬り払う瞬間、空には無数の影。そう、揺れは木を根っこから直接揺らす。この木はめちゃくちゃに長く、超重い実が先端に複数ついている。もう、すごい。すごい荒れ狂うようにブルンブルン揺れているのだ。そして当然、実はもげるのである。落ちるのではない、投げ飛ばされるのだ。絶景かな、直径1m大の超頑丈な木の実がまるで流星群。数の暴力。容赦ない。タコ足みたいな大木が、タコ焼きみたいな実を投げまくり、大地をタコ殴りにする直前であった。


忌刃「このままここに居たらいずれ船も巻き込まれるゼ!!死なねェことを祈りながら走れ!!」


紫電「無理無理!!死んじゃうぅ!!」


ゼンロ「逃げ腰の割に足の早い娘だ」


 勘と運とごり押しでなんとか船まで逃げ込んだ海賊団。今朝着替えを覗いたせいで半分死にかけていた自業自得の金弧と、悲鳴を聞き駆けつけてしまったために頬に張り手の跡がくっきりと残った可哀想な冥烙は、砂浜の物音と皆の様子と甘い匂いを振り撒きながらびしょ濡れで泣いている紫電をみるやいなや、とりあえず目を背けながら急いで出港の準備を整え、大陸を脱出した。


忌刃「っつーわけであの大陸は見送りダ。イラつくが攻略すンなら陸路しかねぇナ……」


 コーヒーを飲みながら冷静に話す忌刃。モシャモシャの髭でコーヒーを嗜む大男、そんな姿がやたらと似合う忌刃だが、マグカップが小さすぎてつまむ指が少し可愛いな、と紫電はいつも思っている。


金弧「ドュフフwwwあんなエロい目に遭って諦めてないとはwwwブフォ!!」


紫電「エロい目には遭ってねぇよ!!ったりめーだ、宝を前にして逃げる奴は海賊やめちまえ!!火山があるってんなら、あの場所は宝石も採れるってこった。虎穴にいらずんばなんたらって言うだろーが!」


 金弧をぶん殴った拳を持ち上げてワクワクしながら語る紫電の言葉は、本日二度目の臨死体験中の金弧には聞こえなかった。


忌刃「果実は逃げてる最中に二つキャッチしたゼ。植物に長けた精霊とでもコンタクトがとれりゃ、環境の良い島でも育てられるかもナ」


冥烙「簡単そうにスゲェことしてるっスね忌刃……」


 走りながら降ってきた実をキャッチしたのは、ヤミタと紫電に当たりそうだったものだということをゼンロ以外は知る由もない。桁違いの体格がなせる神憑った頭上キャッチである。クールな男だ。


ヤミタ「すっげー楽しかった!!」


芦華「俺もいきてーな!!いきてーな!!出番もほしーな!!」


ゼンロ「……(私欲の為であれば、と悪事を見張るつもりでいたが、彼らは試練を好むだけやもしれん。……となれば、愚かだが愉快な者達だ。もう少し様子を伺うとしよう……)」


 今日の稲妻海賊団は敗北したが、彼ら海賊、『死ななきゃ笑え』がモットーだ。運も実力のうち。寿命短し鬼の海賊、危機は笑って乗り越える。昼は暴れて楽しめば、夜は宴でまた楽しむ。それが稲妻海賊団!最後はいつだって笑顔なのである!!

 


金弧以外。