PFCS SS劇場!

パラレルファクター カルティベイトサーバーのSSをまとめるブログです。主にツイッターでのやり取りを纏めます!

母から貰った宝物

 無傷での戦いは、どんなに優れていても不可能だった。それなら当ててしまえばいい。角度を推測して神経を研ぎ澄ませれば大事には至らない。血はやがて止まるだろう。


 僕は、そういう身体にできている。


 お母様は、死ぬ間際に遺言を残した。敬愛するお兄様と共にその声を聴いていたが、涙を流すのを躊躇い気丈に振る舞ったお兄様と違い、声をあげて泣こうとした自分からは涙は出なかった。
 僕がそういう風に作られたからだった。悲しさや哀しさ、苦痛、喜び、感情と身体の生理現象は切り離されている。戦闘に影響が及ばないように、どれほど心がかき乱されても僕は泣けない。嬉しくても笑えない。心と身体が別物だから。
 表情は、作るしかなかった。


 お母様は僕に言った。この身体はお父様からの贈り物である、と。お兄様に言った。その身体に呪いをかけてしまったと。そのどちらにも愛を込めたつもりが、そのどちらにもお父様の愛は届かなかった。それだけの業をあの人は背負ったのだ、と。


「でも、あなたたちの魂は、私からの贈り物。どうか、大切になさいね」


 あれから幾度となく戦いが続いた。十歳になる頃には、僕はお父様の期待に応え、騎士の道に進んだ。剣を握る度に苦しいと思った。嫌だと思った。しかし、どんな風に思っても僕は表情に出せない。必要もないと思い悲しみの表情はまだ練習していなかったから、僕は何を思っていても笑顔を作っていた。


 王様になった今、僕はどんな顔をしているのだろう。目の前の剣の刃に映った顔は、この世界を見捨てたような『無表情』。それでも僕は哀しいと、本当にそう思っている。
 僕にしかわからない、本当の僕の感情は、お母様からもらったプレゼントだから。僕にだけわかればいい。僕さえそれを知っていればいい。


 お墓参り。
 お母様の前でだけ、練習した新しい表情をしてみる。

 


「『寂しい』って表情は、これで合っておりますか、お母様」

 


 墓石に映った表情は、やっぱり楽しそうに笑う、いつもの僕の顔だった。