PFCS SS劇場!

パラレルファクター カルティベイトサーバーのSSをまとめるブログです。主にツイッターでのやり取りを纏めます!

気付かれバクセラ

 ドレスタニアの庭で昼寝をしていた私に声をかけた者は、元国王の若造だった。てっきりあの夜のことを思いだし指名が来たものかと思ったが何を考えているのか若造はあの『フリカッセ』についてこいと言い出した。
 歳のいった妖怪ならばあの国は誰でも知っていよう。狂気に満ちた爺が目をつけた幼い妖怪を囲い、服従させ管理しているあの頭のおかしい国だろう?今さらあんな国の名を聞くとはな、時代の流れは存外に早い。
 火をつけてしまった煙草を最後まで楽しむまでは返事もできんものだ。渋っていた訳ではないが忙しい私は娯楽に集中していると、突然見慣れない女が前に立ち、この私に対しそそるような礼をした。馬車で泥を跳ねかせ愉快に笑いながら町を汚して回る豚のような太った貴族が、庶民の何倍も高い金を悔し顔でテーブルに叩きつけ、身分違いの娼婦に為す術もなく震え喘ぐようないかにも滑稽な姿だ。愛らしくて仕方がない。
 欲望に忠実な姿は悪くない。妖怪は元より正直な種族だ。頭を垂れて恥を捨てれば何でも叶うと思っている人間風情に施しをしてやりたいと考えるのは極々当たり前の事だろう。サービスしてやるさ、可愛い子豚には特別優しくな。
 重い腰をあげるには杖が必要だ。息切れするほどに衰えたつもりは毛頭無いが、なに、使ってみれば中々どうして具合が良い。良いものは使う。私は無くした鉛筆や消ゴムに諦めがつかない神経質なタイプでな、一度私のものにしたら最後まで、最期まで使うさ。ボロボロになり、途中で折れ、埃にまみれ墨だらけに変わり果て血で滲みカビが湧き異臭を放ち毒を撒き散らし始めても遣い潰す。そんな杖が、旅には必要だと最近思うんだ。
 私の杖が、カツカツカツと音を立ててやって来る。おっと、どうしたことかね、少し痩せたか?器用な奴だ、『骨から痩せる』とは。瞬きの回数も一段と少ないじゃないか、それにフラフラとやかましい振動がする。そのような服を許可した覚えはない。また長い髪をパラパラと、耳障りにも程がある。
 さて、私は学こそ無いがね、嘘を見抜く力はあるんだ。覚えた顔は忘れない。覚えた『振動』も忘れない。私の所有物に『色』をつけた愚か者も、必ず捜し出して礼をするんだ。そこで問題だ、お前をそんな風にしたのは誰だ?あぁ、言わなくても良い。『お前は』知らないだろうが、私は私以外が発する音が嫌いなんだ。だから私が『自分で聞こう』じゃないか。
 空を見上げても日が射さない。人間共の鼓動は少し早い。耳障りなガキもいない。なるほど私にとっての理想の世界だ。実に落ち着く。そして、実に『つまらない』。
 煩わしさがない。鬱陶しさがない。怒りが湧かない。悲しみが起きない。呆れる対象がいない。苦しみが存在しない。何一つ、『面倒臭くない世界』だ。これが私にとっての『理想』とはな、不愉快極まる。苛つく隙もあったもんじゃない。『穏やかな気分』など求めていないんだ。


──お前ならばわかるだろう?私の淀み淀んだ価値観が。なぁ、『バクセラとやら』。


 私の『代理』の代理など、貴様にはできるまいよ。今日は『不快』なほど『愉快』な日だ。私に悪夢以外を楽しませた無礼は、この私の杖を真似た健気な考えに免じて一度だけ許してやろう。『一度だけ』な。

 

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 この者の夢は安定。理性良好。精神的歪みは常軌を逸しているが正気は失っていない。夢の世界の中で自我を保ち長く維持している。混乱は見られない。脅威となり得る可能性は濃厚。対処可能。目的意識の一貫性を確認。他二人、アルビダの娘は過去に依存性あり。将来性不安定。矯正可能。欲の深層心理に父親の特殊性癖との関連性を確認。理性不安定。目的意識安定。自己理解確定。サターニアの乙浪、過去との決別の意志を確認。将来性未定。母性の発達を観測。目的意識は希望。恐怖、不安、困惑を強い精神力で対処可能。行動理由に息子の存在を確認。安全性良好。対象三名、敵意無しと断定。『ロクショウ・ヴィルヘルム・フリカッセ』『トリコデルマ・ブロックマルツ』『アルテルナリア・ベーレンアウスレーゼ』『アスペルギルス・ヴルストヒェン』および『バクセラ・ヴァッサメローネ』との接触を許可する。