PFCS SS劇場!

パラレルファクター カルティベイトサーバーのSSをまとめるブログです。主にツイッターでのやり取りを纏めます!

【サバトファイル】「オートマチック」

ガーナ「事象をループさせるサバトか。そりゃまた厄介極まりないな」


老人「実際、今まで処理してきたサバトは物質的な奴らばかりですぜ。まぁ、一筋縄じゃいかないのは分かってますがね。姐さん、本来ならどうやってこの状況を乗り越えるんで?」


エリーゼ「事実上、この段階に進んだサバトを止める策はないわ。概念と化してしまった以上、とれる方法は対処のみ。ま、早い話が『逃げる』ってことよ」


老人「うすうす感づいちゃいましたがねぇ……旦那の方法は?」


ガーナ「まずは、サバトを解析するところからだ。概念と言えど、奴らも自由な訳ではない。あの解剖鬼が持つピエロも、存在し続ける為には条件があっただろう。奴らの狙いは存在の定着。取り返しのつかない状態になる前に無力化することこそが我々の使命……乗り越えるためには頭脳でもって対応する他あるまい」


老人「あの、爆弾野郎は対処できるってんで?仕事はきっちりやりますがね、どんなことにも専門ってもんがありまさぁ……俺が出る幕なんてあるんですかねぇ」


エリーゼ「それを言ってしまうのなら、コレに関して言えばあなた以上の専門家はいないと思いますけれど?老人さん。サバトへの対処は戦闘でもなく、技術でもない。目的へと直進するプログラムを破壊することができるのは、筋肉マンや武術家ではなく『エンジニア』でしょう?」


老人「へぇ、まさか電線一つ通っちゃいない国の娘さんから『プログラム』って言葉が出てくるとはねぇ。言いたいことは察したが、つまりサバトの正体は『迷子のガキ』って訳だ」


ガーナ「そうだ。やつらはそもそもこの世界に侵入した時点で行き先を見失った『死なない無知な蛹』に過ぎん。孵化の仕方も分からず、理性も存在しない。概念として存在するための『ルール』がわかっていないのだ。手探りで存在を構築しようと躍起になっている」


エリーゼ「そこを我々が、先に理解することで『成虫の姿を変える』というわけ。迷いの森に矢印をつけ、定着しても無害になるよう仕向ける……わかりますね?あなたなら」


老人「把握は出来ますがね、そりゃ理解とは違うもんだ。で、今回のサバトを対策するに当たってもう一度そいつの詳細を説明してもらおうか」


エリーゼ「えぇ、このサバトに影響を受けたと思われる『食欲の眼』を持つサムサールの若者は、友人の証言によると自分の『両目』に酸を塗ってからおかしくなった、とのことです」


ガーナ「邪眼のみを残し失明……この頃から近隣とわめきあいを繰り返しおかしな状況になっていったそうだな」


エリーゼ「はい、サバトの手によるものと断定したのは老人の録音記録から。この後一週間ほど、罵り合った後に眼を見せ、自宅に戻り食事をする風景が続きますが、その罵り合いの言葉が『一字一句違わない完全再現』であることが判明。何者かからの影響だと判断するには充分な情報です」


ガーナ「油断したな。我々が気づかなければこの青年の周りは愚直に同じことを繰り返す固有の空間になっていたところだ。つまり、完全体のサバトまでもうすぐだったわけだな」


老人「予測の範囲ですがね、彼に『違う日常を視認させる』と、同じような状態……つまり『巻き戻し』が行われまさぁ。止めようとしても、関わりあった奴らがループに加わり、巻き戻すまでの時間が進むだけですぜ」


ガーナ「だが、分かったところでどうする。この青年に我々が絡めば、我々も同じように繰り返しの世界へと閉じ込められてしまうわけだろう?」


老人「自分で言っといてなんですが、実は実験したいことがありましてね。それには旦那の協力が必要なもんで。いいですかい?」


ガーナ「む……。改まってお前に言われるとかなり不安なのだが……。ところで、さっきからキーキーうるさいその箱の中身はなんだ?」


老人「コイツが今回の鍵です。なぁに、なんの細工もありゃしない二匹のネズミですが、この餌やり機は中々特殊でね。まぁ、ざっと数年はネズミの好物を自動で与えてくれる。あとはこのケースごとエルドランの倉庫にしまっちまえば、今回の件は解決するはずですぜ」


ガーナ「……?どういうことかはしらんが、まぁいい。それで、何を協力すればいい?」


老人「旦那達なら簡単なことですぜ。ただ俺達で、数時間こうして会話してるだけでいい。まぁ、後で説明しますよ」


ガーナ「なんとも腑に落ちんな……。まぁよかろう。それにしても、事象をループするサバトか。そりゃまた厄介極まりないな」


老人「実際、今まで処理してきたサバトは……ぐ……」


ガーナ「む……?どう……し……」


エリーゼ「これは……催眠ガス……?しまっ……」


***


「……きろ……おきろ……!!成功したようだぞ!!しっかりしろ!!」


ガーナ「む……解剖鬼……」


老人「すいませんね王の旦那、どうも手荒で……だが、約束どおり記憶は戻ったろう?この医者の旦那は、腕は確かですからね」


解剖鬼「胸糞が悪い。二度と協力する気はないぞ。もうこんなことはやめてくれ、おかしくなりかけた」


エリーゼ「いたた……頭痛が……一体何があったんです?」


解剖鬼「24時間だ。24時間、お前らは何度も何度も同じ話をネズミの前で繰り返し続けて、私がそれを催眠ガスにより強制的に遮断した。くそっ……!気持ちが悪い……」


ガーナ「あぁ……そうだったな。こうしているということは成功したととって良いのか?再現のサバトだ、また同じループに巻き込まれないとも限らん……」


老人「大丈夫ですぜ。現実の証拠はこうしてテープで撮ってますから、後で観ましょうや。なかなか面白いですぜ?」


解剖鬼「やめろ!!何を馬鹿なことを!!それはすぐに破壊するからな!!」


エリーゼ「結局……私にはよく分からなかったんですが……説明してもらえますか?」


老人「あぁ、簡単なことですぜ。このサバトは『ループ』のサバトじゃない。強いて言うなら、『オートマチック』のサバトだ」


ガーナ「『自動化』か。同じことを繰り返させていたのではなく、何もかもを『全自動』にすることを目的にしていたわけだな」


老人「あり方としては遺伝情報のみで産まれ死に行く虫とか、海や台風なんかの自然現象に近いですねぇ。奴の作ろうとした世界には『永久機関』を理想とする願望が見て取れた。この状態を蛹ってんなら、完全体になっちまったら全てを規則正しく動かし、外的要因すらも『動力』に変える、無限の世界になるってことです」


ガーナ「性質に気づいたのはどういった訳だ?」


解剖鬼「気づいたのは私だ。たまたま悪趣味な記録を見せ付けられ、青年の未来を疑問視したのが始まりだった。眼を潰したのは誰かに異変を指摘されたが故の、最初のループから逃げるための行動だろう。だが、実際に待っていたのは『新しいループ』だ。要するにこの現象は、『外的要因に妨げられたら新しいループに変わる』ということだ」


解剖鬼「ループが繰り返されるのは、断片だ。サムサールの若者は目こそ見えなくなったが、朝の挨拶だけは変わることが無かった為、挨拶をした者をその後のループに巻き込んだ。この時点でこの青年が他人をループに巻き込む条件は、『挨拶を交わされたら』ということになる」


老人「そこで俺がその謎を解明するってことを条件に、王の旦那と姐さんに『忘却薬』を飲ませた。直前の事を数時間ほど忘れる薬でさぁ。飲む前に話したことは、『ループをペストマスクの旦那が催眠ガスで断ち切るまで、同じ会話を繰り返す』。お陰で成功した」


解剖鬼「老人はお前達に薬を飲ませると、真っ先に青年に挨拶をした。その他のループに巻き込まれている者達はいつもより深く眠ってもらっているところだ。このサバトは『核』となる事象があり、それはループを遮断した段階で誰かの手に渡る。リピートを開始した瞬間を見定めることにより、この対象を老人に移行させ、青年は気絶させて眼の治療をするため病院に運んだ。彼が目覚める前に、老人が新たなサイクルを作り出すことで移行するのではないかと考えた」


エリーゼ「なるほど……つまり老人は、そのサイクルが始まる前に自ら『録画ボタン』を押し、サバトに『ループしていると勘違いさせた』わけですか」


老人「その通りです姐さん。勝手に俺らがループを始めちまえば、このサバトは新しいループの核を形成する手間が省ける。そして、このループに影響を受けさせる対象が必要で、それがこの『ネズミ二匹』というわけでさぁ」


解剖鬼「大まかだが、このネズミは一日に取る食事の回数が非常に多い種で、その食事サイクルとループの感覚は近い。私はこのネズミを注意深く観察していたのだが、6時間ほどお前達がリピートしていた時に完全にサイクルは安定し、影響を受けた。おそらくは、老人がネズミを説明するくだりの際にケースを二度ほど叩いたことがループのきっかけに変わったからだろう」


老人「青年を襲ったサイクルは間隔が丸一日と長かったが、俺はそのループの感覚を20分やそこらに抑えた。このネズミどもは俺達の会話が六回リピートされるごとに餌を食べ、二度食事したら寝るサイクルを作り出したらしい。このサバトは、そうやってサイクルの時間を徐々に調整するんでしょうねぇ……安定さえすれば、数年、数百年という単位のサイクルを産み出す。世界の成り立ちとして間違ってるとも言い切れませんや」


ガーナ「驚いたな……。つまり、このネズミはサバトと共にしばらく生きることになるが、外に出さなければ閉鎖的な世界というわけだ。上手いこと考えるものだ」


エリーゼ「でも逃げ出したら大変なんじゃないですか……?増えたネズミの感染力って凄いですし……」


解剖鬼「仮説に過ぎないが、このサバトは人型という対象を核とすることが不味いのであって、こうして小さな存在に変えれば無害となるのではないかと思われる。ネズミが行動できる範囲は広く、同一の場所に戻ってこれるほどの知能はない。核が新しいものに変わるとしたら、それも結局はネズミだろう。このサバトは『ネズミ』という世界を作ったってことだ。繁殖し、弱肉強食があり、遺伝して生まれ変わる無限の世界だ。……それは既に存在している。後は大自然と同化するだけの問題だろう」


ガーナ「今後自動化するとしても、例えれば『蚊が腕に止まれば叩き落とす習慣』程度のサバトってことか。……考え方の勝利だな。すまない、苦労をかけた」


老人「俺は金がもらえればそれで。ただ、今回は流石に骨が折れやした。ってわけで……」


ガーナ「あぁ、出すさ。出せばいいのだろう……!!くそっ……一人で解決されるとは……」


解剖鬼「待て!!私にも報酬はあるんだろうな!?っていうか、MVPは私だろう!?カラクリ人形状態のおっさんと爺を視続けるなんて、危うくトラウマだぞ!!」


エリーゼ「あなた達……よくそんな平然としていられるわね……。はぁ……疲れた……」

 

 


エリーゼ「でも、青年はどこからサバトを……?一体、ドレスタニアに何が……」