PFCS SS劇場!

パラレルファクター カルティベイトサーバーのSSをまとめるブログです。主にツイッターでのやり取りを纏めます!

【アイラヴ祭】レンのライブ

 砂嵐が駆け巡るような轟音と同時に暗くなる会場。バイオリンの音が静かに流れ、観客の声が完全に途切れる。やがて、その音は小さくなり、闇は音も光も、何もかもを飲み込んだ。その空気に息も据えない観客たち。
 突然、ステージの中央に、薄暗いライトがあてられる。一本の剣を地面に刺すように、膝をついて頭を下げる騎士のシルエット。きらりとライトに反射するサファイアの指輪が、観客の視線を集めた。


──我が剣は主の元に。信じるならば手に取るがいい。今宵、僕があなたの剣となろう。


 シルエットはゆっくりと立ち上がる。首から下げた飾りが、シャランと音を立てた。そして、突き刺さった剣を勢いよく引き抜くと、頭上に掲げて一気に太陽のごとき光がバックステージから輝き、各スピーカーから爆発する炎のようなドラムの音が会場をたたきつけた。
 観客は剣を構えたレンの姿に見惚れるも、ドラムの音に合わせて、まるで戦場の戦士の如く叫ぶ。レンは空を見続け、剣は天空の先を指しつづける。その光景は、まさに聖戦の前夜。集まるは2000人の兵士たち。共鳴は大隊の志気を鼓舞し続け、観客のテンションが最大まで引きあがる。
 しばらくしてレンは、興奮する兵に向かって剣を振り、観客の声が切り払われるように再度静寂を生み出した。奥からドレス姿で現れるラン。手に持つバイオリンをゆっくりと鳴らしながら歩く。
 ステージ中央でお互いを見ると、レンはランを背に向けた

 

 

──この剣を抜いた日の事を あなたは覚えておりますか。

 


 左手に持つマイクに囁くように歌う。剣を片手で振るい、地面と平行に持つ。剣先は全くぶれず、二人の柔らかい髪の毛だけがふんわりと踊る。

 


──止まない雨が唇を震わせた あなたを守りたいと思った。

 

 剣はそのままランの首元に宛がわれる。ランは、バイオリンを引く手をやめることなく、切ない顔でレンの胸に背中を預けた。

 

──傷つける事しか叶わない刃 血に呪われた僕へ口づけしたあの日

 

 ゆっくりとなぞるように引いた剣を、腰につけた鞘へ収める。数歩、規則正しい動きで下がると、片ひざをついて右手を左胸にあて、目を瞑る

 

──許されるのならば今一度 あなたの剣としてお傍に。

 

 バイオリンが静かに最後の戦慄を奏でると、綺麗な音が長く、長く響いた。やがてランはバイオリンを下に置き、レンの前に手を差し出す。

 

──光指す丘の上で忠誠を誓う 我が剣は主の元に。

 

 完全な無音の中で、マイクを通すことなく、誓いの言葉を口にするレン。そのまま差し出された手にキスをする。最初と同じように証明が消え、暗闇が全体を包んだ。


──僕に構わず、お逃げください!


──なりません!貴方も私と共に!


──このままでは二人とも無事ではすみません。我が剣は主の為に……。


──……必ず、戻ってくるのです……。死ぬことは許しません。私の傍へ、必ず……!


 暗闇の中での掛け合い。証明が明るくなると、ボロボロの衣装を纏ったレンの姿のみ立っている。長い前髪で顔が隠れ、肩を抑えながら足を引きずる。膝を折り、地面に剣を置くと、悲壮感のある小さなメロディにのせて、弱々しくか細い声で歌う。

 

──誓いの証 サファイアの指輪 血塗られた僕の瞳は 未だ蒼いままだろうか


 剣に写る自分を見て、笑みをこぼす。揺れる髪の隙間から見えるその瞳は、宝石のように蒼く光った。


──我が剣は主の元に この命尽きようとも 僕はあなたを守り続けると誓う 永遠に……。


 倒れるレン。無音の中、ハイヒールの音を響かせながらランがステージへ現れる。ゆっくりとレンの傍へ歩き、手を握りしめる。


 やがて、落ちている剣を拾い、腰に納めた。その場を離れるラン。ステージの中央、立ち止まって地面に剣を突き立てると、両手で顔を押さえてしゃがみこんだ。

 


 レンとランの舞台は幕を閉じる。一切の挨拶もなく、前半のライブは恐ろしいほどに綺麗に終わった。明らかに異質、元々のレンのファンでさえ、あまりの迫力に圧倒され、その場の誰もが絶句する。この日、会場の全ての者が最大の興奮と同時に身を震わせるような感動、虚無感を抱いた。
 ゲスト席の三人の研究生は声も出せず、その隣の天帝までも、予想外の表情を作りながら、レンの姿に完全に飲み込まれていた。