PFCS SS劇場!

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【アイラヴ祭】烈火のライブ

 小雨が嵐に変わり、仮設の雨避けが役にたたなくなってきた頃、中止を予測する警備員とは裏腹に観客はヒートアップし始めた。セレアに連れられた三人のアイドルは文句を言うよりも服を押さえるのに必死になっている。その様子を見て、セレアは口許を綻ばせた。
 これが、烈火の『加護』である。精霊は気まぐれで悪戯好きな自然の中のエレメンタル達を信仰し、彼らからの祝福を受けて護られる。だが、烈火が歌うその直前、彼女の歌声が楽しみで待ちきれないエレメンタル達は、ヘソを曲げて会場を荒らしだす。
 つまり、今宵のライブは正真正銘の『満員』なのだ。風が強くなるごとに観客の期待も高まっていく。荒れれば荒れる程、自然が烈火に味方する。


 突如、風が止む。無風と化した会場に、セレア一行は息を呑んだ。あれだけ湧いていた歓声が途絶えた。上空は、この会場を照らすように雲がくりぬかれ、青空が広がる。日差しが照明の役割を果たし、濡れたステージはキラキラと輝きだした。ステージの階段が、ヒールの音を反響させる。スピーカーのようなものは一切無いが、空気のエレメンタルは烈火に合わせて楽しそうに騒ぎ、観客達の鼓膜を撫でていった。


 楽器型アルファによってイントロが流れ出すと同時に、ステージの中央に立つ烈火。烈火の切ない表情、仕草にエレメンタルの演出が混じり、観客達は強制的に感情移入させられる。セレア一行は烈火から目を背けることができず、自分達がライブ会場にいることすらも忘れていく。広大な会場に満員の客がいるのにも関わらず三人とも、この空間に烈火以外の気配を感じなかった。
 まるで、烈火だけの世界に閉じ込められたような気分だった。

 

 

~ 冷たい空 寒い風 ねぇ、もう冬だよ
日の出前 駅のホームと……~

 

 

 マイクやスピーカーのないライブ。しかし声を伝える振動はエレメンタルによって一人一人の耳に伝わっていく。烈火の声はノイズや濁りの一切ない状態で観客に届き、烈火の世界に飲み込まれた観客達は、彼女が自分だけに向けて歌ってくれているような錯覚に陥る。脳が支配され、涙が自然とこぼれ、慰めるように風のエレメンタルが優しく通りすぎていく。

 

 

 

~transfer the love 景色を変えて。
お願い。
transfer…~

 

 


 気づけばライブは終わっていた。盛り上がっていたのかどうかすらわからない。ひとこ、紫電、タオナンの三人は、我にかえると同時に、気づいてしまった。終わらないで欲しかったと、心からそう嘆いている自分に。


━━━その日三つの卵は、はじめての挫折を経験した。