PFCS SS劇場!

パラレルファクター カルティベイトサーバーのSSをまとめるブログです。主にツイッターでのやり取りを纏めます!

氷漬けの王様2

「あ、そこの方!お願いがあります!」


 旅人は声の方向に振り向いた。
 夕日が黄昏色に寂しく照らすドレスタニア国立公園、中央の噴水広場の中心に、大きな両手剣に手を添えたガーナ王の像。その前にちょこまかと動き回る青いマントの童顔の男性は、信じたくはないがこの国の現国王ショコラ。盲目の旅人にはその顔は写らなかったが、誰であるかはすぐに気づいた。


「何です?」


 この時間は、本来ならば公園の門を閉めている時間帯だが、ショコラは知りつつも些細な問題として気に止めない。それよりも、何やら四角い箱のようなものを持ちながら変にうろちょろしている。旅人はそれを若干鬱陶しく感じるも、手に持つ杖をカツカツと動かしてわざとらしく近づいた。


「お声かけしてすみません、写真をとっていただけないかと思いまして」


「……『写真』とは、なんのことです?」


「風景を絵に変える魔法の箱なんです!僕に向けてこのボタンを押すと、僕の絵が出てくるんですよ!」


「魔法の箱、ですか…!なんと素晴らしい…。それくらいならよろこんで…と言いたいところなんですけどねぇ…。あいにくと私、盲目でして。」


 ショコラはハッと驚きながら、非常に申し訳なさそうな顔をしたが、旅人にはその様子は伝わらない。沈黙を恐れたショコラが慌てて謝罪をする。


「それは…すみませんでした…。無礼なお声かけをお許しください」


 見えないことを承知の上で深く頭を下げる。旅人はあまり気にすることなく、王の前にいることに気づかないふりをしたまま訪ねた。


「王の像、夕日をバックに観るとさぞや美しいんでしょうねぇ。かの王は猛火の如く戦場を駆けたそうじゃないですか」


「そうなんですよ!ガーナ王の像はこの時間が最も輝いてみえます。国民の皆様にもそれを伝えたいのです」


「ご自分で絵にすればいいじゃないですか、その魔法の箱で。一緒に描かれたいのでしたら、誰かをお連れすれば良いでしょう」


「はっ!その手がありましたか!気がつきませんでした!早速明日にでもメリッサを呼びましょう!」


 喜びの舞を踊るショコラ。その姿は目に写らなくても、鬱陶しいということだけは変わらなかった。王のくせにこの頭の悪さと、要領の悪さ…堂々と不法侵入者を前にしてこの緩さ。旅人は少しだけ退屈しのぎのつもりで、不適な笑みを作った。


「それより、現国王様の像はお作りにならないのです?ショコラ陛下」


 王として呼ばれたことを不思議に思うこともなく、ごく自然に答える。


「僕の像ですか?それは、確かにあったら嬉しいですが…。生憎、そのようなものに割くお金は我が国にはありませんから…」


 寂しそうな声と、少しのため息をもらすショコラに、旅人のイタズラ心に徐々に火がつき始めていく。少々アホらしいことでもこの王ならば騙せる、と、半ば棒倒しの遊びのような気分になっていった。まずは大幅に、大胆に砂を掘っていく。


「良い方法がありますよ。お金も使わず、時間も浪費しない素晴らしい方法が。」


「そんな方法があるんですか!?」


 ショコラは目を輝かせ、食いついた。ここからは慎重に砂を少しずつ払っていく作業だ。旅人はショコラの手を引くと、少しずつ歩いて噴水の前辺りに誘導した。


***


「もっとだ!日光から逃げるな!!熱く燃えて、我が国で太陽を燃やし尽くすんだ!!負けるな負けるな!!重りを増やせ!!汗を撒き散らせろ!!こんなんじゃあ足りんぞ!!私に続けええぇぇ!!うおおおぉぉぉ!!」


 ドレスタニア城門前、門番の二人が胸に手を当てておじぎした。中庭から怨嗟の呻き声と聞くに耐えない暑苦しい雄叫びが聴こえてくる。火を操るナツメですらも、この中に入るのは遠慮しておきたい空気だった。左の門番が前に出て問いかける。


「ご苦労さまであります!!我が国は現在、朝の軍事教練の最中であり、ご用がありましたら裏庭からの入城を推奨致します!!急ぎの用件でありますれば、私共にお申し付けくださいませ!!」


「入れないの?」


「はっ!!現在、ある諸事情により兵士の一斉強化期間中であります!!本日は体力、精神力の強化の為、臨時教官としてエルギス講師をお招きしており、中庭の気温は炎天下のこの場所より更に20度は高く、おまけに極めて不快な異臭を放っております!!特に斬り込み隊長、アーモンド軍曹は一際公害レベルが高く、エリーゼ外交官殿のご命令により間違っても一般市民をお通ししてはならないと仰せつかっております!!」


 より一層強く中庭から兵士達の大声が聞こえ、門の隙間から現れる湯気と蜃気楼を見てナツメはやや顔を逸らした。猛暑には慣れていたがドレスタニアの石畳はチュリグの地より固く、足に疲れが出てきている。このまま食堂に向かうよりも、城の道すがら見つけたカフェに立ち寄ってココアが飲みたかったので、用件だけ兵士に訪ねる。


「急ぎじゃないけど。…エ…外交官さんいる?」


エリーゼ外交官殿は現在ガーナ元国王陛下と共に見回りをしております!!先程伝令がございましたところ、本日の帰還予定時刻は未定とのこと!!お手数お掛け致しますが、お尋ねの場合はドレスタニア国立公園へ向かうと良いでしょう!!」


「わかった。ありがと。」


「痛み入ります!!どうぞよい一日を!!」


 深々と胸に手を当ててお辞儀をする門番。ナツメは機械的に振り向くと、トテトテと音をたてながら城を後にした。