PFCS SS劇場!

パラレルファクター カルティベイトサーバーのSSをまとめるブログです。主にツイッターでのやり取りを纏めます!

氷漬けの王様1

「何やったらこんなことになるんだ……」

 

ドレスタニアの国立公園にできる人だかり、騒ぎを聞き駆けつけたガーナが目にしたのは、ガーナの像の真横にいい感じの決めポーズで凍結したショコラだった。あまりにも完璧すぎて新しい国王の像かと思っていた国民は記念写真まで撮っている。そのクオリティの高さに、付き人のメリッサどころか外交官のエリーゼまでもが感心したほどのスタチューっぷりだった為、発見が十日も遅れてしまったのである。笑顔のままの凍結は、多分能力者だとしても難しいだろう。


「なんで溶けないのですか……もうそろそろ夏の気候ですよ……」


エリーゼは珍しくテンパっている。当たり前だが、こんな状況で十日も放置とあっては、普通に考えて死ぬからである。


「間違いない……。この馬鹿はなぜか知らんが自分で凍っている……。セイカの氷は並大抵の事では溶けんぞ……」


ガーナがナイフでコツコツ数回叩くとすぐに霜がつき、5秒とたたない間にキンキンに冷えた。金属でなくても1分で凍りつく冷たさだ。たまたま国民が自主的に柵を作り近づけないようにしていたが、ショコラの像の周囲はとても涼しく、何も知らない者たちは今も笑顔でレジャーシートを広げてピクニックを楽しんでいる。


「迅速に溶かさなくてはいかん……。熔鉱炉レベルの火力が求められるが……」


「あのご老人に任せてみては?」


エリーゼが提案をすると、国立図書館の窓から満面の笑みの老人がヌッと顔を覗かせた。


「いや、アイツはぼったくるから駄目だな」


ガーナが返答すると、窓の老人は寂しそうな顔をしながらスーっと消えた。


「お前のジュエルはどうだ」


「割りと高いので……」


駄目か、と首を降る。念のため再度説明するが、今は一国の王の命に関わる危機的状況である。


「レーヴァテインはどうです?」


「大陸ごと1000日くらい燃え続けるが構わんか?」


「駄目です」


「誰かいないのか……超火力を制御できる程の火の使い手は……」


頭を抱えるガーナ。火の加護をもった精霊だとしても、セイカの凍結を溶かすレベルを長時間維持し続けるとなるとそれはもう位の高い信仰が求められる上、扱える程度では自分すらも巻き込みかねない。明確に『専門家』でなくてはこの状況を打破することは敵わないだろう。
誰か居ないかと二人はショコラの前で立ち往生していた。


***


チュリグとドレスタニアを繋ぐ旅客船が、汽笛を鳴らしながら港についた。ぞろぞろと出てきたお客の中に、ゴシックな黒と赤の服を着て、綺麗な金色の髪をふわふわと揺らす、お人形のような女の子が一人。チュリグ国王ハサマの従者、ナツメである。
ナツメは過去に何度か目にしたドレスタニアの港の街並みを眺め、ほんの少しだけ心がおどった。しかし、すぐに王からの指名を思いだし、真剣な面持ちで封のされている手紙を取り出した。


「あっちについてから読むといいよ」


ハサマ王はそう言ってこの命令書を包んだ。忠実なしもべのナツメは意味深なハサマの指示にも決して逆らわず、言葉通りきっちりと両足で国の土を踏んでから、即座に手紙を開封した。


『頑張ってるから休暇あげる。おみやげよろしくね~ ※追伸 夜中は外出歩かない方がいいよ ハサマ』


1分程硬直するナツメ。封の中には、わざわざドレスタニアドル札に立て替えた結構な額のお金と、明日の夕方の乗船券が一枚。念のための街の地図と、赤線で引かれた王宮までの道のり。どこから仕入れたのか、王宮食堂の献立表も同封されていた。


「………………。」


考えても始まらないと悟ったのか、非常にシンプルな革財布を取りだして札を移すと、とりあえず地図をたよりにドレスタニア城へ友人を訪ねることにした。
少しだけ不機嫌な顔を作ったが、内心は安堵と期待に胸を膨らませ、大きめのブーツをコツコツと心地よく鳴らしながら歩き出した。