PFCS SS劇場!

パラレルファクター カルティベイトサーバーのSSをまとめるブログです。主にツイッターでのやり取りを纏めます!

モカ

レイリ「クロマ!繭は…!」


レイリは呼吸を乱しながら窓をあけて着地した。


クロマ「なんか朝から動きまくってるね!うわ激しっ!」


クロマは興奮気味に答えた。
レイリが来た途端に繭の動きが激しさを増した。


レイリ「これは……。羽化の予兆……!実際に見れることは少ない……」


息をのんでじっと見続けるレイリ。


そのまま二人で見ていると、数分ほどあらぶり続けた後に亀裂が入り始めた


クロマ「ところで羽化した後身体の弱さとかはどうなるの!?」


羽化した後落下などで怪我しないか心配なようだ


レイリ「モスサターニアは体毛や髪の毛がクッションになるから身体は平気……。だけど、長い期間で老化した繭の繊維に絡まってやわらかい羽が傷つく可能性はある……!」


レイリはそわそわしている。


クロマ「自然に待つより亀裂から無理矢理こじ開ければ少しは傷つかない!?」


興奮と焦りが入り混じる。


レイリ「何が正解かわからない……どうすれば……」


非常に心配そうな顔で冷や汗をかきながらキョロキョロしている。
モスサターニアの成体の死亡率は卵の孵化に続いて、この瞬間が最も多い。
行動しないで死んでしまったら嫌だと思い、クロマは持っていたナイフを使って亀裂の上下に切り込みを入れ、亀裂をより広くした。
レイリは吃驚して髪をぶわっと膨らませた。
不安と期待で動く心臓の高鳴りを感じる。
開いた隙間から中が見え始めると、そこには胎児のように丸まった赤子の姿があった。


レイリ「クロマ……!」


レイリはクロマの服のはしっこを掴む。笑顔とも泣き顔ともとれる顔をしている。


クロマ「………それで、ここからどうするの?」


ひとまず安心したのか冷静さをある程度ですが取り戻したクロマ。
ここからが本番だとでも言いたげな顔をしている。


レイリ「繭の中で、包まれた羽を大きく開く……。羽の膜は柔らかくても、支えている芯はかなり力強い……。大きく開いて、衝撃で燐粉を落とす……。」


興奮のせいで気づいていないが、最初の粉おとしは外敵から身を守る役目もあるため、咳やくしゃみを誘発する。
本来は羽を開くことで同時に繭を割るが、変異により未成熟のためか、通常繭を割るほどの羽の大きさがこの赤子には足りていない。
割けた隙間から高密度の燐粉が噴き出す。


クロマ「ソイヤックショイ」


クロマは鱗粉をまともに浴びてしまいくしゃみをしてしまった。
幸いすぐに別方向を向いたため幼子への被害は免れた。
代わりにモロにしぶきを受けたレイリは、気にも止めずキラキラと目を輝かせて幼子を見続ける。
燐粉が日の光を受けて輝き、素晴らしく、神々しく写る羽化の瞬間である。
少しクロマは思案すると繭の上半分を完全に切断し、羽化したての羽が乾くのを早めた。
幼子は数分後起き上がり自力でこちらに寄ってくる。


レイリ「……!!」


言葉が出ずにいるレイリ。
固唾をのんでこちらに来るのを待っている。
乳母としてこっちから行くべきではないと、なぜかその時思っていた。
幼子は薄く目を開くと、レイリの顔をじっと見て、突然笑顔で胸元まで飛び付いてきた。


レイリ「おおぉ…!……おぉ…?」


胸に埋まった頭を抱き締めるようにささえるレイリ。かなり混乱していながらにして、照れからか顔は赤面している。
幼子はこの時を待っていたかのように、何度も頬擦りをしてくる。


レイリ「まって、レイリには毒がある…、まってまって」


凄く凄く嬉しそうな顔で頭を支える。

 
レイリ「クロマ、とても元気だ…。元気だよ…。」


嬉しそうな顔のまま、ぽろぽろ泣き出す


クロマ「……元気でよかったね……」


目元を隠すように帽子のつばを下げ、微笑みながら答えた。


レイリ「あぁ…。よく頑張った……。えらい……。」


ぎゅっと抱き締めて、声に出さず肩を震わせる。
クロマはレイリの間横に立ち、幼子の頭を撫でた。
レイリは目を拭きながら幼子をそっと放した。
幼子は放された途端クロマにしがみついた。
クロマは驚きつつも抱き締めてまた撫でている


クロマ「この子の名前どうしよっか?」


レイリ「レイリは、習ったことがないから、言葉が得意じゃない…。初抱きはもらったから、クロマに決めてほしい…。」


羽化後に独りで幼虫の頃にいた両親の記憶を必死に辿って、思い出しながら言葉を勉強したレイリは、自身の片言の文や単語にコンプレックスを抱いている。
名付け親はこの子の将来のためを想い、クロマに託した。


クロマ「じゃあモカ……君にでもしておくかぁ。」


名前を呼んだ後、レイリをチラッと見て確認の為の間を含ませた。


レイリ「モカ…いい名前。モカ、明日から飛び方を教える。強くなれ。」


真剣な顔で向き直る。


レイリ「モカは一族と…………レイリの誇りだから」


モカはその言葉の意味がよくわからないようだったが、頑張る、と意気込んでるのか、元気よく羽根をばさばささせてみせた。


レイリ「そう、その調子」


クロマに振り返る。


レイリ「クロマ。あとは歯や神経が馴染むまで柔らかいもので食事を与える。他はあまり人間と変わらない。寝るときに羽を畳む癖をつけさせて。濡らしたまま寝ると痛むから、お風呂のあとは『ドライヤー』をして乾かしてほしい。」


クロマ「……ドライヤー……?うんわかった。」


柔らかい食事にして羽根畳ませればいいんだねと了承した。
ドライヤーという言葉に引っ掛かりを感じる。


あ、そうか、と訂正するレイリ。


レイリ「モスサターニアは家族が羽を動かして風を送り、子の髪や羽を乾かす。その相手の事を『ドライヤー』と呼ぶ。飛べるようになったら、ひとっとびすればすぐ乾く。」


そよそよと風を送るレイリ


クロマ「(王に頼んどこ)飛べるようになるまでは乾かせば良いんだねわかった」


レイリ「私は、これからガーナに報告に行く。もうしばらくこの国でモカに飛び方を教える。」


クロマに近づき、ハグをする。


レイリ「ありがとう。本当に、ありがとう…」


クロマ「……ん、どういたしまして。」


静かに微笑みながら二人にハグをされていた。


レイリ「モカ、レイリの飛ぶ姿を見て。モカも同じことができる。」


窓に立つとふわりと大きく羽を広げて、二人を見ながら後ろに飛んだ。


レイリ「また明日…!レイリと一緒に飛ぼう…!」


回転しつつ、あっという間に遠くまで飛んだ。
今までで一番楽しそうに、元気よく。
二人はレイリを窓の外から見送った。


クロマ「いやー綺麗だったねー」


モカは一生懸命頷いている。


クロマ「……言葉とか読み書きも教えなきゃね」


モカは首を傾げたが、頑張ると意気込んでいた。

 

 

 

 


レイリ「(父さんと母さんも……レイリを待ってくれてた……だろうか……)」


レイリはドレスタニアに向かって飛びながら考え続けた。


レイリ「(モカにも両親はいない……でも……家族がいる……)」


レイリ「(家族……ずっと欲しかった、家族……。諦めていた……家族……)」


レイリ「…モカ。」


レイリは飛び続ける。
日に照らされて輝く滴を拭い取りながら、家族のいる幸せを感じていた……。