PFCS SS劇場!

パラレルファクター カルティベイトサーバーのSSをまとめるブログです。主にツイッターでのやり取りを纏めます!

掃除屋

 ドレスタニア郊外にある、最小限の明かりが点ったレンガ作りのトンネルは、ベッタリと赤い天然塗料でつけられた「クソッタレ」の文字で賑やかに飾られている。まもなくこの装飾は空気によって闇に隠れ、雨の日にどこかへ消えていくだろう。その前に、この愉快な落書きを贈ってくれた画家を捜し出し、受け取りのサインをするのが俺の仕事だ。
 この国は昼間の国民の笑顔が嘘のように、真夜中は治安が悪い。現ドレスタニア王の意向により「22時から八時間以上の睡眠義務」などという、なんとも間抜けな規律があるのだが、当然反発する者が多数いる……なんて先入観があった自分を恥じる。この国の国民は寝やがる。国民だけじゃなく、警察までもがぐっすりだ。こんなもの、他国の人間の前に目隠しして尻を露出するのと変わらない。だが、夜中に何が行われてもドレスタニアの新聞には載ることはない。朝には綺麗さっぱり元通り。国民はまたぐっすりと眠れるというわけだ。


 ひょんなことからしばらくこの国に住むことになったもんで、この歳だ、夜の清掃員くらいしかやれることはないだろう?そのついでに「受け取り代理」をするのは、別に不思議なことじゃない。まぁ、詮索はやめた方がおたくの為になりますぜ。


『ボンッ』


 おっと、向こうの方で下品なインターホンが鳴った。さてと、それじゃあサインを書きにいきましょうかねぇ。これも立派な仕事なもんで。俺はピンと張った糸を辿った。
サインを書く前に少し挨拶しよう。ドレスタニアは社交的な国ですからねぇ。


「今晩は。夜分遅くにごくろうなこって」


「ぐっ……十分あれば……加護で雨を降らせて証拠も消せた……のに……」


「宛名はアンティノメルか。いつもお世話になってるねぇ」

 俺はスーツから安物のペンを取り出した。サインの欄が見当たらないが、まぁ緩い国だ、心臓にでも書いとけばいいだろう。心配なので念のため頭にも判子押しておくとする。歳を重ねると心配性になるもんで。
 おっと、手ぶらで逝かせるのもなんだ、土産に教えてやろう。


「そうだ、お前さんさっき十分で証拠隠滅すると言ってたが……」


「……ガハッ……!」


「俺が仕事を請けたのはあんたが汚ぇ絵を描く更に一時間前だ。描き終わるまで、邪魔しちゃ悪かったんでね」


 目をひんむいて驚いていた。これで、あの世での会話のネタに困ることはない筈だ。そのままそいつは去った。身体を置いてね。
 こうやってこの国の夜は成り立っている。あぁ、俺の雇い主はこの国の元国王で、報酬も中々美味しい。この国は他国に脅かされることはないのさ。……え?元王の旦那が夜を守ってくださる、だって?ハハハ、老人に笑える冗談はよしてくれ。肋骨が折れる。旦那はこの国など守ってなんかいない。


 旦那はただ、『支配した』だけだ。他国の侵略者と同じように。


 夜はもう既に侵略者の手に渡ってるってことだ。この目の前の肉の塊は、葉っぱの運び屋だ。不幸にもこいつに絵にされちまったドレスタニア人は、妙なルートで大量のブツを仕入れてくる。
 そして今日、旦那はあのトンネルで何が起きるか知っていた。俺はそこにただ向かって、落書きの掃除と後片付けを命じられた。一人はこの肉にやられたが、この肉は俺がやった。そして、任務が失敗しようものなら、俺ごと捕まえれば良い話だ。年寄りでも簡単にわかる。俺は目の前の肉を、呪詛の液体で溶かす。高い薬品だが経費が落ちるんでね。

 さて、暇潰しも済んだところで、面倒だが仕事しますかね。……なに、今終わっただろうって?いやいや、寝言言っちゃいけませんぜ、あんた。目の前にまだまだ残ってるだろう、こんなに沢山……おっと、そうか、すまない。

 


 視えないんでしたっけか、普通は。

 

 

 


━━老人はひとしきり笑うと、縛られている精霊の首を切断した。