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PFCS SS劇場!

パラレルファクター カルティベイトサーバーのSSをまとめるブログです。主にツイッターでのやり取りを纏めます!

対サバト組の夜・後編

ガーナの部屋。四人がけのテーブルに向かい合うように座るガーナとハサマ。
老人は窓際の壁に背を預けて立っている。


ハサマ「そういえばガーナ君、昨日の先回りあれどうやってやったの?」


ハサマがおやつを食べながら質問する。


ガーナ「なんのことかな?」


わざとらしくとぼけているガーナ。どこか無礼な態度を表に出して、珍しく感情が漏れていた。


ハサマ「誤魔化さないでよー、ガトー君と釣り行った時の奴ー」


ハサマははぐらかされたことにちょっと怒っている


ガーナ「知人なら一目見ればその後の動きなど手に取るようにわかるものでは?いや、最も分かりやすい人間なものでね」


(ガトーに対し)少し皮肉を混ぜて話す


ハサマ「そういうのはかなり限られてるよガーナ君」


表情は変わらないが、一応褒めてる……?


ガーナ「そもそも幽霊が金を持ち合わせてるとは思えんが、後先考えず他人の身体で釣りなど…頭がいたい…」


目を覆いつつため息をつくガーナ


ハサマ「後で払うつもりだったんだけどねー」


ハサマからの僅かな圧が消えた。怒りはおさまったようだ


ガーナ「ハサマ様のお人柄は理解しているが、我が国の客人に趣味を付き合わせた挙げ句、仮にも元王が『お金持ってませんでした』は流石に情け無さすぎて…王以前に人としてダメでしょう…。」


あきれ返った顔で両手を水平に広げ、ヤレヤレと首を傾けた。


ハサマ「そうなの?」


ハサマは少し疑問に思っている


ガーナ「人間にはプライドと言うものが存在し、意図せずとも踏んでしまったら気分を害するものだ。特に、男は厄介なことに無駄にプライドが高い。故に一般人だろうが、こういうのは良くない」


トーが取り付いた若者がハサマから受け取った札束を返す。
あの日の夜に気づいた若者は、葛藤の末にガーナへと相談しにきたのである。
ガーナは何も言わなかったが、若者は自主的に返すことを選択したようだ。


ガーナ「努力もせずに金を得ては、他のものを捨ててしまうことになりかねない。苦労も楽しむのが人生だと、彼はあの釣りで道を見出したそうだ。彼の今後の為に、ご理解ください。」


札束を素直に受け取るハサマ。


ハサマ「じゃあ今度から控えておくね」


ガーナ「それと、御礼を伝えてほしいと言われましたよ。海の食堂で働くそうなので、今度立ち寄ってやってください」


ハサマ「わかったー。ベリエラにあるのかなそこ」


ガーナ「食事を共にした場所ですな。名前は『海の家レイリ』だったか…。牧場の娘がシーズンオフの時に切り盛りしているそうだ」


ハサマ「あーあそこかー。」


ガーナ「ちなみに出来て間もない頃私も何度か通ったが、クル貝のつぼ焼きが美味い。好き嫌いは分かれるが珍味だ。」


現実で言うところのサザエ。かなり際どい沖の岩場にしか生息しないため、殆どレイリしか採りにいけない希少な貝である。雄と雌で肝の色が違う。


ハサマ「行ったら頼んでみるね!」


ガーナ「えぇ、是非。」


穏やかな笑みで返す。


ハサマ「ところでガーナ君、そこの精霊の子誰ー?」


壁にもたれかかったまま老人がやや反応する。


ガーナ「我が国の用心棒をしてもらっている傭兵です。私も素性についてはあまり深入りはしていない。」


老人「…まぁ、好きなように呼んでくだせぇ。お互いあと腐れなく。」


ハサマは呼び方をかなり考え込んでいる。


老人「無くても困りゃしませんぜ。仕事ですからねぇ」


けだるそうに中折れハットの位置をさりげなく直す。


ハサマ「…………んーそっかー」


結局思いつかなかったようだ


老人「何か御用ですかい?情報交換は金額次第だが…」


髭のせいで分かりにくいが微笑している


ハサマ「どんなのがあるの?」


興味はあるようだ


老人「王の旦那から依頼されていた怪奇事件の内容だったり…」


ガーナ「貴様、それは…」


若干慌てたガーナを目で威圧し、黙らせる。


老人「まぁまぁそう怒りなさんな、金額次第でさぁ。ビジネスに口は挟まないで貰おうか」


強く睨み返すガーナ。お互いの視線に殺意が込められている。しかし、老人もガーナも共に微笑しながらあえて視線を逸らした。


ガーナ「…まぁいいだろう。好きにするがいい。」


老人は右手を緩め、ガーナは柄にかけた左手を降ろす。


ハサマ「これで足りるー?」


ハサマは一部始終を見ていたが、気にすることなく数えていた先ほどの札束を渡した。


老人「…まぁ報告のついでですんで、今日のところは納得しますかねぇ」


顔に出さずかつわかりやすく、かなりほくそ笑んでいる老人。
ちょうど、そのタイミングでエリーゼとエクレアがシャワーから戻ってきた。
エクレアは湯気を出しながら一層ツヤツヤぷるぷるしている。


老人が胸の内ポケットから出した一枚の写真を器用に投げると、テーブルの上、ハサマとガーナのちょうど真ん中に乗せられた。


老人「南の大陸の、重い油を含んだ霧が広がる森は知ってますかい?昼間は振り替えると景色の変わるという奇っ怪な森でさぁ」


ハサマはルーカスやルビネル達と会った、随分と不快な森を思い出した。


ハサマ「あー行ったことあるねそこー」


「夜な夜なあそこで人が消えるってんで、『反抗心』の目のサムサールに頼んで『幽体分離の呪詛』を持ったアスラーンにちょっくら『立ち入り禁止警告』してもらった。奴は臆病だが、生き延びることに関してはプロなもんで」


クク、と笑う老人。


老人「すると戻ってきた彼の幽体が妙な事を言うんでさぁ。『霧の中に過去の世界が出来ていた』ってねぇ」


ハサマ「過去の世界か。それは不思議で面白そうだねー。」


楽しそうに聞くハサマを横目に、ガーナは解せない表情をしていた。


ガーナ「大規模な幻術か?」


老人「俺もそう思ったんですがね、命からがら、肉体も戻った奴の手にはこんなもんが握られてまして」


新品のように綺麗な、特徴的なポーチを出す。


老人「聞くとどうやら奴の母が作った手作りの形見だそうで。素材も質量も同じ。奴は過去の世界で再現された故郷を歩くと、母に会ってこれを受け取ったそうだ。これが証拠でさぁ」


左手で古いボロボロのポーチを出す。似ている、というどころではなかった。完璧に復元されている。


ハサマは話を聞きながら静かに目を輝かせている
ガーナはあごに手を添えながら考えていた。


ハサマ「…ただの幻術なら迷うだけで、殺害目的なら外には出れない筈だ…。しかしアスラーンは戻っただけでなく、再現されたものまで持ち帰ってきた。目的が不明瞭すぎるな…。何より、ポーチを受け取る前日の時系列に都合よく移り、大人の彼に母は大事なものを渡すだろうか…?」


老人はポーチをしまいながら答える。


老人「奴がこのポーチを俺に渡して言ったんだ。『俺にはもう必要ない』ってね。そして、今度はそのまま自分から霧に入っていこうとする…。俺は、中に何があるのか問いかけてみた。すると奴はこう答えた。『霧が何でも作ってくれる』と。」


老人「恐らく、あの霧の中は過去じゃない。俺が思うに、あの森の中で世界は『作り直されている』」


ガーナ「人の記憶に肉付けし、思い出の世界を再現する霧か…。明らかに意思があるな」


老人「そこになんの意味があるのかは流石にわかりかねますがね、旦那曰く、いるんでしょう?」


ガーナ「何がだ?」


老人「『新しい世界を必要としてる者』ですぜ」


ガーナ「…サバトか」


ハサマ「サバトかー。(へーそんなこともできたんだなぁ)」


ハサマはサバトの芸当に感心している


老人「しかし、あそこは孤島ですぜ旦那。人を集めるなら効率は悪い。それに、こんな簡単に見つかるほど目立つ能力を使うもんですかねぇ。」


ガーナ「可能性としては恐らく、生物としての形を選ぶことを放棄しているサバトだろう。」


老人「霧自体がサバト、ってこともありえるんで?」


ガーナ「この世界を『星』に例えれば、サバトの世界は『宇宙空間』。他の『星』から宇宙を渡り我が星を侵略しに来てるというわけだ。つまり、サバトに共通の概念はない。身体を捨てた思念体のみのサバトもいておかしくはないな。」


ハサマは物凄く目を輝かせている


ガーナ「引き続き調査の必要がありそうだ。我々が入っても外に出れるかどうか調べてくれ」


老人「え、俺がですかい…?」


とがった耳を疑う老人。


ガーナ「金を積めば何でもやるのだろう?」


目もあわせず適当に言い放つガーナ。


老人「ハハ、人間じゃねぇや、旦那」


ガーナ「お褒めいただき光栄だ」


ハハハ、と笑いながらも二人の間にはギスギスした空気が飛び交っていた。
エリーゼはため息をついた。エクレアもため息をついてみた。


ガーナ「さて、夜明けも間近だ。私たちも寝るとしよう」


エリーゼ「えぇ、本日もお疲れさまでした。またね、エクレアちゃん」


老人「やれやれ…仕事に戻るとしますかねぇ…」


エクレア『マタネ』


ハサマ「じゃあね君達!」


ハサマはエクレアちゃんを連れて台風で帰って行った。
老人もいつの間にか消え、エリーゼもドアから去った。


一人残ったガーナがテーブルの写真を掴み、凝視する。


ガーナ「セイカの封印はどうした…?」


ガーナは写真の裏にメモを取る。棚から一冊の本を取り出すと、その間に写真をはさんだ。


背表紙には『サバトゲート』と記されていた。