PFCS SS劇場!

パラレルファクター カルティベイトサーバーのSSをまとめるブログです。主にツイッターでのやり取りを纏めます!

解剖鬼とソラ


解剖鬼「さてと、君とは初めましてかな?それとも、前にも出会ったか?」


ソラ「…前にも会いましたか?」


ソラは、目の前の人物を不思議に見つめる。


解剖鬼「(よかった。ドレスタニア経由で指名手配書が届いていたらどうなっていたことか)」


解剖鬼「いいや。私が君と会うのは初めてだ。私は外科医をしている」


そう言ってコートの中からちらりとメスを光らせた。


ソラ「(…メス?何をするんですか?)」


ソラはメスに真っ先に気づいた。気付かぬふりをしている。


ソラ「外科医ですか。はじめまして。俺は季夏空(きなつ ソラ)。」


解剖鬼「(やはりアンティノメルの……)」


解剖鬼「ソラ君か。よろしく頼む。……ん?君、怪我をしていないか?少し見せてくれ」


ペストマスクからくぐもった声が反響している。淀み暗い声である。


ソラ「…ええ。いいですよ。俺、どこか怪我をしていましたか?」


ソラは感情なく応じた。だがその顔に警戒の字が見える。最初に見たメスから警戒が解けていないようだ


解剖鬼「そうか。当然だ。こんなものを見たら誰でも警戒はする。ただ、これは私の商売道具なんでね。手に持って見てみるか?」


銀色のメスの持ち手をソラに向けた。ソラの指先がほんの少し切れているのを凝視しながら。


ソラ「…手に取ってみます。…銀色のメスですね。特に変わっていません。」


ソラ「…あ、この傷ですか?…いつ付いたんでしょう」


ソラは疑問に思う言葉を吐きながら、声のトーンは全く感情を込めていない。


傷はメスに触れた瞬間きれいさっぱり消え去った。ごくごく自然な動作で能力を発動させた。


解剖鬼「自分の体はいたわった方がいい。この世は生きているだけでも辛い。あえてこれ以上辛い道を歩む必要はない。たとえ、それがほんの些細な痛みであってもな」


ソラ「…?傷が消えましたね…痛くは、ありませんでしたよ?あえてこれ以上辛い道を歩む必要は無い?…俺は確かに、辛い道を歩んでいますが…」


ソラの言葉に微かな震えが入る。辛い道という単語に反応している。


解剖鬼「(肉体的な痛みには強い、が)」


解剖鬼「そうか。辛いか?生きるのは?永遠に楽になりたいと、思ったことはないか?」


ソラ「思った事があります…永遠に楽になりたい…俺は思った事があります。永遠に…俺を殺す俺から開放されたいですから」


ソラは感情を無しにして言う。『俺を殺す俺』は、トラウマから感情を封じ込めたソラの事である。


解剖鬼「自分を殺しているのか。辛いだろう。自分の思っていることも、したいことも何も出来ない。人が自分のことを偽れるのは限界がある。大体4年、長くて7年……。だが、今のままではやがて崩れるぞ?それまでに自分を受け入れられる自信はあるか?」


ソラ「…いずれ崩れる…俺は俺を偽っていない…俺は受け入れられない…俺は…俺を殺し…生きている…。」


ソラ「そう…トラウマがあるんです…過去に…過去に俺は…うっ…!!」


ソラはトラウマを話そうとすると頭を抱える。解剖鬼の言葉に感情が現れ始めた。


解剖鬼「お前はそこまでして生きたいのか?このまま過去のトラウマに苦しみ続けるのか?見えない未来に怯え続けても生きていたいのか?」

 

 

 

「それが嫌なのなら……私がこの世から解放してあげようか?」

 

 


まるで神父のように優しい口調でペストマスクはいった。


ソラ「…そこまでして…ですって?このまま…生き続け…この世から開放…されたいですが…『僕』は…」


ソラは躊躇った口調で話した。ソラの感情が見える。開放されたいが、もしかしたら殺されるかもしれない。ソラは戸惑った。


解剖鬼「なぜ君は死ぬことが恐ろしいと決めつける?死んだこともないのに?人はなぜ生きなければならないのだろうか。死んではいけないと誰が決めた?」


解剖鬼「生きるのはとても辛いことだ。安らかに死ぬことは決して罪ではないし、誰も君を咎めることはない……君次第だ」


ソラ「……死ぬのは…『恐ろしい』!『僕』は生きる…。トラウマを背負ってでも…俺は…生きる意味があります。…愛するあの人…ルーカス様…この国……。安らかには…なりたい。けれども俺は…。」


ソラは死ぬ事を何より恐れている。自身が消えたら恋人は…?と。

 

 


「伝えたい人に伝えていないことがある?大丈夫。一般に、死は突然訪れる。伝えたいことを伝えて死ぬ人の方が少ない。」

 

 


「悲しむ人がいる?大丈夫。その人の悲しみは時間が癒してくれる。」

 

 


「死は最大の『救い』だ。今感じているその恐怖からも、開放されるんだぞ?」

 

 


ソラ「……。救われない……俺は…救われない…死んでも。シュン、彼の為に生きる…俺は生きる…。」


ソラ「この恐怖から…開放される代わりに死ぬなら…開放されないで、トラウマに怯えながら、生きた方がマシです。」

 


「恋人に…伝えたい事、たくさん…あります、から。」

 


解剖鬼「素晴らしい!君は大した人だ!恋人を大切にしてやれ」


手に持っているメスが震えていた。まるで何者かが乗り移ったかのように。


解剖鬼「どうしても辛くなったら、私に依頼して欲しい。楽で安らかで、幸せな夢を永遠に見せてあげよう」


ソラ「…?」


ソラはメスを見つめた。


ソラ「俺は、辛いです。辛いですが。恋人のために生きます。彼の為に…彼の為に生きます。


ソラ「…彼の為に」


ソラが彼と言う度に、安心しきった優しい笑顔が見える。本人は気づいていない。


解剖鬼「そうか。なら、ひとつだけ言っておく。相方よりも先に死ぬな。辛くなったとしても必ず二人で来い。ただでさえ生きるのが苦痛な世界に、一人取り残されたら、それこそ地獄だ」


一瞬メスから妖怪特有の呪詛が漏れ出た。


ソラ「…彼の為に、生きます…彼を悲しませる訳にはいかない…それこそ…俺は『悲しい』」


ソラ(…?呪詛…?)


ソラ「…俺が彼女、ではなく、彼、と言っているのは、気にしないでください。恋人は、男ですが、愛していますから」


解剖鬼「そうか。」


メスを指差してペストマスクはいった。


ソラ「所で、そろそろお帰りなのですか?俺に色々と言ってくださりありがとうございました。俺は苦しんでも、恋人のために生きることを考えています…」


ソラ「俺が俺を殺していたとしても…俺は、生きる…。」


ソラ「…彼を愛していますから」


解剖鬼「ああ。もう時間だ。君なら変われる。絶対にな。私はとてつもない人数の『変われなかった人』をみてきたが、君はその人たちとは違う。自信を持てよ、ソラ君」


そう言って黒いコートを翻すとソラに背を向けた。
後ろに手を降りながら。