読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

PFCS SS劇場!

パラレルファクター カルティベイトサーバーのSSをまとめるブログです。主にツイッターでのやり取りを纏めます!

騎士団長ショコラ

「白玉聖騎士団長、ショコラが参りました。ガーナ陛下。」
片ひざをつき、大理石の床に写る自分を見ながらショコラは王に頭を下げる。青くなびくマントにはかすかに霜をまとい、吐く息は白く、足元はパキパキとヒビの入る音がする。
「ショコラ、また敵を逃がしたのか」
玉座につき、両手を組むガーナ王。対照的に赤く燃えるようなマントを身に纏い、そばの燭台はギラギラと火が灯っている。ガーナの突き刺すような鋭い瞳は、ショコラの顔ではなく、手の甲に巻かれた血の染み出している包帯を見つめていた。
「なぜそこまでの実力がありながら、わざわざ傷を作る。お前、わざと受けているだろう」
目を床に向けたまま口を開かないショコラ。幼い頃より傷を負いやすい環境にいたせいか、ショコラには痛みに対して鈍感すぎるきらいがある。ガーナはショコラの許容する傷の深さを甘く見ていたが、今度ばかりは明らかに異常であった。苦痛の表情をまるで感じさせない笑顔のまま、手を貫通した短刀を手首ごと凍らせて戦場から帰ってきたのである。斬り込み隊長が言うには、逃げ道を失った相手がやみくもに振るった短刀を素手で受けた後、武器をその場に捨てさせて国の外まで送り届けたのだと。ガーナはその報告を受け、ショコラが戦場で何を考えているのかと真理を聞かざるを得なくなった。
「答えろショコラ。王としてではなく、兄として聞きたい。未熟な私にはお前の考えが読み取れないのだ。言いたいことを言ってみろ」
伏せた顔をわずかに横にずらすと、悲しい表情を浮かべ、ポツリポツリと語り始めた。
「だって…可哀想じゃないですか…。お兄様は情を抱くな、と言いますが…僕は殺さずに解決できる方法があるなら…それを選択したいんです…」
ガーナの眉間に陰りができる。戦場で情けをかけるほど残酷なことはない。相手は死ぬ覚悟をもって相手を殺しに来るだろうし、決死を分ける瞬間にあろうことか身を犠牲に救われる屈辱など他にあるのだろうか。
「騎士道を引き合いに出して語るならば、お前は死者に唾をかけるようなことを繰り返している。戦うものには誇りがあるのだ。それを…」
話の最中、ショコラの顔がこちらを向いていることに気づく。その表情は、明らかに知らなかった革命的なことを知り、心の底から驚くような顔である。
「誇り……誇り……?」
ガーナの中で、突然何かが揺れ動く。ガーナは自分を捨て全てを選択した人間であるがゆえに、全てを捨て自分の感性で生きるショコラの言葉に稀に気づかされる真実がある。
「誇りなど、誇りなど持つ騎士はごく僅かです、お兄様…!多くの騎士は自分を騙し、圧し殺し、国のために仕方なく戦っています…!僕は…剣を重ねればわかるのです…。騎士道を持たぬ相手に騎士道を通すのが、本当に騎士道なのですか…?」
言葉に詰まるガーナ。核心をつくような言葉の中で、うろたえつつも解答を絞り出す。だが回答ではなく、もう一つ気にかかるあることが浮かび上がった。
「…傷はどうなのだ。お前がわざと受ける理由はなんだ?教えてくれ」
ショコラは笑った。無邪気な、子供のような笑顔で手をヒラヒラさせると、さも当然の如く残酷な言葉を発した。
「こんなのかすり傷です、お兄様。細胞の繋ぎ目に沿っているから跡もつかないし、血を外に出してないから治りも早いです。それに血管も損傷しておりません。だからそのまま刺した方が安全だし、刺しても僕には勝てないと悟れば諦めもつきやすくなるでしょう?」
ガーナは父に教わったことを思い出した。世の中には五感の一つが異常発達する人間が産まれることがある、と。それを父は、《シックスセンス》と呼んでいた。
「…よくわかった。お前の真意が理解できた。下がって良い。」
ショコラはなにも言わずゆっくりと立ち上がると、にっこりと微笑み、いつものように楽しそうにフラフラと歩き出した。ふと、ガーナがあることに疑問を抱き、呼び止める。
「ショコラ、私の部下は騎士道をもっているか?」
「…残念ですけど数人しか…。」
「そうか。お前はどうだ」
「愚問です陛下」

氷のように冷たく即答すると、そのまま振り替えることなく、ガーナを背に向けてショコラは王室を後にした。