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PFCS SS劇場!

パラレルファクター カルティベイトサーバーのSSをまとめるブログです。主にツイッターでのやり取りを纏めます!

悪夢

その少年は、産まれながらにして自分という存在が無かった。

 

妖怪として生を受け、物心つく年頃まで両親、村人全ての人に全てを任せられ、愛情深く育てられた。

 

「君はみんなで、みんなは君なんだ」

 

村の者は、彼を諭し続けた

 

彼は何もしなくても、村の一番の幸せ者であった。

 

ある日、幼い彼に成人の儀式が行われた。

 

彼は困惑した。

 

彼は、産まれてはじめて村の者たちに恐怖を感じた。

 

村の者たちは彼の事を笑顔で見つめながら、一人一人自分の首を落として、滴る生き血を彼に差し出したのだ。

 

彼は村人の不思議な力で身体の自由を奪われ、むせかえり、吐き出すことも許されないまま生き血を飲まされ続けた。

 

彼は、彼の中からどんどん自分がなくなる感覚を、濃厚な鉄の香りの液体と共に味わっていた。

 

最後の一人が彼の額に手をやると、彼の中の最後の彼が、赤い海の中に沈みこんでいった。

 

彼は最後の一人を鷲掴みにすると、自分の口をビリビリと割き、顎を外し、大きく広げて頭から飲み込み始めた。

 

最後の一人は、彼にのみこまれながらも微笑み続けていた。

 

バリバリ、むしゃむしゃと寂しく鳴り響いた。

 

彼はその場に落ちた血を残らず舐めとると、一人闇夜に消えていった。

 

その「彼だった者」を夢に見ると、未だに「彼」は、自分を取り戻そうとして、様々な生き物を喰らい自分を補う。

 

「彼」は毎日夢を見ている。

 

「彼」の中の「彼だった者」が、あの日から毎日夢を見ている。

 

きっとまだ力が足りない、そう思いながら、「彼」は今日も自分を取り戻すために食べ続けた。

 

 

 

元々自分という存在など無かった筈なのに……。

 

 

 

コルトは今日も食べ続ける。

 

自分という「何か」を作るために、いつまでも、いつまでも……。