PFCS SS劇場!

パラレルファクター カルティベイトサーバーのSSをまとめるブログです。主にツイッターでのやり取りを纏めます!

稲妻海賊団のカルヴァトス探検記

 お宝を匂いで探すことのできる狼型のサターニアのヤミタと、その付き人であり刀の達人でもある老人ゼンロを仲間に加えた紫電率いる稲妻海賊団一行は、ドレスタニア大陸の西側、カルヴァトス地方に到着した。今日の船番は床に埋まっている金弧ととばっちりをうけた冥烙、ついでに芦華である。


紫電「すげぇところだな……規格外のデカさだ……」


 紫電は砂浜に生えた、なんかやたら太くてたくましい木を見上げる。通常の幹の3倍は太いであろうその木は、ドレスタニア城の屋上にも届きそうな長さだ。試しにえいやえいやと一、二発ほど叩いてみるが、女性とはいえ鬼の、普通の木であれば数発で折れかねない威力の紫電のパンチですら揺らすことも叶わない。実にたくましい木であった。


忌刃「姉御、どいてナ」


 のそり、と前に出てきた3mほどもありそうな鬼、忌刃が拳を固めた。アニメのようにギチギチと拳が唸る。忌刃のパンチは本当に洒落にならないのだ。本当にだ。紫電はチッと舌打ち(みたいなかわいい声)をしながら、忌刃の後ろに下がった。この舌打ちは悔しさではなく、単純に木を殴ったのがこころもちちょっと痛かったのである。忌刃は、木の表面をコツコツと叩きつつ感心したように唸った。


忌刃「とんでもねェ木だゼ……海からジュースみてェに勢い良く水を吸い上げてやがる……パワーと耐水性、バイタリティに優れたパワフルな木ダ……良い形の奴を見つけりゃ大型船の竜骨にそのまま使えるだろうナ……」


 もしゃもしゃのもみあげをふんわり撫でつつ、冷静に分析する忌刃。忌刃の髭は剛毛だが毛先は柔らかいらしい。サバイバルでは火種にも使えるという代物だ。忌刃は木の表皮をじっくりと観察し、威力の通りやすい場所を探すと脇をしぼり、腰を回転させながら、固めた拳を一直線に突き出した。すごい。半端じゃない音がする。すごいパンチなのだ。数m離れたところで見ていた仲間たちの髪の毛が衝撃波で揺れる。とてもすごいパンチなのである。木は轟音を鳴らしてグォングォンに揺れたが、摩擦で湯気が立つわりに損傷は皮が一枚剥がれた程度であった。忌刃は心なしか口許を緩めた。殴りがいがある、という顔である。


忌刃「マジかヨ……とんだタフ野郎だゼ……」


ヤミタ「うぅー、お宝捜しはー!?」


 痺れをきらしたヤミタがぴょんこぴょんこしながら紫電の周りを走り回った。逸る気持ちを抑えられず、すでにケモミミと尻尾が出ている。あざとい。だが、自然なあざとさである。紫電はヤミタの頭をわしわしと撫でながら、笑顔を見せた。


紫電「もうお宝見つかっちゃったぜ!この木がそうだ!」


忌刃「俺たちにとっちゃ資源や原料も宝みてぇなもんダ……」


 成る程、と頷くゼンロ。物を見る眼に素直に感心した。鬼の価値観とはなかなか見上げたものだ。ゼンロは老後の楽しみを洞察に見いだしていた。ヤミタは依然、キョトンとしたままである。意味がまだわからないから、とりあえず尻尾をふっている。あざといのだ。


忌刃「だが、まぁ心配なこともあるがナ……」


紫電「心配?何がだ?」


忌刃「降りてすぐ見つかるようなものが、自然のまま残ってんだゼ。つまり、発見は簡単だが……」


ゼンロ「持ち帰る事は容易でない、と」


忌刃「そうダ。切り倒すだけでも半日はかかるゼ。俺でもコイツを運ぶのは気が進まねェナ……」


 喜び舞い上がったのも束の間、一同は現実を知ると落胆で肩を落とした。ガーン、である。目の前のお宝を持って帰れないなど、海賊にとっては実に歯がゆい話なのだ。紫電はかつて、無限に食べれるかと思って山盛りに作った生クリームが胸焼けで食べれなくなった事を思い出した。その例えは、恐らく意味が間違っている。


紫電「……ん、そういえば、なんか変なもんがところどころにあるな」


 ふと、目の前に転がる岩のようなものを見つけた紫電の呆けた表情につられ、一同はその物体を眺めた。でかい。その物体の周りの砂はクレーターのように盛り上がり、それが空から落ちてきたものだとわかる。


ゼンロ「火山岩にしては色も形も整い過ぎているようだが」


忌刃「……わかったゼ。姉御、伏せナ!」


 忌刃の突然の警告にびっくりし、ヤミタとともに伏せる紫電。同時に忌刃とゼンロは立ち上がり、空に向かってパンチと居合い斬りを繰り出し、すさまじい勢いで落ちるモノを迎撃した。スゴい。オーバーキルである。ひとたまりもない。ソレは中心から綺麗に真っ二つに割れ、くす玉のごとくヤミタと紫電を避けるように左右に落ちた。すると中から甘ったるい匂いの真っ白な汁が飛び散り、二人は頭からずぶ濡れになった。


紫電「きゃあ!!……じゃない、う、うわぁなんだ一体!!」


ヤミタ「あまーい!!」


紫電「お、おいっ!!ちょっと、やめ、舐めるなぁー!!」


 興奮によってほとんど獣化したヤミタが紫電に覆い被さってぺろぺろワンワンする。見せられない。微笑ましいがさすがにちょっと見せられない。そんな中、さりげなく手拭いでサッと刀を拭いたゼンロを見て、忌刃は訝しげな顔をした。


忌刃「(……落ちてきたコイツの筋をド真ン中で斬りやがったナ……。その上、まるで濡れてねェ……。ジジイ、とんでもねぇ眼と反射神経を持ってやがる……)」


ゼンロ「……優れた観察眼だ。構造を理解した上で貫通力のある打撃でなくては中身が飛散しよう」


 忌刃の視線に応えるかのように、ゼンロは刀を収めながら語る。忌刃のマックスの拳で破壊すれば辺りは白まみれだったため手を貸したつもりが、不要だったようだとゼンロは軽く微笑んだ。忌刃は面白くなさそうに鼻を揺らした。


忌刃「コイツぁココミナの実に似た果実だナ。ここまで分厚い繊維状の殻じゃ開けるのも困難だろうが、天然の樽みてェなもんダ。非常食にゃ持ってこいだゼ。殻にも使い道がある、コイツだけでも良い土産ダ」


 開けた実の外側を覆う固形の白い実をちぎり、口に含み、ゆっくりと咀嚼する。味見をするコックのようだ。体格が良い為か、なんか意外なほど似合っている。


忌刃「味も悪くねェ。好みは分かれるだろうがミネラルや糖分も豊富で、なんとも言えねェ弾力がある。毒素は問題ねェナ」


紫電「おいし……うめぇじゃんか。ココミナは殻ばっかでなんか筋張ってて喰えたもんじゃねぇけど、これはいいなぁ!次から次へとラッキーだぜ!!」


ヤミタ「うめー!!」


ゼンロ「幸先が良い、と判断するには早かろう。根本的な疑念は未だ晴れん」


紫電「疑念?」


 意外な言葉に首をかしげる紫電。ヤミタはお腹一杯で、おねいさん座りの紫電の太ももに頭をのっけて居眠りをはじめようとしていた。気づけば、片方の実は空っぽだ。夢中になって飲んでいたらしい。紫電は獣状態のヤミタのふわふわの頭を撫でた。


ゼンロ「何ゆえ誰も此の地方に訪れないのか、という事だ。ともすれば、考えられる理由は二つ。純粋な未開拓地であるか……」


忌刃「何かヤベェ障害があるか、だナ……」


紫電「障害って……ん……?なんか揺れてねぇか……?」


 その時、唐突な揺れが大地を襲った。遠くで何かが大爆発するような音と共に、空を灰色の煙が覆っていく。ヤミタは耳を尖らせて飛び起き、音の方向を見た。


ヤミタ「ふんか!!」


紫電「あ!?火山地帯かよここは!!まずいぜ、船に戻れ野郎共!!」


忌刃「待て姉御!!無闇に動くんじゃねェ!!」


 瞬間、紫電の目の前に大きな塊が落ちる。隕石ではない、先程の木の実である。爆音と衝撃で身体が弾かれ、飛ばされた紫電を忌刃がキャッチする。木の実は傷ひとつついていないが、砂ほこりがぶわっと舞い上がった。


紫電「きゃああぁぁぁ!!ななな、なに!?なに!?」


忌刃「オイオイオイ……!そういうことかヨ!!バカヤロウ!!」


ゼンロ「ぬ……!!これは……!!」


 ゼンロが落ちてくる木の実を斬り払う瞬間、空には無数の影。そう、揺れは木を根っこから直接揺らす。この木はめちゃくちゃに長く、超重い実が先端に複数ついている。もう、すごい。すごい荒れ狂うようにブルンブルン揺れているのだ。そして当然、実はもげるのである。落ちるのではない、投げ飛ばされるのだ。絶景かな、直径1m大の超頑丈な木の実がまるで流星群。数の暴力。容赦ない。タコ足みたいな大木が、タコ焼きみたいな実を投げまくり、大地をタコ殴りにする直前であった。


忌刃「このままここに居たらいずれ船も巻き込まれるゼ!!死なねェことを祈りながら走れ!!」


紫電「無理無理!!死んじゃうぅ!!」


ゼンロ「逃げ腰の割に足の早い娘だ」


 勘と運とごり押しでなんとか船まで逃げ込んだ海賊団。今朝着替えを覗いたせいで半分死にかけていた自業自得の金弧と、悲鳴を聞き駆けつけてしまったために頬に張り手の跡がくっきりと残った可哀想な冥烙は、砂浜の物音と皆の様子と甘い匂いを振り撒きながらびしょ濡れで泣いている紫電をみるやいなや、とりあえず目を背けながら急いで出港の準備を整え、大陸を脱出した。


忌刃「っつーわけであの大陸は見送りダ。イラつくが攻略すンなら陸路しかねぇナ……」


 コーヒーを飲みながら冷静に話す忌刃。モシャモシャの髭でコーヒーを嗜む大男、そんな姿がやたらと似合う忌刃だが、マグカップが小さすぎてつまむ指が少し可愛いな、と紫電はいつも思っている。


金弧「ドュフフwwwあんなエロい目に遭って諦めてないとはwwwブフォ!!」


紫電「エロい目には遭ってねぇよ!!ったりめーだ、宝を前にして逃げる奴は海賊やめちまえ!!火山があるってんなら、あの場所は宝石も採れるってこった。虎穴にいらずんばなんたらって言うだろーが!」


 金弧をぶん殴った拳を持ち上げてワクワクしながら語る紫電の言葉は、本日二度目の臨死体験中の金弧には聞こえなかった。


忌刃「果実は逃げてる最中に二つキャッチしたゼ。植物に長けた精霊とでもコンタクトがとれりゃ、環境の良い島でも育てられるかもナ」


冥烙「簡単そうにスゲェことしてるっスね忌刃……」


 走りながら降ってきた実をキャッチしたのは、ヤミタと紫電に当たりそうだったものだということをゼンロ以外は知る由もない。桁違いの体格がなせる神憑った頭上キャッチである。クールな男だ。


ヤミタ「すっげー楽しかった!!」


芦華「俺もいきてーな!!いきてーな!!出番もほしーな!!」


ゼンロ「……(私欲の為であれば、と悪事を見張るつもりでいたが、彼らは試練を好むだけやもしれん。……となれば、愚かだが愉快な者達だ。もう少し様子を伺うとしよう……)」


 今日の稲妻海賊団は敗北したが、彼ら海賊、『死ななきゃ笑え』がモットーだ。運も実力のうち。寿命短し鬼の海賊、危機は笑って乗り越える。昼は暴れて楽しめば、夜は宴でまた楽しむ。それが稲妻海賊団!最後はいつだって笑顔なのである!!

 


金弧以外。

ドレスタニアの血

エリーゼ「……!!が、ガーナ様、珍しいですね……こんなところで……」


ガーナ「エリーゼか。毎度ご苦労な事だ……。そんな誰にも好かれんような元国王の墓なぞ、雨ざらしで充分だ。拭く価値もない」


エリーゼ「まったく、亡くしてなお悪態つきに来る程嫌いですか。慣れましたけど……しかし、口でそう言いながらなんです、その手の葡萄酒は……」


ガーナ「あぁこれか。呪詛酒だ。好きだろう多分」


エリーゼ「うっわ……良くそんな皮肉思い付く……」


ガーナ「む……。まぁなんだ、私も口にしたことはあるが、案外良いものだ。今の世だからこそ作れる。奴にも愛国心はあるだろう、報告も兼ねている。嫌がらせついでだがな」


エリーゼ「やってることは鬼畜ですけど……報告とかもするんですね。意外と言うか雨降りそうというか……少し心変わりされました?」


ガーナ「いや、もう意地を張る歳でもあるまい。ガトーを許すなどといった無駄極まりない言葉を吐くつもりもないが、それとこれとは別だろう。……ドレスタニアの未来を考えるきっかけになるやもわからん。胸焼けをするような気分だが、たまにはこうして墓に悪態をつくのも悪くなかろう」


エリーゼ「素直じゃありませんね、相変わらず」ボソッ


ガーナ「なにか言ったか?」


エリーゼ「いーえ。なにも。それで、なにか思い付きました?」


ガーナ「ふむ……そうだな。奴の親としての甲斐性だけで判断すれば、実に滑稽で浅ましい男であったと未だに言えるが、少し視点を変えればガトーはある意味で偉業を成したのかもしれん」


エリーゼ「偉業、ですか。ガトー様はあの時代、王としてご立派であったと私は思ってますが、偉業と言いますと……」


ガーナ「いや、『ドレスタニア王』としての奴はとても褒められたものではない。代々赤い髪の我が家系には、ある種呪いともとれる特徴がある」


エリーゼ「ドレスタニア一族の、呪いですか……?初耳ですが……」


ガーナ「語る必要もないのでな。赤髪の一族は冷酷で残忍で、他者を恐怖でもって支配する才能……カリスマとやらがあるという。なんでも、眼に曰くがあるとかないとか。かなり昔に迷信によってその一族は滅ぼされたのだが、その生き残りがドレスタニアの祖と言われている」


エリーゼ「……文面通りと言えば、ガトー様もガーナ様も当てはまるかもしれませんね」


ガーナ「あぁ。この特性をガトーは『覇道』と呼んだ。しかし、奴はドレスタニア家の覇道の運命から逃げた。それでも王の道を進もうと言うのだから、随分と中途半端な人間でな。……この血のせいで凡人にもなりきれず、かといってドレスタニア家の恥晒しだ」


エリーゼ「なぜガトー様は、運命に逆らおうと思ったのです?何か特別な理由でも?」


ガーナ「『恋』だ。ガトーは、不運にも母上と出会い、自身をの立場を呪った」


エリーゼ「呪うって……。し、しかし、何て言いますか、若いガトー様は大層美形でしたし、ガーナ様も……こほん。ど、ドレスタニアの血筋は女性からのアプローチも多かったのでは……?当時も身分違いが厳しい世ではないはずですし、その、お母様も名のある家柄の筈では……」


ガーナ「……我が血筋はな、母が子を孕むと早死にをするという、統計的に偶然とは言い難い特性がある」


エリーゼ「な、なんですって……!?そ、それじゃ、ガーナ様は……」


ガーナ「……そこが、ガトーの唯一の功績かもしれん」


エリーゼ「そ、それが、ですか……。どういうことですか……?」


ガーナ「過程は褒められたものではないが、どうあれガトーは『赤髪の血を薄めた』。……呪われた運命に縛られていないショコラを作ることができた。それは偉業だ」


エリーゼ「……ガトー様は、この国の呪いに耐えられる子に、と常日頃から口にしていました。報われていたのでしょうか……」


ガーナ「奴の感情など知らん。私はドレスタニアの血を受け、あの軟弱者の代わりにすべきことを果たした。混乱する世を力で制圧し、恐怖で縛り付け、強制的な戦争の終結を実現した。無論、その手段は『褒められたものではない』と知りながらだ」


エリーゼ「ガーナ様。……ご自身を責めないでくださいといつも言ってますよ?」


ガーナ「……すまん。だが、」


エリーゼ「……それしか、ありませんでしたからね。あの時代は……」


ガーナ「私は奴に出来なかったことをしたまでだ。心残りはない。覇道の時代は終わりだ、もうここで終わらせていい。にわかには信じがたいことだが、ショコラが即位してからのこの国の変わり方は良い方向だと思える。……敵は未だ多いが、今の私はそのために生かされているのだろう。威圧や強制も民を守る手段の一つだがあいつはそれをまだ知らん」


エリーゼ「……ガーナ様はご結婚を考えたことはありますか?」


ガーナ「王族の結婚など政治的な儀式に過ぎん。今更義務もなかろう。私にはもはや過ぎた代物だ。ガトーとは違うからな」


エリーゼ「そう、ですか……」


ガーナ「お前はどうなのだ。そういえばそのような素振りも見せんから、考えたことも無かったが……」


エリーゼ「言ってくれますね。貴方のお陰で婚期なんてとうの昔に過ぎ去りましたよ、薄情もの」


ガーナ「む……。縛り付けていたつもりはないが……」


エリーゼ「縛りまくってます!!恋やら何やらにあけくれる程満足な休みなんてありました!?責任とってくださいよ!!」


ガーナ「まぁ落ち着け。そうならなかった時の為に、一応私もそれなりに考えている。安心しろ、責任は私がとる」


エリーゼ「えっ……?ちょ、そそ、そんな急に言われましても……」


ガーナ「終身雇用は勿論だが、退職金に加え数々の功績の報償金と、念のために記録しておいた時間外勤務分の残業代も全て含めれば……まぁ、一等地にこの城と同等のものを建ててなお5世代は跨げる額だ。宝石にも困らんぞ。前借りも調整次第だが考えよう」


エリーゼ「……」


ガーナ「む、妥当だと思うが、まぁ他にも相談はいくらでも……」


エリーゼ「はぁ……。そんなことだろうとは思いましたけど。ガトー様のせいですよこうなったの!!わかってんですかこのっ!!このっ!!」


ガーナ「お、落ち着けエリーゼ!足を痛めかねん、棒か何かでやれ!!」


ガトー「すまん……」


ガーナ「さて、帰るとしよう。少し先の話をしたがまだやってもらいたいことはたくさんあるのだ。悪いがもうしばらく城に居てくれ」


エリーゼ「はいはい……。ずっと居ますよ、結婚なんて所詮儀式ですし、こうなったら結果で勝負です……」


ガーナ「む、なんの話だ?」


エリーゼ「こっちの話ですー!!」

【アイラヴ祭】ランの『お友だち』

ラン「……」


こはね「……ラン、はじめましてなの……。ランも、お墓参り……?」


ラン「……えぇ。今日……お友だちがここに来るように教えてくださいまして……」


こはね「お友だち……?」


ラン「はい。かけがえのない……お友だちです……」


こはね「……ランは、私に会いに来たの……?」


ラン「……あぁ、なんと申せばよいのでしょうか……。私は貴女に会いに来たのではありません。でも、貴女に会うことが目的だったのかも知れませんね……」


こはね「……?よくわからないの……」


ラン「こはねさん。貴女は、お墓参りのその意味を、ご存知ですか……?」


こはね「意味……。えっと……。亡くなった方への追悼の為……」


ラン「それは違うのです、こはねさん……」


こはね「……違うの……?でも……わたし……」


ラン「心優しいこはねさん……。貴女がこうしてここに来ている理由は、きっと貴女のご両親の為なのでしょう……。慈しみ、愛を込めて、大切な人をお見送りする……。その気持ち……その愛情は、決して間違いではございません……。ですが、どうかお顔をあげなさい……。貴女のご両親は、貴女を心配しておられます……」


こはね「……!!」


ラン「お墓参りとは、元来『生者』の為のものなのです……。亡くなった方の未練を拭う為の儀式ではありません……。貴女が会いに来ることを、貴女のご両親はとても楽しみにしております……。ですが、貴女はいつも、笑顔で帰らない……。悲しい気持ちでいることを、ご両親は心配なさっているのです……」


こはね「……ランは……ランはどうしてわかるの……?ランも心が見えるの……?」


ラン「いいえ。私が見えるのは、あくまでも見えた者のみ。聞いたことのみ。その代役を、私は自分の生きる理由と定めております……。私は、『死者と会話ができる』のです……」


こはね「!!パパとママが見えるの……!?教えてほしいの……!パパとママは……なんて……」


ラン「こはねさん……。それは私からはお伝えできません。」


こはね「どうして……!!だって……」


ラン「死は受け入れなくてはなりません……。死者も、生者も、それは等しく定められたこの世のルールです……。在るべき者は、在るべきところへ……。塵は塵に、灰は灰に。私は死者の鎮魂を手助けする者であり、未練を断ち切る者。新たなる未練を産み出すわけには参りません」


こはね「そんな……酷いの……」


ラン「……貴女の言葉は死者に届いております。貴女の気持ちも、心も……。けれども、死者の気持ちは貴女へ届くことはありません……。だからこそそれは未練となります……。私を通して言葉を紡いでも、その真偽は本人にしか定められません……ですから私は、生者として、琴浦蘭の、自分の言葉と気持ちで貴女にお伝えするのです。こはねさん……。ご両親が見たいのは、貴女の悲しいお顔ではありませんよ……。元気な笑顔で、お話しして差し上げなさい……」


こはね「……笑顔……。でも……やっぱり難しいの……どうしても……苦しくて……」


ラン「……貴女のお母様は、第六感をお持ちでした」


こはね「……!!」


ラン「『その日』の事を今も悔やんでいるのであれば、その心配は無用です。貴女が本当に言いたいこと、伝えたかったこと、ご理解されております」


こはね「ママ……」


ラン「……もう、よろしいですね。それでは、私はこれで失礼します。これからは、良きライバルとして……。どうかよろしくお願い致します、こはねさん」


こはね「……ラン、ありがとうなの……。」


タオナン「ちょっと待ちなさい!!」


ラン「……貴女は?」


ひとこ「(タオちゃん……!!)」


紫電「(行くと思った!!)」


タオナン「あたしはタオナン。デビュー前のアイドルよ、よろしく。それよりラン、あんたにずっと聞きたいことがあったのよ!!」


ラン「……はい。よろしく、タオナンさん。えぇ、できる限りお答えします。私たちのライブに来てくださったお返しに……。妹のことでしょうか?」


タオナン「し、知ってるなら話が早いわ……。あのね、はっきり言ってあんたがレンの代わりを務めるって、あたしはちょっと納得いかない」


こはね「タオナン……それは……」


タオナン「こはねは黙ってて。レンは本気でアイドルが夢で、ひたむきに努力して天帝に上がったわ。でも貴女は、言ってしまえば替え玉合格よ。天帝になりたいなら一から始めるのが、この業界の常識でしょ!!コネで入って、本当にアイドルでいられるの!?」


ひとこ「タオちゃん……」


紫電「いや、でもなんとなく、俺たちも思ってたことだ。俺たちはアイドルのプロになる。ちゃんと理由がないとな」


ラン「……私が天帝に入ること、それは、私が志願した事ではありません。同時に、私は天帝として活動する権利を持ちません。タオナンさん、貴女の言うことは正しい。ですがそれは、私心が混じっておられます」


タオナン「私心……?あ、あたしはただ……」


ラン「貴女は私が天帝の器であるかどうかよりも、『レンを継ぐ』ということに納得していないのでしょう?」


タオナン「う……そ、それは……その……」


ラン「このような場で問いかけなどせずとも、私が器かどうかはそのうち露見することです。貴女は結果ではなく口上で証明することを望むお方ではないでしょう」


タオナン「い、いえ……あたしは、あたしはただ……」


紫電「(タオが押されてる……珍しいぜ……)」


ひとこ「(す……凄く……非の打ち所がない人だね……)」


こはね「……ラン、違うの……。タオナンはあなたを心配してるだけなの……」


タオナン「あ!!ちょっとこはね!!勝手に読まないでよ!!」


こはね「ごめんなさい……でも、二人とも勘違いしてるの……。ラン……あなたの心は……なんだかとても……」


ラン「……貴女も第六感をお持ちなのですね。えぇ、私は『執着』しています。天帝序列第六位……この席は、この席だけは他の者にまだ渡すわけにはいきません」


紫電……レンさんの席だからか?


タオナン「紫電……!」


紫電「ランさん、それは間違ってるぜ。確かにその席はあの日、レンさんが勝ち取ったものだ。けど、レンさんは自分で手放してる。未練はない筈だ。さっきのこはねさんに対する言葉と矛盾してる!!」


ひとこ「そ、そうです!!ランさん、レン様は納得して引退されてます!!わ、私も凄く悲しかったけど、引退後もレン様を応援してます!!」


タオナン「そ、そうね……ひとこは説得力あるわね……。ラン、あんたがレンを想う気持ちが強いのはわかるけど、レンは……」


ラン「……皆様、誤解をされています。私の執着の源は、レンではありません」


紫電「へ……?」


タオナン「……レンじゃない……?でも……」


ラン「……塵は塵に、灰は灰に。在るべき者は在るべき処へ。それが私の役目です。……そう、本来『在るべき処』へと……」


ひとこ「……で、でも!!それじゃランさんはアイドルを義務感でやってるってことになりませんか……?」


ラン「いいえ。元よりアイドルは、レンの夢ではなく私の夢でした。アイドルになりたい、その気持ちがあったからこそ、レンと共に今まで一緒にいたのです。ですから、私は今度こそアイドルを真剣にやりたいと思っています。……しかし、それとこの執着はまた別物……。これは私のお友だちとの約束ですから……」


タオナン「そ、その『お友だち』って、なんなのよさっきから!!わからないわ!!」


こはね「……もしかして……『喜多見カリン』……」


ラン「……こはねさん。これはアイドルとは関係のない、私の役目。約束は果たします……。『 東 雲 ひ じ き を 在 る べ き 処 へ 』」


「「「!?」」」ゾクッ


ラン「あのお方があの場所に……『序列七位』に居座ることを……私は決して許しません。決して。……それでは、失礼します」

 

 


こはね「……すごく、怒ってたの……」


紫電「……めちゃめちゃ怖かった……」


タオナン「……天帝の器、あるわね……」


ひとこ「……ひ、ひじきさんとライブするのかな……」


こはね「……わ、わたしも買い物一緒に行きたいの……」


タオナン「……ご飯も付き合いなさい……」

【アイラヴ祭】お墓参り

ひとこ「三人でお買い物するの、なんだか久々だね」


タオナン「それぞれ歌詞とかで忙しかったものね。ま、プロになったら本当にこんな暇ないわよ」


紫電「だからこそ、俺たちは一緒にいられるときを大事にしようぜ。三人揃ってユニットだ」


ひとこ「そうだね、私たちみんなでがんばろ!」


タオナン「あら……?ねぇ、あそこにいるのこはねじゃない?」


ひとこ「あ、ほんとだ。今日休みなのかな」


紫電「ん?様子が変だぜ。あんなところでずっと立ったまま動かないみたいだ」


タオナン「おーい!こはね!なにやってるのよぼーっとして!」


こはね「……!」


ひとこ「おはようございますこはねさん!今日はオフですか?」


こはね「おはよう、みんな……。今日はね、お休みをもらったの……」


紫電「あ、そのお花綺麗だな!誰かのお祝いなのか?」


タオナン「……そういうことね。悪かったわ、変に声かけて」


ひとこ「あ、そっか……そのお花……」


紫電「?お花がどうかしたのか?」


タオナン「鈍いわね、お墓参りよ。あれはその為のお花。今日はこはねにとってそういう日なのね」


紫電「あっ……!ご、ごめん、俺、知らなくて……」


こはね「気にしないで……。ふふ……。お陰で勇気が出たの……。パパとママに会うのは、やっぱり少し照れくさくて……」


ひとこ「こはねさん……」


タオナン「……じゃ、行きましょ。突っ立ってたらお花の元気も無くなるわ」


紫電「た、タオ!行くって、どこに……」


タオナン「決まってるじゃない。お世話になってる先輩のご両親に、私たちもご挨拶。良いでしょ?こはね」


こはね「……一緒に行ってくれるの……?嬉しい……。ありがとうなの……」


紫電「お、俺たちもお線香あげてもいいのか……?」


ひとこ「わ、私も……」


こはね「もちろん……。きっと、よろこんでくれるの……」


タオナン「決まりね。あんまりちゃんとした服装じゃないけど、お線香あげさせてもらうわ」


こはね「……(パパ、ママ……。こはねにも……友達ができたの……)」

 

 

***

 


こはね「今日は、ありがとうなの……。すごく幸せな日だったの……」


タオナン「そう。無理言ってお参りしちゃったけど、あんたが元気そうならそれが何よりよ」


ひとこ「(タオちゃん、こはねさんの気持ちに気づいてたのかな……)」


紫電「(なんかさ、タオってそういうのすぐ気づくし、たまにとっても大人っぽいよな)」


タオナン「……それじゃ、あたしたちも買い物に戻るわ。今度ライブ観に行くわね、こはね」


こはね「うん、わたしもデビューソング、楽しみにしてるの……」


紫電「あぁ、ジャケットの件もよろしく……ん?」


~♪


ひとこ「あれ?なんだろう、どこからかとても綺麗な歌みたいな声が……」


~♪


タオナン「これ…………鎮魂歌…………?」


こはね「……この声……『ラン』……!」


「「!!」」

 

 

ラン「……はじめまして……。柚木こはねさん……」

ドランカーズ・ハンターズ

 とある干からびた町に、好きに暴れる鬼がいた。勲章のように身体に傷痕を這わせ、恐れおののく人間を片腕で軽々と数人持ち上げるような巨漢の化け物だった。その町は鬼に牛耳られ、人々はその鬼の為に働き、貧しい生活を強いられていた。


 町の人々は他の町に助けの手紙を書いた。鬼にはバレないように、その手紙を名も知らぬ町へと届くように祈り、川に流して助けを待った。その間にも鬼は力をつけていき、もはや一つの国家のように城を構え、町の人々を縛り付けた。


 あるとき、二人の男女が国を訪ねてきた。
 男の方が、農民に話しかける。


「酒場はねぇかばぁさん。喉がかわいちまってよ」


 農民の老人の女性が、驚きながらも忠告した。旅人は、この国には立ち寄らない方がいい。死んでしまう、と。

 すると、今度は、女の方が言葉を返した。


「ウィスキーを飲みたいだけだ。迷惑はかけない。多分な」


 老人はいよいよもって焦りだしながらも、早く町から出ろと言う。鬼に支配されている、という言葉すらも恐怖によって言えずにいた。男女は老人の訴えに首をかしげる


「ダメだ。このババァ頭にきてるわ。別の奴に聞くしかねぇよ、クロバーサ」


「次は若い男を捜せラドラー。面倒で手が出てしまいそうだ」


「テメーから手が出たら尚更聞けなくなるだろうが」


「なんだと。銃を抜けラドラー」


「あん?できんのか?薄ノロなテメーによぉ」


「言葉で言っても無駄なようだな。今わからせてやる」


 のんきに喧嘩を始めた二人に慌てる老人。その時、町の方から地響きのような音がした。言わずもがな、鬼である。よそ者を見たという報告があったのだ。侵入者を許せば門番は制裁をくらうため、何があろうと報告は必要だった。


 未だに喧嘩をしている二人に、巨大な影が近づく。この鬼は、旅人を捉えては奴隷にするような男であった。二人を見た鬼は嬉しそうににやけた。


「よそ者はお前たちか。殺されたく無ければ俺に服従しろ」


 鬼が二人の身体を鷲掴みにする。なんとこの鬼の手は、人間のウエストを握り込めるほどに大きいのだ。加えて、鋼の肉体に鉄骨もひしゃげるほどの握力。民が服従するのも無理はない。


「なんだテメェはよ」


 男は、握り絞められて初めて視線を鬼に向けた。骨がギリギリと軋む音がするが、汗ひとつかかずに鬼を睨む。続けて女が口を開く。


「どこを見ているラドラー。まだ話は途中だ」


 グワ、と豪快な音と共に、鬼の手がまるでポテトチップスの袋のように簡単に開かれた。そのまま大剣を振りかざし、男を握る拳に叩きつける。


「ウグゥ!?」


「……?硬いな」


「おい待てクロバーサ!テメェ卑怯じゃねぇかよ!!」


「よそ見をするからそうなる。もう一発いくぞ、動くな」


 鬼は、剣を振りかざす女を見て慌てて男から手を離す。大剣は風を切りながら男に向かうが、男はそれをかわして鬼の裏手へ回り込んだ。


「動くなと言ったはずだラドラー。……デカくなったな貴様」


「バカ野郎、そいつぁ俺じゃねぇ!こんなブタみてぇなツラと一緒にすんな!」


「殴れば同じ顔になる。一人も二人も変わらん、そこを動くなラドラー」


「ッチ、マジでやる気かクソアマ……。おうブタ野郎、死にたくねぇならさっさと酒場の場所を教えやがれ。そのアマは手遅れで話にならねぇが、俺も酒が飲めねぇでイラついてんのよ」


「貴様ら、さっきからふざけた真似を……」


「喋るなと言ったはずだ」 ゴォン!!


 女が大剣を平のまま鬼の膝に打ち下ろした。音と共に鬼の足は足首まで地面にめり込む。悲痛の叫びを鬼が上げた。


「ウゴオォ!!」


「喋るなとは言ってねぇだろアル中が!!おめーもさっさとしねぇか、マジで撃つぞ!?」


 ガチャリと鬼の耳元で銃を構える音がする。男が取り出したものは、鬼すらも驚くほど威力の高そうなデカいショットガン。中に詰めた弾丸は直径6センチの太さを持つ銀の弾、もはや小型の大砲である。目の前の、鬼もドン引きするような怪力女と耳元の銃を見て、鬼は初めての恐怖とともに降参した。


「ま、まて!わかった!!酒場は大通りの右手がわにある!!」


「最初からそうすりゃいいのよ。ナンセンスだぜ、お前さんよ」


「歯を食いしばれラドラー」


 女は大剣を捨て、手甲をつけた右の拳を思いきり打ち放った。


「ヒギッ!!??」バキャァ!!


「っと、だからよぉ、そいつぁ俺じゃねぇってんだよ、クロバーサ!!」


「なら次にこうなるのはお前だ」


 完全に意識が飛んだ鬼の襟を掴み、ハンカチのような気軽さでうしろに投げ飛ばす。女はそのままファイティングポーズを構えながら男を睨んだ。


「待ちな、それより酒飲みに行こうぜ。向こうにあるって言うからよ」


「なんだ、それを早く言えばいい。殴って悪かった、ラドラー」


「俺じゃねーって言ってんでしょーよ」


 投げ飛ばされた鬼は、肥溜め用にと老婆が掘り出した穴に落ちた。老婆は恐る恐る確認すると、息を吹き替えしそうもなかったので、そのまま動き出す前に首から下を埋めておいた。


 酒場につくと男女の二人は、入り口にある酒をつかんでのみながらカウンターについた。ビックリした店主が駆け寄ると、少しくすんだ金貨と一枚の紙を取り出し、突きつけて聞いた。

 

 


「おい親父。この鬼ってのはどこにいやがるんだ」


「ウィスキーを奢ってくれるなら引き受けるぞ。どいつだ」

【アイラヴ祭】序列六位『琴浦蘭』

ラン『レン……変なのが見えるの……怖いよ……』


レン『また?……いい?ラン、君に何か怖いものが見えたとしても僕が側にいる。僕は負けないよ。ぜったいだ』


ラン『……でも……もしレンが負けちゃったらどうするのです……?』


レン『そのときはそのとき。ランが強くなるまで僕は負けない。だから、僕が負けるときは、ランが僕のかたきをとるんだ』


ラン『レンが負けちゃうのに、わたしがかたきをとるの……?こわいよ……』


レン『とれるさ。君は僕の姉なんだ。本当は僕より強いんだって、僕は知ってる。それにね、ラン』


ラン『それに……?』


レン『君の目はもしかすると、君の才能かもしれない。僕にはそういうものがないけれど、君はそれが使える。自分の力は、どんなだってうまく使うんだ』


ラン『わたしにも……できますか……』


レン『できるさ!!だから、僕の勝てない相手はランが勝って。君が僕を信じてくれているように、僕も、ランを信じてる』

 

 

ラン「レン……あなたの言う通り……この力は私の才能だったのです……」


ラン「世界各国……どこでも誰でも……困っている人たちはたくさんおりました……」


ラン「……彼らの心が、入ってくるのです。私の半分に……レンが埋めてくれていた、私の半分に……」


ラン「でも私は強いのです……。レンは私を強いと信じてくれたのですから……私は強いのです……決して負けることはないのです……」


ラン「あなたの無念が……あなたの後悔が入ってくる……。わかります……ひじきのこと……あなたのこと……それが私の力になる……」


ラン「この悔しさ……この悲しさ……晴らさずにいられますか……?いいえ、いいえ、いいえ……晴らさずにいられる筈もありません……」


ラン「私のライブで晴らしましょう……バイオリンにのせて、遠くに飛ばしましょう……。この力は……そのためにあるのですから……」


ラン「レンの夢はこの私が叶えてみせます……。私は……琴浦蘭……。『降霊のシックスセンス』を持つ、レンの姉なのですから……!!」

【アイラヴ祭】最後の約束

ひじき「……そう。本当にあの子なのね……」


セレア「うむ。確かに伝えたのじゃ。……それで、どうするのじゃ?」


ひじき「決まってるじゃない。……あの子には、全身全霊で応えるわ」


セレア「ひじき……」


ひじき「約束だったわよねぇ……。まさか、こんな日が来るなんて思わなかった……」


セレア「……」


ひじき「ねぇ、私ね……。ランちゃんのインタビューをみて『怖い子』って思ったの……」


セレア「不気味じゃったからのぉ……あれは、誰でも怖いと思うのじゃ。無理ないのじゃ」


ひじき「いいえ、不気味だったから怖かったんじゃないわ……今、それがわかったのよ……その予感の意味が……」


セレア「……」


ひじき「……『勝てない』かもしれない……。どんな手を使っても……何をしても……私はランちゃんに『負ける気がする』って思ったのよぉ……」


セレア「ひじきが?らしくないのじゃ、本質を選んで、勝ち負けの結果そのものにこだわらないひじきがのぉ……」


ひじき「怖い、と思うことは、本心が侵食されたときに起きる防衛本能……脅かされれば怖いと思うのは普通よぉ……。私は、ランちゃんに負けたくないの……負けたくないから、負けがこわいの……だって……だってランちゃんは『勝ちたい』と思ってないわ……」


セレア「勝ちたいわけじゃないなら、いったいなんなのじゃ……?」


ひじき「『勝たせない』って……ランちゃんは思ってるのよぉ……。それは今まで、私が『勝ちたい』と思ってきた相手にしてきたことよぉ……」


セレア「ランは一体、何が目的なのじゃ……ひじきにはわかってるのじゃ?」


ひじき「……えぇ。結果とはいえ、序列6位はレン君に渡した席よ……。私と同じように、レン君が手に入れた席を死守するつもり……。セレアちゃんは知ってるでしょう……『私が6位を護る理由』を……」


セレア「……うむ。そこは、お主の永遠のライバル……『喜多見カリンの席』なのじゃ……」


ひじき「……約束なのよぉ。『あの子に勝つまで私は上に上がらない』って……」


セレア「……なら、今回の対バンでお主が勝ったら……」


ひじき「ifの話は嫌いよぉ。夢見ちゃうもの……。けど、また私にも『勝ちたい』って思える日が来るなんてね……ランちゃんに感謝しないといけないわねぇ……」


セレア「しかし、忘れちゃいけないのじゃ。お主の対戦相手は、カリンじゃない……。ランなのじゃ……!」


ひじき「……そうね。そうだったわね……。ありがとう」


セレア「一人で平気なのじゃ?」


ひじき「子供じゃないのよぉ……お行きなさいな……」


セレア「……のじゃ」

 

 

 

 

『@¥₩¥&&#<÷÷₩"%◇♭*<₩¥¥@』


待たせてごめんなさい、ひじき。


『~~₩%"\#¥#¥☆^^♭*#"』


決着をつけましょう。

 

 

 

 

ひじき「……今更勝ちたいだなんて、私……馬鹿ねぇ……。本当にお馬鹿……」