PFCS SS劇場!

パラレルファクター カルティベイトサーバーのSSをまとめるブログです。主にツイッターでのやり取りを纏めます!

【学園】道場破り

ヒストプラズマ「なんでぇなんでぇ、これがカラテェィのドージョーって奴かい?おーおー盛り上がりにかけてやがる!」


ソテツ「な、なんだあんたは!ここは空手部の訓練場だ!土足で上がるな!!」


ヒスト「ワォ、こいつぁすまねぇ!しっかし勝手がわからんってんだから仕方ねぇ!詫びのひとつで勘弁してくんな!」


ユウエン「どうされましたかソテツ先輩。何やら騒がしいようですが……」


ソテツ「ユウエン、君の知り合いか?あまりにも無礼だ!」


ユウエン「1ミクロンも存じ上げませんが」


ソテツ「おっと、自己紹介が必要かい嬢ちゃん。アッと驚くこの俺様のぉ!大発光の名乗りあげぇ!!近くばよって目にもみ」


ユウエン「打ち込んでもよろしいでしょうか?」


ソテツ「思いっきりな」


ヒスト「ヘイヘイヘイ!!人がよぉ!!目をみて話してるときに野暮って奴だぜそりゃあ!?」


ラミリア「そこ!!稽古サボらない!!」


ソテツ「ラミ先輩!さ、サボってるわけじゃ無い……」


ユウエン「偶発的な事故です。誤解なさらず」


ヒスト「アウチ!?ラミリアっ!?ワッツ!?あの、おっきな胸の……」


ラミリア「あら?えーっと……確か、ヒストプラズマ君?珍しいわね、見学に来たの?」


ヒスト「ヒュウ……!嬉しいねぇ!俺の名前を覚えてくれてよぉ!いや、それとも、そりゃ忘れられねぇ良い男って顔かい?」


ラミリア「何言ってるのか良くわからないけど、同級生だし……みんな知ってると思うけど?あんた色々と有名人だし……」


ヒスト「イエスッ!!そりゃあそうだろうぜ!!なにしろこの俺様はァ、お天とさんの次に輝く伊達男ォ!眩しすぎて目が離せねえってくらぁ!!」


ラミリア「なるほど、噂通り実際巻き込まれるとキツいわね……。見学は自由だけど稽古の邪魔はしないでね?」


ヒスト「フゥ!痺れるねぇ。いかにも主将って台詞じゃねェか。でも、こんな辛気くせぇとこで踊ってるだけじゃあよ、女が廃れるぜ?どうでぇ、俺のグレートなバイクで街をエンジョイっつーのは……」


ソテツ「……待てよ。今の言葉、訂正して貰おうか。辛気臭いだと……?」


ユウエン「先輩、会話は時間と体力の無駄です。ここは私が……」


ラミリア「二人とも待ちなさい!!」


ソテツ「ラミ先輩!!」


ユウエン「何故でしょう、理解できません」


ラミリア「……はぁ。まったく、こんな軽い挑発に乗るなんて修行不足じゃないかしら?空手は心を鍛える武道、怒ったら負け。わかった?」


ソテツ「くっ……。確かに、その通りだ……」


ユウエン「……不覚。正拳突きからやり直します」


ヒスト「ヒュウ……いーい女だ……ますます勿体ねぇ……」


ラミリア「あんたもよ、いい加減にしなさい、ヒストプラズマ君。一人前の男が道場まで来てお喋りなんて、恥ずかしくないの?軟弱者!」


ヒスト「ホワイ!?この俺が軟弱者!?そいつぁ聞き捨てならねぇ侮辱だぜ、ラミリアのねーちゃんよ」


ラミリア「そう?ならそんなところにいないで用意しなさい。体験学習ってことで稽古つけてあげるから。全力でいいわよ?」


ヒスト「お、オイオイ、お前さんわかってんのかい!?女が大の男にストリートファイトってなぁ、冗談がすぎるってもんだろ、なぁ?」


ソテツ「いや、むしろここがストリートじゃなくて道場で運が良かったと思うぞ」


ユウエン「井の中の蛙


ヒスト「へぇ!?だ、だってよぉお前……」


ラミリア「そういうところよ。安心して、今私が叩き直してあげるから」シュバッ


ヒスト「ワッツ!?


ソテツ「……あれ、もしかしてラミ先輩怒ってるんじゃ……」


ユウエン「あの上段蹴りから伺うところ、加減する気無しかと」


ラミリア「どうするの?勝負する?それとも尻尾巻いて逃げる?」


ヒスト「お……俺様ぁこのかた一度だって女に拳向けたこたぁねぇんだぜ……バカはよくやったもんだけどよぉ……それをおめぇ……」


ラミリア「あら、気遣ってくれてる?ありがと、でも私弱い男に気を遣わせる程『弱虫』じゃないから、遠慮しないで」


ヒスト「ハッ、口は減らねぇのが女ってもんだ!いいぜ、今回限りは特別にィ!紳士らしく相手しようじゃねぇですかぃ!オラッ!!」ブンッ!


ラミリア「何それ?」ペシッ


ヒスト「ワッッツ!?!?


ラミリア「手加減無用って言ったでしょ?油断してると……」


シュバババッッ


ラミリア「こうよ?」


ヒスト「!?!?な、何……?」


ソテツ「正中線三発……当ててたら医務室でモーニングをとるところだったな」


ユウエン「頭と局部も狙えるスピードです。なんだかんだで加減してもらえてるので安心です」


ヒスト「ワアァァッッツ!?!?


ラミリア「目、覚めた?ウチの空手は寸止めしないわよ?」


ヒスト「シット!!オーケー、こいつぁデンジャーなファイトってこたぁ伝わったぜ……ど、どうやらマジにならねぇとヤベェのは俺様の方ってことだな……てやんでぇ!」


ソテツ「お、ファイティングスタイルをとったぞ」


ユウエン「典型的な対人の素人構え。気休めかと」


ヒスト「HAHAHA!!こいつが見えるわきゃあねぇ!レクチャーしてやろうじゃねぇの、映画『ロックィー』を10回も観て身に付けた黄金のライトアッパーの威力をよぉ!!泣いて逃げるのは今の内だぜラミリアさんよぉ!!」シュバッシュバッシュバッ


ラミリア「えい!やぁ!とぅ!!」ペシッパコッポムンッ


ヒスト「アゥチッ!oops!ノーッ!!待て待て!!待ちやがれべらぼーめ!!」


ラミリア「手合わせ中に喋らない!!舌噛むわよ!!」


ヒスト「ば、ばっきゃろっ!!イテッ!!おまっ!!アゥッ!!やめろぃやめろぃ!!」


ソテツ「完全に自分から当たりに行ってるよな」


ユウエン「拳を打点に添えているだけですから自滅と言えます」


ヒスト「なんでぇなんでぇ!!何がどうなってやがんでぃ!!どんな手品使ってやがる!!きたねぇぜお前さんよぉ!!」


ラミリア「言いがかりよ。今の隙に何十本も打ち込めたけど、ちょっとかわいそうだったから」


ヒスト「ち、チキショウ!!仕方ねェ、こいつはとっておきだったがここで使わなけりゃ男が泣くってなもんだ……卑怯とは言いなさんなよ!知る人ぞ知る俺様のぉ!!最後の奥の手いざ刮目!!うおおぉぉぉ!!!」ダダダダ


ソテツ「な、なんだ!!奥の手って!!」


ユウエン「恐らくただの突進かと。あの構えからはそれ以外想定不可です」


ラミリア「捨て身のタックル……!考えたわね、これなら当てるだけでも充分な威力だけど……そうはさせない!!」シュッッ


ソテツ「足払い!!そうか、慣性がついている分これは避けられない!!」


ユウエン「本当に無計画な突進とは……」


ヒスト「ただのぉ!!タックルじゃぁ!!芸がねェってこったろぉ!!


ソテツ「……なっ!?


ラミリア「え!?


ユウエン「はっ!!


ヒスト「ヒストプラズマぁぁぁ!!漢のおぉぉぉ!!大ッッ!!発ッッ!!光ォォォッッ!!」カッッ!!


ラミリア「うわっ眩しいっ!!」ヒュッッ


ヒスト「なにぃ!?!?


ズゴォォッッ!!


ヒスト「オゴォッッッ!!??


ラミリア「あ、しまっ!!モロ決めちゃったっ!!ちょっと、大丈夫!?驚いてつい……!!」


ユウエン「鳩尾、クリーンヒット。失神です」


ソテツ「うわぁ……ラミ先輩の鳩尾正拳突き……考えたくねぇ……」


ラミリア「ち、違うわよ!!当てる気なんて無かったんだから!!ほんとに!!あ、あはは……とりあえず担架!!医務室!!


ヒスト「ラミ……リア……」


ラミリア「え!?喋れるのあんた!?」


ヒスト「……惚れ……たぜ……ラミリアの……姐さん……よ……」ガクッ


ソテツ「……」


ラミリア「……度胸だけは、認めてあげるわ……」

 


後日

 


ヒスト「たのもぉー!!


ソテツ「あ、お前!!昨日の!!」


ユウエン「本来三日は立ち上がれない筈ですが……」


ヒスト「オイオイ、一応俺は上級生ってのは忘れてもらっちゃ困るねぇ。ま、今日からはお前さん達が『先輩』だがな!」


ラミリア「ほらそこ!!サボらない!!」


ソテツ「ら、ラミ先輩!!あ、あいつがまた……」


ラミリア「ちょ、あんたもう立って大丈夫なの……!?信じられない……」


ヒスト「まぁまぁ、こまけぇ湿気た話は今日は無しってな。よぉよぉ、入部ってのは一体どうすればいいんでぇ?」


ソテツ「は!?」


ユウエン「冗談でしょうか?」


ラミリア「ちょっ!ヒストプラズマ君、空手部入りたいの……!?それなら先生に入部届け出せばいいけど……本気?」


ヒスト「あぁ。本気だぜ。俺様はよぉ、見えちまったんだ……。あのお前さんのナイスパンチがリバーを抉ったときによ……。一面の星が目の前で輝いて……


ユウエン「幻覚症状と思われます。治しましょうか?」シュッ


ソテツ「いや……手遅れだろこれ……」


ヒスト「だからよ!!俺はもっと輝きてぇ。ここでなら輝けそうだ!!これからよろしく頼むぜ、姐さん!!」


ラミリア「え、えぇ……!?!?姐さん……!?」


ヒスト「おうよ!!俺はあんたについていくと決めた!!シショーとスシだ!!


ソテツ「弟子な」


ヒスト「こまけぇ野暮なこと言うない!!ハハハ!!よろしく頼むぜ先輩達よぉ!!」

記憶を捨てた男

 目が覚めると、俺は砂だらけの砂漠に居た。

 

 身体のあちこちは埋まり、手足の痺れと喉の乾きが思考することを許さなかった。

 

 訳もわからずただ一人、砂漠の真ん中で倒れていた。日が暮れるまで、俺は動かなかった。


 気温が下がると頭が冷え、徐々に色々と思い出してくる。

 

 俺は、この砂漠に何日も居た。

 

 何故?……そう聞かれれば、こう答えるしか無い。


『死にたかった』


 だが、肝心の理由に関しての記憶がない。

 

 何故だか俺は一人、死ぬためにわざわざここに来た。

 

 そして、またそれは失敗したようだ。


 ……また?あぁ、そうか。

 

 きっと俺は何回も、何十回も試してるのだろう。

 

 その度にこうして生き延びて、生き延びて……。


 死に損なう度に、記憶を無くしている。

 

 ということだろうか。


 記憶を失ったという違和感、実感はある。

 

 起きたときに忘れてしまった夢のようだ。

 

 さっきまで確かにあった記憶が、さっぱり消えている。

 

 何かを覚えていた、それだけが今わかることだ。


 何をやっても死ぬことはない。

 

 そして、死にかけてまた目が覚めると、何かしらの記憶を失う。

 

 それでも俺は死のうとした。


 そんな無限に続く、苦痛の伴う馬鹿げた行動を俺は何度もやってきた。

 

 俺はそんな無駄な事をするような男なのだろうか。


 あるいは、『記憶を消す』のが目的か。


 何か、『死んでも忘却したい』と願うような、面倒な記憶でもあったのか。

 

 なんにせよ、その目的はきっと叶った。今回の俺には死ぬ理由は何もない。

 

 ならば、当面は生きてみてもいい。

 

 俺は自由なのだから。


 そうして俺は砂漠の夜道を歩いた。

 

 極寒の砂嵐の中、月に煌めく泉を見つける。

 

 水面を覗くと、酷く隈の浮かんだ『人間』が写った。


 背後には何もいない。

 

 何かがそこに居た筈の、忌々しい何かはそこにいない。

 

 それが何なのか今の俺にはわからない。

 

 だが、前までの俺はきっと、そいつを忘れたくて、死ぬほど忘れたくて仕方がなかったんだな、と思えた。


 旅立とう。

 

 まっとうに生きてみよう。

 

 絶望に生きたであろう過去の俺達に、俺は感謝の別れを告げよう。

 

 俺はもう、お前達とは違う男となった。


 だから名前も捨てていこう。

 

 今度は、死なずに。

 

 追悼の意味を込めて。

 

 二度と名乗らないその名をここに捨てていこう。

 

 

 

 

「──さようなら。安らかに眠れ、『アバターラ』」

【アイラヴ祭】同期の桜

しずく「烈火さんいっつもあの子に夢中で連コですよぉ……夢來ちゃんさん~……」


夢來「そうですね……やだ、鬼の私でも眼が緑になっちゃう……」


しずく「このままじゃ私たち積みゲーにされちゃいますぅ……レイズされたらドロップしちゃいますよぉ~……」


夢來「え、やだ、私転職する自信ない……圧迫面接こわい……」


しずく「でもでもぉ~……私たちもアイドルですから、やっぱり強気に倍プッシュがいいと思います!!手持ちのカードに自信あり!ですから!!」


夢來「なに、やだ、嫌な予感しかしない……でももうしのごの言ってられない……!」


しずく「そうそう~!!ここでしゅばばっと高レート全賭けしかないですぅ!これを見てください!!」


夢來「こ、これは……!!『プロアイドル合同強化合宿』!!嘘やだ、無理……!!それに、『プロ経験三ヶ月以上』……やだ、条件満たしてない……しずくちゃん意義あり……」


しずく「待った!夢來ちゃんさん、よく考えてみるんです……。プロの定義……それはギャラの有無……!!ふふふぅ、ギャンブルはぁ、何があるかわかりませーん……!」


夢來「ギャラって……え、やだ、まさかしずくちゃん……!!」


しずく「その通ぉり!!『烈火さんの後ろで言われるがままにコーラス&ダンス経験二ヶ月と半月』!!圧倒的逆転リーチ!!我々の下積みが功を成す確定フィーバーがやってきてるんですよぉ!!ここで積まなきゃ嘘ですよぉ!!もう少しで出る気がするんですぅ!!」


夢來「やだ汚い!!しずくちゃん汚い!!」


しずく「夢來ちゃんさん……。『バレなきゃイカサマじゃねぇ』んです!!いいですか!!これはオフィシャル!!我々には大事な大事なアタック☆ちゃぁんす!!なんですよぉ!!」


夢來「で、でも……私自信ないです……そんなの怒られちゃいます……!!」


しずく「わからず屋ですね夢來ちゃんさん……。我々はあとがない……『失敗が痛くない』んです。むしろ敗退しても記憶に名を残せますぅ!!そう!!起死回生のカード!!『ヤバそうなら損切り』でいーんですよぉ!!」


夢來「え、やだ、汚い!!さすがしずくちゃん汚い!!で、でも……でももうそれしか……」


しずく「そうです夢來ちゃんさん……。芸能界の黒い話、知ってますか……?売れないアイドルの末路……都市伝説……賭けに負けゆく者たちと、我々の本当の最後の姿……」


夢來「と、都市伝説……!や、やだ、まさか……!!」


しずく「1050日!!地下アイドル行き!!」


夢來「ち、地下アイドル行きっ!!やだっ!!それだけはやだぁ……!!」


しずく「そうと決まれば組むのですぅ!!この合宿……二人で乗り越えて、親っパネして烈火さんに認められましょぉ!!」


夢來「は、はいっ!!ふつつか鬼ですが、よろしくお願いします、しずくちゃん!!」


しずく「やったぁ!!ビンゴですぅ!!」


夢來「び、ビンゴなんですか!?よくわかりません!!」


しずく「(ふっふー……!夢來ちゃんさんの美貌で視線巻き上げて、私のツキの強さとびっくりギミック(イカサマ)で一気にデビューしてやるですぅ!!誰だかわかんないけど『イッコ』とかいうのには負けないですよぉー!!)」


夢來「(新人の注目の子に目立つ顔傷の鬼の子がいるって噂です……自信はないけど、まけたくないです……私、負けず嫌いな方の鬼なんです……!!)」


しずく「そうと決まれば特訓ですよぉー!!レート上げるですぅー!!」


夢來「わ、私も、鬼なりに頑張ります……!」

 

 

 

常務「……ほぉう」


烈火「あっはは、さっすがはイカサマのイカちゃんだ。おねーさん、珍しく冷や汗!なんで真後ろにいるの気づかないっかなー!!あっはは!!はは……」


常務「なるほど、あの妖怪のアホの子が相当ツいてるってことはわかった。一度現実を知るのも悪くないだろう」


烈火「あーあ、あの合宿、天帝候補者の集まる超スパルタ合宿っぴょん。セレアっちゃんに教えてあっげよっと」


常務「伝えても無駄だぞ。『あの実力の二人』だから私は許可するんだ、三馬鹿はまだ早い。それに第一、条件があっていない」


烈火「えぇー!!面っ白くなると思ったんだっけどにゃー……。せっかく『対・セレアっちゃんチーム用』に育てたのに……」


常務「いずれ新人トーナメントで会うだろう。今回は絶対に参加させん。主催はこの私だからな、万が一にも参加させてなるものか。もうスキャンダルは充分だ」


烈火「(じょむじょむ……それ、若い子的に『フラグ』って言う奴だぴょん……)」

【アイラヴ祭】こはねの『いつも通り』

こはね「~♪」


常務「どうしたこはね。珍しく嬉しそうじゃないか」


こはね「常務さん、おはようなの……。いつも通りなの……ふふ……」


常務「そうか。いつも通りなのは良いことだ。アイドルは常にいつも通りが良い」


こはね「はいなの!」


常務「(それがこはねの『いつも通り』か。いつでもそのように笑っていてほしいものだな)」


こはね「常務さん、次のライブはいつ……?」


常務「あぁ。PV撮影が終わり次第北部に遠征だ。今回は新人トーナメントがあるから天帝7のメンバーで全国にアピールしてもらう。ライブの後は、カメラが回るが全力で遊んでこい」


こはね「本当!?楽しみなの……!!」


常務「ところでこはね。そろそろ天帝7のメンバー投票が始まるが、ライバルのことは考えているか?」


こはね「ライバル……?」


常務「あぁ、ここ最近ドレプロで活躍している、天帝候補のアイドル達だ。お前は駆け足で天帝入りしたからな、あまり意識してないだろう」


こはね「ごめんなさい、他の子のこと……よく知らないの……。たくさんいるの……?」


常務「現在は……五名といったところか。蘭の天帝入りはほぼ確定と言っても良い。あの子を除いた上で五名だ」


こはね「でも、あんまりお話きかないの。CMとかバラエティー番組でたまに見かけるくらい……他の会社の子達の方がよく見るの。チュリプロとか」


常務「あぁ、上位七名を持ち上げるのは我が社独自の戦略だからな。どちらかと言えば、大々的にメディアで知名度を獲得するのは天帝になってからだ。今はプロダクション過多の時代で、会社別に分野があるんだよ。例えば製菓販促CM関係はアイスバニラ芸能事務所が提携している。カフェチェーン方面のPRは最近チュリプロが強い。お前もよく使っているから馴染み深いだろう。テレビをつければチャンネル別に他社アイドルが目立つのは当然だ」


こはね「知らなかったの。じゃあ、ドレプロのアイドルはどこと提携してるの……?」


常務「何処とも提携はしていない。我々の専門は『アイドル』で、CMや映画出演は二の次だ」


こはね「アイドル専門……!」


常務「あぁ。先の例で言えば、『スタベのあの子』と言えばチュリプロの子が真っ先に出てくるだろう?同様に、『トップアイドルのあの子』と広い範囲で呼んだとき、現時点では我が社の天帝が共通認識として持ち上がる。ドレプロは『トップアイドルを育成する事務所』だ」


こはね「そうだったの……。天帝にまでなったのに、知らなかったの……。ごめんなさいなの……」


常務「なに、謝るようなことじゃない。聞いてても理解してない子もいる……ひじきとかな……。まぁ、つまりはアイドルの登竜門がドレプロだ。天帝の序列防衛は簡単なことじゃないぞ。もちろん、烈火も引退を考えてる割には、明らかにお前を意識してるしな。それに……」


こはね「それに……?」


常務「天帝でない子は『ここしか目立つチャンスがない』。アイドルファンを侮らんようにな。……今まで隠れていた分、全力投資してくるぞ。防衛するというのは、『今年も全力で支援してもらえるアイドルでいる』ということだ。貯蓄を解放するこれからのアイドルが勝ち上がることよりも遥かに難しいからな」


こはね「初防衛……。大丈夫なの、こはね、負けないの!!」


常務「!……ふふ、頑張れよ。手は貸さないからな」


こはね「はいなの!!」

 

 

 

常務「……連休で何かあったな?良い顔をするようになったものだ、あの分なら負けることはないだろう。むしろ磨きがかかる。……私としたことが、少し荷担しすぎたか……ふふふ……」

稲妻海賊団のカルヴァトス探検記

 お宝を匂いで探すことのできる狼型のサターニアのヤミタと、その付き人であり刀の達人でもある老人ゼンロを仲間に加えた紫電率いる稲妻海賊団一行は、ドレスタニア大陸の西側、カルヴァトス地方に到着した。今日の船番は床に埋まっている金弧ととばっちりをうけた冥烙、ついでに芦華である。


紫電「すげぇところだな……規格外のデカさだ……」


 紫電は砂浜に生えた、なんかやたら太くてたくましい木を見上げる。通常の幹の3倍は太いであろうその木は、ドレスタニア城の屋上にも届きそうな長さだ。試しにえいやえいやと一、二発ほど叩いてみるが、女性とはいえ鬼の、普通の木であれば数発で折れかねない威力の紫電のパンチですら揺らすことも叶わない。実にたくましい木であった。


忌刃「姉御、どいてナ」


 のそり、と前に出てきた3mほどもありそうな鬼、忌刃が拳を固めた。アニメのようにギチギチと拳が唸る。忌刃のパンチは本当に洒落にならないのだ。本当にだ。紫電はチッと舌打ち(みたいなかわいい声)をしながら、忌刃の後ろに下がった。この舌打ちは悔しさではなく、単純に木を殴ったのがこころもちちょっと痛かったのである。忌刃は、木の表面をコツコツと叩きつつ感心したように唸った。


忌刃「とんでもねェ木だゼ……海からジュースみてェに勢い良く水を吸い上げてやがる……パワーと耐水性、バイタリティに優れたパワフルな木ダ……良い形の奴を見つけりゃ大型船の竜骨にそのまま使えるだろうナ……」


 もしゃもしゃのもみあげをふんわり撫でつつ、冷静に分析する忌刃。忌刃の髭は剛毛だが毛先は柔らかいらしい。サバイバルでは火種にも使えるという代物だ。忌刃は木の表皮をじっくりと観察し、威力の通りやすい場所を探すと脇をしぼり、腰を回転させながら、固めた拳を一直線に突き出した。すごい。半端じゃない音がする。すごいパンチなのだ。数m離れたところで見ていた仲間たちの髪の毛が衝撃波で揺れる。とてもすごいパンチなのである。木は轟音を鳴らしてグォングォンに揺れたが、摩擦で湯気が立つわりに損傷は皮が一枚剥がれた程度であった。忌刃は心なしか口許を緩めた。殴りがいがある、という顔である。


忌刃「マジかヨ……とんだタフ野郎だゼ……」


ヤミタ「うぅー、お宝捜しはー!?」


 痺れをきらしたヤミタがぴょんこぴょんこしながら紫電の周りを走り回った。逸る気持ちを抑えられず、すでにケモミミと尻尾が出ている。あざとい。だが、自然なあざとさである。紫電はヤミタの頭をわしわしと撫でながら、笑顔を見せた。


紫電「もうお宝見つかっちゃったぜ!この木がそうだ!」


忌刃「俺たちにとっちゃ資源や原料も宝みてぇなもんダ……」


 成る程、と頷くゼンロ。物を見る眼に素直に感心した。鬼の価値観とはなかなか見上げたものだ。ゼンロは老後の楽しみを洞察に見いだしていた。ヤミタは依然、キョトンとしたままである。意味がまだわからないから、とりあえず尻尾をふっている。あざといのだ。


忌刃「だが、まぁ心配なこともあるがナ……」


紫電「心配?何がだ?」


忌刃「降りてすぐ見つかるようなものが、自然のまま残ってんだゼ。つまり、発見は簡単だが……」


ゼンロ「持ち帰る事は容易でない、と」


忌刃「そうダ。切り倒すだけでも半日はかかるゼ。俺でもコイツを運ぶのは気が進まねェナ……」


 喜び舞い上がったのも束の間、一同は現実を知ると落胆で肩を落とした。ガーン、である。目の前のお宝を持って帰れないなど、海賊にとっては実に歯がゆい話なのだ。紫電はかつて、無限に食べれるかと思って山盛りに作った生クリームが胸焼けで食べれなくなった事を思い出した。その例えは、恐らく意味が間違っている。


紫電「……ん、そういえば、なんか変なもんがところどころにあるな」


 ふと、目の前に転がる岩のようなものを見つけた紫電の呆けた表情につられ、一同はその物体を眺めた。でかい。その物体の周りの砂はクレーターのように盛り上がり、それが空から落ちてきたものだとわかる。


ゼンロ「火山岩にしては色も形も整い過ぎているようだが」


忌刃「……わかったゼ。姉御、伏せナ!」


 忌刃の突然の警告にびっくりし、ヤミタとともに伏せる紫電。同時に忌刃とゼンロは立ち上がり、空に向かってパンチと居合い斬りを繰り出し、すさまじい勢いで落ちるモノを迎撃した。スゴい。オーバーキルである。ひとたまりもない。ソレは中心から綺麗に真っ二つに割れ、くす玉のごとくヤミタと紫電を避けるように左右に落ちた。すると中から甘ったるい匂いの真っ白な汁が飛び散り、二人は頭からずぶ濡れになった。


紫電「きゃあ!!……じゃない、う、うわぁなんだ一体!!」


ヤミタ「あまーい!!」


紫電「お、おいっ!!ちょっと、やめ、舐めるなぁー!!」


 興奮によってほとんど獣化したヤミタが紫電に覆い被さってぺろぺろワンワンする。見せられない。微笑ましいがさすがにちょっと見せられない。そんな中、さりげなく手拭いでサッと刀を拭いたゼンロを見て、忌刃は訝しげな顔をした。


忌刃「(……落ちてきたコイツの筋をド真ン中で斬りやがったナ……。その上、まるで濡れてねェ……。ジジイ、とんでもねぇ眼と反射神経を持ってやがる……)」


ゼンロ「……優れた観察眼だ。構造を理解した上で貫通力のある打撃でなくては中身が飛散しよう」


 忌刃の視線に応えるかのように、ゼンロは刀を収めながら語る。忌刃のマックスの拳で破壊すれば辺りは白まみれだったため手を貸したつもりが、不要だったようだとゼンロは軽く微笑んだ。忌刃は面白くなさそうに鼻を揺らした。


忌刃「コイツぁココミナの実に似た果実だナ。ここまで分厚い繊維状の殻じゃ開けるのも困難だろうが、天然の樽みてェなもんダ。非常食にゃ持ってこいだゼ。殻にも使い道がある、コイツだけでも良い土産ダ」


 開けた実の外側を覆う固形の白い実をちぎり、口に含み、ゆっくりと咀嚼する。味見をするコックのようだ。体格が良い為か、なんか意外なほど似合っている。


忌刃「味も悪くねェ。好みは分かれるだろうがミネラルや糖分も豊富で、なんとも言えねェ弾力がある。毒素は問題ねェナ」


紫電「おいし……うめぇじゃんか。ココミナは殻ばっかでなんか筋張ってて喰えたもんじゃねぇけど、これはいいなぁ!次から次へとラッキーだぜ!!」


ヤミタ「うめー!!」


ゼンロ「幸先が良い、と判断するには早かろう。根本的な疑念は未だ晴れん」


紫電「疑念?」


 意外な言葉に首をかしげる紫電。ヤミタはお腹一杯で、おねいさん座りの紫電の太ももに頭をのっけて居眠りをはじめようとしていた。気づけば、片方の実は空っぽだ。夢中になって飲んでいたらしい。紫電は獣状態のヤミタのふわふわの頭を撫でた。


ゼンロ「何ゆえ誰も此の地方に訪れないのか、という事だ。ともすれば、考えられる理由は二つ。純粋な未開拓地であるか……」


忌刃「何かヤベェ障害があるか、だナ……」


紫電「障害って……ん……?なんか揺れてねぇか……?」


 その時、唐突な揺れが大地を襲った。遠くで何かが大爆発するような音と共に、空を灰色の煙が覆っていく。ヤミタは耳を尖らせて飛び起き、音の方向を見た。


ヤミタ「ふんか!!」


紫電「あ!?火山地帯かよここは!!まずいぜ、船に戻れ野郎共!!」


忌刃「待て姉御!!無闇に動くんじゃねェ!!」


 瞬間、紫電の目の前に大きな塊が落ちる。隕石ではない、先程の木の実である。爆音と衝撃で身体が弾かれ、飛ばされた紫電を忌刃がキャッチする。木の実は傷ひとつついていないが、砂ほこりがぶわっと舞い上がった。


紫電「きゃああぁぁぁ!!ななな、なに!?なに!?」


忌刃「オイオイオイ……!そういうことかヨ!!バカヤロウ!!」


ゼンロ「ぬ……!!これは……!!」


 ゼンロが落ちてくる木の実を斬り払う瞬間、空には無数の影。そう、揺れは木を根っこから直接揺らす。この木はめちゃくちゃに長く、超重い実が先端に複数ついている。もう、すごい。すごい荒れ狂うようにブルンブルン揺れているのだ。そして当然、実はもげるのである。落ちるのではない、投げ飛ばされるのだ。絶景かな、直径1m大の超頑丈な木の実がまるで流星群。数の暴力。容赦ない。タコ足みたいな大木が、タコ焼きみたいな実を投げまくり、大地をタコ殴りにする直前であった。


忌刃「このままここに居たらいずれ船も巻き込まれるゼ!!死なねェことを祈りながら走れ!!」


紫電「無理無理!!死んじゃうぅ!!」


ゼンロ「逃げ腰の割に足の早い娘だ」


 勘と運とごり押しでなんとか船まで逃げ込んだ海賊団。今朝着替えを覗いたせいで半分死にかけていた自業自得の金弧と、悲鳴を聞き駆けつけてしまったために頬に張り手の跡がくっきりと残った可哀想な冥烙は、砂浜の物音と皆の様子と甘い匂いを振り撒きながらびしょ濡れで泣いている紫電をみるやいなや、とりあえず目を背けながら急いで出港の準備を整え、大陸を脱出した。


忌刃「っつーわけであの大陸は見送りダ。イラつくが攻略すンなら陸路しかねぇナ……」


 コーヒーを飲みながら冷静に話す忌刃。モシャモシャの髭でコーヒーを嗜む大男、そんな姿がやたらと似合う忌刃だが、マグカップが小さすぎてつまむ指が少し可愛いな、と紫電はいつも思っている。


金弧「ドュフフwwwあんなエロい目に遭って諦めてないとはwwwブフォ!!」


紫電「エロい目には遭ってねぇよ!!ったりめーだ、宝を前にして逃げる奴は海賊やめちまえ!!火山があるってんなら、あの場所は宝石も採れるってこった。虎穴にいらずんばなんたらって言うだろーが!」


 金弧をぶん殴った拳を持ち上げてワクワクしながら語る紫電の言葉は、本日二度目の臨死体験中の金弧には聞こえなかった。


忌刃「果実は逃げてる最中に二つキャッチしたゼ。植物に長けた精霊とでもコンタクトがとれりゃ、環境の良い島でも育てられるかもナ」


冥烙「簡単そうにスゲェことしてるっスね忌刃……」


 走りながら降ってきた実をキャッチしたのは、ヤミタと紫電に当たりそうだったものだということをゼンロ以外は知る由もない。桁違いの体格がなせる神憑った頭上キャッチである。クールな男だ。


ヤミタ「すっげー楽しかった!!」


芦華「俺もいきてーな!!いきてーな!!出番もほしーな!!」


ゼンロ「……(私欲の為であれば、と悪事を見張るつもりでいたが、彼らは試練を好むだけやもしれん。……となれば、愚かだが愉快な者達だ。もう少し様子を伺うとしよう……)」


 今日の稲妻海賊団は敗北したが、彼ら海賊、『死ななきゃ笑え』がモットーだ。運も実力のうち。寿命短し鬼の海賊、危機は笑って乗り越える。昼は暴れて楽しめば、夜は宴でまた楽しむ。それが稲妻海賊団!最後はいつだって笑顔なのである!!

 


金弧以外。

ドレスタニアの血

エリーゼ「……!!が、ガーナ様、珍しいですね……こんなところで……」


ガーナ「エリーゼか。毎度ご苦労な事だ……。そんな誰にも好かれんような元国王の墓なぞ、雨ざらしで充分だ。拭く価値もない」


エリーゼ「まったく、亡くしてなお悪態つきに来る程嫌いですか。慣れましたけど……しかし、口でそう言いながらなんです、その手の葡萄酒は……」


ガーナ「あぁこれか。呪詛酒だ。好きだろう多分」


エリーゼ「うっわ……良くそんな皮肉思い付く……」


ガーナ「む……。まぁなんだ、私も口にしたことはあるが、案外良いものだ。今の世だからこそ作れる。奴にも愛国心はあるだろう、報告も兼ねている。嫌がらせついでだがな」


エリーゼ「やってることは鬼畜ですけど……報告とかもするんですね。意外と言うか雨降りそうというか……少し心変わりされました?」


ガーナ「いや、もう意地を張る歳でもあるまい。ガトーを許すなどといった無駄極まりない言葉を吐くつもりもないが、それとこれとは別だろう。……ドレスタニアの未来を考えるきっかけになるやもわからん。胸焼けをするような気分だが、たまにはこうして墓に悪態をつくのも悪くなかろう」


エリーゼ「素直じゃありませんね、相変わらず」ボソッ


ガーナ「なにか言ったか?」


エリーゼ「いーえ。なにも。それで、なにか思い付きました?」


ガーナ「ふむ……そうだな。奴の親としての甲斐性だけで判断すれば、実に滑稽で浅ましい男であったと未だに言えるが、少し視点を変えればガトーはある意味で偉業を成したのかもしれん」


エリーゼ「偉業、ですか。ガトー様はあの時代、王としてご立派であったと私は思ってますが、偉業と言いますと……」


ガーナ「いや、『ドレスタニア王』としての奴はとても褒められたものではない。代々赤い髪の我が家系には、ある種呪いともとれる特徴がある」


エリーゼ「ドレスタニア一族の、呪いですか……?初耳ですが……」


ガーナ「語る必要もないのでな。赤髪の一族は冷酷で残忍で、他者を恐怖でもって支配する才能……カリスマとやらがあるという。なんでも、眼に曰くがあるとかないとか。かなり昔に迷信によってその一族は滅ぼされたのだが、その生き残りがドレスタニアの祖と言われている」


エリーゼ「……文面通りと言えば、ガトー様もガーナ様も当てはまるかもしれませんね」


ガーナ「あぁ。この特性をガトーは『覇道』と呼んだ。しかし、奴はドレスタニア家の覇道の運命から逃げた。それでも王の道を進もうと言うのだから、随分と中途半端な人間でな。……この血のせいで凡人にもなりきれず、かといってドレスタニア家の恥晒しだ」


エリーゼ「なぜガトー様は、運命に逆らおうと思ったのです?何か特別な理由でも?」


ガーナ「『恋』だ。ガトーは、不運にも母上と出会い、自身をの立場を呪った」


エリーゼ「呪うって……。し、しかし、何て言いますか、若いガトー様は大層美形でしたし、ガーナ様も……こほん。ど、ドレスタニアの血筋は女性からのアプローチも多かったのでは……?当時も身分違いが厳しい世ではないはずですし、その、お母様も名のある家柄の筈では……」


ガーナ「……我が血筋はな、母が子を孕むと早死にをするという、統計的に偶然とは言い難い特性がある」


エリーゼ「な、なんですって……!?そ、それじゃ、ガーナ様は……」


ガーナ「……そこが、ガトーの唯一の功績かもしれん」


エリーゼ「そ、それが、ですか……。どういうことですか……?」


ガーナ「過程は褒められたものではないが、どうあれガトーは『赤髪の血を薄めた』。……呪われた運命に縛られていないショコラを作ることができた。それは偉業だ」


エリーゼ「……ガトー様は、この国の呪いに耐えられる子に、と常日頃から口にしていました。報われていたのでしょうか……」


ガーナ「奴の感情など知らん。私はドレスタニアの血を受け、あの軟弱者の代わりにすべきことを果たした。混乱する世を力で制圧し、恐怖で縛り付け、強制的な戦争の終結を実現した。無論、その手段は『褒められたものではない』と知りながらだ」


エリーゼ「ガーナ様。……ご自身を責めないでくださいといつも言ってますよ?」


ガーナ「……すまん。だが、」


エリーゼ「……それしか、ありませんでしたからね。あの時代は……」


ガーナ「私は奴に出来なかったことをしたまでだ。心残りはない。覇道の時代は終わりだ、もうここで終わらせていい。にわかには信じがたいことだが、ショコラが即位してからのこの国の変わり方は良い方向だと思える。……敵は未だ多いが、今の私はそのために生かされているのだろう。威圧や強制も民を守る手段の一つだがあいつはそれをまだ知らん」


エリーゼ「……ガーナ様はご結婚を考えたことはありますか?」


ガーナ「王族の結婚など政治的な儀式に過ぎん。今更義務もなかろう。私にはもはや過ぎた代物だ。ガトーとは違うからな」


エリーゼ「そう、ですか……」


ガーナ「お前はどうなのだ。そういえばそのような素振りも見せんから、考えたことも無かったが……」


エリーゼ「言ってくれますね。貴方のお陰で婚期なんてとうの昔に過ぎ去りましたよ、薄情もの」


ガーナ「む……。縛り付けていたつもりはないが……」


エリーゼ「縛りまくってます!!恋やら何やらにあけくれる程満足な休みなんてありました!?責任とってくださいよ!!」


ガーナ「まぁ落ち着け。そうならなかった時の為に、一応私もそれなりに考えている。安心しろ、責任は私がとる」


エリーゼ「えっ……?ちょ、そそ、そんな急に言われましても……」


ガーナ「終身雇用は勿論だが、退職金に加え数々の功績の報償金と、念のために記録しておいた時間外勤務分の残業代も全て含めれば……まぁ、一等地にこの城と同等のものを建ててなお5世代は跨げる額だ。宝石にも困らんぞ。前借りも調整次第だが考えよう」


エリーゼ「……」


ガーナ「む、妥当だと思うが、まぁ他にも相談はいくらでも……」


エリーゼ「はぁ……。そんなことだろうとは思いましたけど。ガトー様のせいですよこうなったの!!わかってんですかこのっ!!このっ!!」


ガーナ「お、落ち着けエリーゼ!足を痛めかねん、棒か何かでやれ!!」


ガトー「すまん……」


ガーナ「さて、帰るとしよう。少し先の話をしたがまだやってもらいたいことはたくさんあるのだ。悪いがもうしばらく城に居てくれ」


エリーゼ「はいはい……。ずっと居ますよ、結婚なんて所詮儀式ですし、こうなったら結果で勝負です……」


ガーナ「む、なんの話だ?」


エリーゼ「こっちの話ですー!!」

【アイラヴ祭】ランの『お友だち』

ラン「……」


こはね「……ラン、はじめましてなの……。ランも、お墓参り……?」


ラン「……えぇ。今日……お友だちがここに来るように教えてくださいまして……」


こはね「お友だち……?」


ラン「はい。かけがえのない……お友だちです……」


こはね「……ランは、私に会いに来たの……?」


ラン「……あぁ、なんと申せばよいのでしょうか……。私は貴女に会いに来たのではありません。でも、貴女に会うことが目的だったのかも知れませんね……」


こはね「……?よくわからないの……」


ラン「こはねさん。貴女は、お墓参りのその意味を、ご存知ですか……?」


こはね「意味……。えっと……。亡くなった方への追悼の為……」


ラン「それは違うのです、こはねさん……」


こはね「……違うの……?でも……わたし……」


ラン「心優しいこはねさん……。貴女がこうしてここに来ている理由は、きっと貴女のご両親の為なのでしょう……。慈しみ、愛を込めて、大切な人をお見送りする……。その気持ち……その愛情は、決して間違いではございません……。ですが、どうかお顔をあげなさい……。貴女のご両親は、貴女を心配しておられます……」


こはね「……!!」


ラン「お墓参りとは、元来『生者』の為のものなのです……。亡くなった方の未練を拭う為の儀式ではありません……。貴女が会いに来ることを、貴女のご両親はとても楽しみにしております……。ですが、貴女はいつも、笑顔で帰らない……。悲しい気持ちでいることを、ご両親は心配なさっているのです……」


こはね「……ランは……ランはどうしてわかるの……?ランも心が見えるの……?」


ラン「いいえ。私が見えるのは、あくまでも見えた者のみ。聞いたことのみ。その代役を、私は自分の生きる理由と定めております……。私は、『死者と会話ができる』のです……」


こはね「!!パパとママが見えるの……!?教えてほしいの……!パパとママは……なんて……」


ラン「こはねさん……。それは私からはお伝えできません。」


こはね「どうして……!!だって……」


ラン「死は受け入れなくてはなりません……。死者も、生者も、それは等しく定められたこの世のルールです……。在るべき者は、在るべきところへ……。塵は塵に、灰は灰に。私は死者の鎮魂を手助けする者であり、未練を断ち切る者。新たなる未練を産み出すわけには参りません」


こはね「そんな……酷いの……」


ラン「……貴女の言葉は死者に届いております。貴女の気持ちも、心も……。けれども、死者の気持ちは貴女へ届くことはありません……。だからこそそれは未練となります……。私を通して言葉を紡いでも、その真偽は本人にしか定められません……ですから私は、生者として、琴浦蘭の、自分の言葉と気持ちで貴女にお伝えするのです。こはねさん……。ご両親が見たいのは、貴女の悲しいお顔ではありませんよ……。元気な笑顔で、お話しして差し上げなさい……」


こはね「……笑顔……。でも……やっぱり難しいの……どうしても……苦しくて……」


ラン「……貴女のお母様は、第六感をお持ちでした」


こはね「……!!」


ラン「『その日』の事を今も悔やんでいるのであれば、その心配は無用です。貴女が本当に言いたいこと、伝えたかったこと、ご理解されております」


こはね「ママ……」


ラン「……もう、よろしいですね。それでは、私はこれで失礼します。これからは、良きライバルとして……。どうかよろしくお願い致します、こはねさん」


こはね「……ラン、ありがとうなの……。」


タオナン「ちょっと待ちなさい!!」


ラン「……貴女は?」


ひとこ「(タオちゃん……!!)」


紫電「(行くと思った!!)」


タオナン「あたしはタオナン。デビュー前のアイドルよ、よろしく。それよりラン、あんたにずっと聞きたいことがあったのよ!!」


ラン「……はい。よろしく、タオナンさん。えぇ、できる限りお答えします。私たちのライブに来てくださったお返しに……。妹のことでしょうか?」


タオナン「し、知ってるなら話が早いわ……。あのね、はっきり言ってあんたがレンの代わりを務めるって、あたしはちょっと納得いかない」


こはね「タオナン……それは……」


タオナン「こはねは黙ってて。レンは本気でアイドルが夢で、ひたむきに努力して天帝に上がったわ。でも貴女は、言ってしまえば替え玉合格よ。天帝になりたいなら一から始めるのが、この業界の常識でしょ!!コネで入って、本当にアイドルでいられるの!?」


ひとこ「タオちゃん……」


紫電「いや、でもなんとなく、俺たちも思ってたことだ。俺たちはアイドルのプロになる。ちゃんと理由がないとな」


ラン「……私が天帝に入ること、それは、私が志願した事ではありません。同時に、私は天帝として活動する権利を持ちません。タオナンさん、貴女の言うことは正しい。ですがそれは、私心が混じっておられます」


タオナン「私心……?あ、あたしはただ……」


ラン「貴女は私が天帝の器であるかどうかよりも、『レンを継ぐ』ということに納得していないのでしょう?」


タオナン「う……そ、それは……その……」


ラン「このような場で問いかけなどせずとも、私が器かどうかはそのうち露見することです。貴女は結果ではなく口上で証明することを望むお方ではないでしょう」


タオナン「い、いえ……あたしは、あたしはただ……」


紫電「(タオが押されてる……珍しいぜ……)」


ひとこ「(す……凄く……非の打ち所がない人だね……)」


こはね「……ラン、違うの……。タオナンはあなたを心配してるだけなの……」


タオナン「あ!!ちょっとこはね!!勝手に読まないでよ!!」


こはね「ごめんなさい……でも、二人とも勘違いしてるの……。ラン……あなたの心は……なんだかとても……」


ラン「……貴女も第六感をお持ちなのですね。えぇ、私は『執着』しています。天帝序列第六位……この席は、この席だけは他の者にまだ渡すわけにはいきません」


紫電……レンさんの席だからか?


タオナン「紫電……!」


紫電「ランさん、それは間違ってるぜ。確かにその席はあの日、レンさんが勝ち取ったものだ。けど、レンさんは自分で手放してる。未練はない筈だ。さっきのこはねさんに対する言葉と矛盾してる!!」


ひとこ「そ、そうです!!ランさん、レン様は納得して引退されてます!!わ、私も凄く悲しかったけど、引退後もレン様を応援してます!!」


タオナン「そ、そうね……ひとこは説得力あるわね……。ラン、あんたがレンを想う気持ちが強いのはわかるけど、レンは……」


ラン「……皆様、誤解をされています。私の執着の源は、レンではありません」


紫電「へ……?」


タオナン「……レンじゃない……?でも……」


ラン「……塵は塵に、灰は灰に。在るべき者は在るべき処へ。それが私の役目です。……そう、本来『在るべき処』へと……」


ひとこ「……で、でも!!それじゃランさんはアイドルを義務感でやってるってことになりませんか……?」


ラン「いいえ。元よりアイドルは、レンの夢ではなく私の夢でした。アイドルになりたい、その気持ちがあったからこそ、レンと共に今まで一緒にいたのです。ですから、私は今度こそアイドルを真剣にやりたいと思っています。……しかし、それとこの執着はまた別物……。これは私のお友だちとの約束ですから……」


タオナン「そ、その『お友だち』って、なんなのよさっきから!!わからないわ!!」


こはね「……もしかして……『喜多見カリン』……」


ラン「……こはねさん。これはアイドルとは関係のない、私の役目。約束は果たします……。『 東 雲 ひ じ き を 在 る べ き 処 へ 』」


「「「!?」」」ゾクッ


ラン「あのお方があの場所に……『序列七位』に居座ることを……私は決して許しません。決して。……それでは、失礼します」

 

 


こはね「……すごく、怒ってたの……」


紫電「……めちゃめちゃ怖かった……」


タオナン「……天帝の器、あるわね……」


ひとこ「……ひ、ひじきさんとライブするのかな……」


こはね「……わ、わたしも買い物一緒に行きたいの……」


タオナン「……ご飯も付き合いなさい……」