PFCS SS劇場!

パラレルファクター カルティベイトサーバーのSSをまとめるブログです。主にツイッターでのやり取りを纏めます!

借り。

「あちゃー、マッチ湿気っとるやないかい……仕方おまへんなぁ」


 ドレスタニア城の広い廊下の柱に背を預けたままカヌレは、やれやれと首をふり、わざと反響させるような大声で大袈裟に呟いた。咥えた煙草を唇で上下させながらキョロキョロと辺りを見回すと、誰かが中庭で休憩しているのを見つけ、笑顔で陽気に歩き出す。花壇に座っている、置物かと勘違いするほど黒い大きな人影の横にずけずけと腰を下ろし、まるで親戚のような態度で軽々しく話しかけた。


「まーそういうときもありまんな、気ぃ落とさんと上向いてこ……ってなんでウチが慰めてんねん!!逆やろ!!なんでやねん!!」


 ベシベシと肩を叩き爆笑するカヌレ。ユラリと反動で揺れた大きな髪の隙間から、殺意に満ちた目付きで睨む、年増らしい女性の表情が見えた。おぞましいほど荒々しい、何かでえぐれたような傷痕が、顔の大部分を蝕んでいる。荒れた長髪は地面を這うように足元まで届き、土がつくのもおかまいなしで風を受けながらゆらゆら揺れている。


「なんや、辛気臭い奴やと思ったら妖怪さんかい。銭の臭いも消え失せたわ。えろうすんまへんけど、マッチ貸してくれまっか。吸うんならわかるやろ?気が立ってたまらんのや。ただでさえ厄介な案件抱えとるっちゅーのに」


 相手のことなど知らん、といった具合にツラツラとハチャメチャな事を言い放ちながら足をバタバタさせて顔を向ける。早くしろ、と言わんばかりに咥えた煙草をクイクイさせた。
 大きな妖怪の女性は胸ポケットからマッチを一本取り出すと、シュッとコートに擦って火をつけてからカヌレの口許に運ぶ。カヌレは火を受けとると、おおきに、と一言お礼をしながら微笑んだ。


「妖怪はん、よう蹴りなはるやろ。なんぼ蹴ってきたか覚えとる?」


 無言のまま静止し続ける妖怪。細い眼の下の隈に憂鬱さが現れている。マッチに着いた残り火を自分の煙草で吸いとりながら、漏れる煙を吹き払う。


「ウチは絶対忘れへんタイプや。恨みも恩も、買うも売るも、貸すも返すもキッチリさせんと気持ち悪くてしゃーないわ。……さて、一仕事やって来ますよって。どうせ暇やろ?後でまたお邪魔するわ。ほな」


 ふんふん、と陽気に鼻唄を歌いながら、また廊下に向かって歩き出した。途中腕捲りをし、両拳からバキボキと妙な音を鳴らす。
 小走りで中庭へ入ってきた肌の真っ白な幼い少女が、だるそうに煙草を吸っている妖怪を見つけると無表情のままパタパタと近づき、城へ戻るカヌレとすれ違う。突然、妖怪の異変を不思議に思った少女は、半ば反射的にカヌレに振り向くと何かを感じて吃驚し、その場で腰を抜かした。


 妖怪は煙草の吸い殻を指先で潰し、口許を緩ませてまた静かに目を閉じ、気持ち良さそうに風の揺れを感じていた。

【アイラヴ祭】策士の帰還

常務「大崎が帰ってくる。これが何を意味するかはお前らが一番わかってるだろうが、一度気を引き締め直せ。以上だ」


鴬谷(デブ)「ま、マジっすか……大崎さんは洒落になんないっす……」


新橋「生憎だが俺は明日から出張でレンの企画の下調べで各地方を転々とする。すまないな、助け船はだせない」


鴬谷(デブ)「勘弁してくださいっす……大塚さんは……」


大塚「大崎君とか……終わった……もうおしまいだ……ハハ……第三部・完……ブツブツ……」


テイチョス「大崎とは?」


常務「あぁ、うちの営業成績のナンバーワンだ。中々冗談のきかん堅い男でな、かなり気難しい奴で雑魚共に容赦がない。だが、どんな無謀な仕事も平然と期待以上の成果を生み出すもんで上層部からは重宝されている」


新橋「今年の初めから海外出張でいなかったからな、気が緩んだデブなんかは焦ってるけど、とてつもなく嫌な奴だが悪い奴じゃないぞ」


鴬谷(デブ)「矛盾してるっすよ新橋さん!」


新橋「いや、ムカつくけど味方ってことだ。お前、何回もケツ拭いてもらってるだろ」


鴬谷(デブ)「うぐぐ、それは反論できないっす……」


テイチョス「海外出張へはどういった理由で向かったのだろうか良ければお聞かせ願いたい」


常務「天帝ナンバー4の白玉きくりと共に、ワールドツアーに向かった。こちらがゴタゴタしていたので進捗報告は受けていないが、『You Cube』の公式MVの再生数が突如二桁ほどズレたところを見るに、心配はないだろう。元々失敗など考えてすらいないが」


テイチョス「なるほど。しかし、白玉きくりの経歴、職歴などの個人データに複数の異端な点がみられるが、これは一体?」


鴬谷(デブ)「あぁ、それはっすね、きくりちゃんは天帝にいながらジュニアアイドルなんすよ。所属してるプロダクションはチョコプロっす」


新橋「ウチの別支店みたいなものだよ。ドレスタニアプロダクション・チョコレートガールズという名前で、業界ではチョコプロと呼ばれてる」


テイチョス「チョコプロ……データの解析が完了した。小学生以下限定のアイドルや子役を中心に活動している姉妹プロダクション、と。ではなぜ白玉きくりが天帝に所属している?」


大塚「それが『彼』の力なんだよ……。大崎君は誰もしようと思わないことをズキュウウゥン!!って感じで平気でやって、成功させるんだ……おかけで我々はいつも窓際なんだ……」


常務「仕事中に巨大掲示板みたり便所で隠れてパズル&ドラグーンに夢中になるような無能は大崎がいなかろうが変わらん」


大塚「な、なぜそれを!?あれはほんの茶目っ気で……」


常務「お前の性格からカマをかけただけだ。貴様は後で顛末書を出せ」


大塚「ああぁぁんまりだあぁぁ!!」


新橋「大崎は経営戦略のスペシャリストだ。単純にきくりちゃんの知名度が現天帝を上回るような事態に陥ったところ、ドレプロの更なる利益と話題性を産み出すため、当時ナンバー6だった秋風はるるが引退した直後に大崎はドレプロ役員へ自ら提案した。まぁここだけの話上層部にはろくな者がいないんだが、大崎は彼らの弱味を大量に握っているとの噂が流れてる」


常務「他人をとことんまで信用していない皮肉屋だが、アルファのお前は気に入られるんじゃないか。あいつの好きそうなタイプだ。奴の指示は可能な限り請けると良い」


テイチョス「職務は全うする。上司からの必要な命令であれば従事しよう」


鴬谷(デブ)「あ、じゃあ本の少し頼みたいことがあるんすけど」


テイチョス「断る

代理人対策

ガーナ「これは仮説だが」


エリーゼ「なんでしょうか突然」


ガーナ「例の女の連れているアルビダの娘の能力が、思考の共有だと言うならば、という話だ」


エリーゼ「興味深いですね。いいんですか、見てるかもしれませんよ」


ガーナ「いや、見られてたのだ、ここ数日。暇潰しで思考を読みに来ていたらしい」


エリーゼ「じゃあ、対策練っていることもバレてるんですか……」


ガーナ「まぁそこでも一つわかったことがあるが、あの二人は別に我々を敵視していないのだ。サバトの事に関してもなぜか協力的でな、ついでにあの娘は老人に感謝もしている。愛情表現の仕方が一般的でないだけだろう」


エリーゼ「善意で蹴りたがってるってことでしょうか……」


ガーナ「本題に戻る。つまり、あの娘は任意で複数人の思考を読むことができるわけだが、その対象以外の情報は頭にいれることができないらしい」


エリーゼ「自分から聞こうと思わなければ言葉は聞けても理解ができない、ということ……でしょうか」


ガーナ「そういうことだ。特に、思考は言葉と違って生き物である以上、完全に停止させることはできない。無意識にも何かしらを考えてしまうだろう」


エリーゼ「常に騒音状態ですね。いや、脳の働きである分疲労度は比較になりませんでしょうし、そう考えると気の毒な能力とも……」


ガーナ「そんなことを本人の目の前で考えていたら、細かく教えてくれた」


エリーゼ「えぇ……無神経すぎません?」


ガーナ「仕方がないだろう性分なのだから……それにあの娘もまだ少女だ。気を許した相手の思考を読むのはスキンシップみたいなものだと。成り行きで過去の記憶を共有されたがろくでもない環境で育ったがゆえに、まともな者の思考を読む楽しみを最近まで知らなかったようだな」


エリーゼ「楽しまれても困りますが、まぁ乱暴な人達の心なんて覗きたいとは思いませんね。それで、どんなことを教えてくれたんです?」


ガーナ「あの娘は、常に誰か一人の思考を借りて行動しているそうだ」


エリーゼ「思考を借りる……とは……?」


ガーナ「大量の人の中ですべての者の考えを聞こうとすれば脳のキャパシティを超え倒れてしまう。かといって共有を遮断すれば何を言われても聞くことはできるが内容を理解することができない。そこで、自分に近い誰か一人の思考のみを自分と共有し、その者が聞き取り反応したことを追体験する形で判断しているのだ」


エリーゼ「つまり『状況把握用の受信機』を作っている、と」


ガーナ「大雑把にまとめればそういうことだな」


エリーゼ「でも、それは逆に言えば『依存相手』がいなくては成り立たないことなのでは……」


ガーナ「その通り。過去の記憶が事実ならば、前の依存相手は酒場の店主である『父親』だったそうだ。だが、非常に臆病かつどうしようもなく無責任な男で、鬼の賊から脅されては、なすがままに自分の娘の身体を売り続けた。あの娘は賊の思考を読みたがらず、父の思う通りの行動を取るしかなかったわけだ」


エリーゼ「……胸糞の悪いお話ですね。このドレスタニアでまだそのようなことが行われてたなんて……」


ガーナ「妖怪の立場は未だよろしくない。記憶の共有はあの娘にしかできぬ事だ。身に起きたことを告白した勇気を尊重せねばな」


エリーゼ「えぇ、事態の深刻さを軽んじていました。なんと言えばいいか言葉に詰まります。……それで、現在の依存相手はあの女性というわけですか?」


ガーナ「そのようだな。教育に良いとは流石に言えないが、あの娘にとっては最も安心できる拠り所であることは確かだ。例の自傷行為も主従関係を強める行為なのだろう。依存度が高いほど彼女は欲求が満たされる。あの女も独占欲が異常であるため、お互いに利害が一致している」


エリーゼ「とことんまで歪んでいるんですね。ですが事情を知ると批判する気も起きませんし……難しい話ですね、これは……」


ガーナ「そこで話は最初に戻るわけだが」


エリーゼ「あぁ、脱線しましたね。仮説の話でしたか」


ガーナ「そうだ。彼女の話からすると、『思考を読む』という能力は『全ての生物を対象としている』のだろう」


エリーゼ「個人では何もできそうにありませんが、組む相手によっては無敵にもなりますね。現に、そういう意味では最悪のコンビが出来上がってますし」


ガーナ「では、『生物でない者の思考』はどうなるだろうか?」


エリーゼ「生物でない……?そんな哲学的なことを聞かれましても………………いや、可能ですか、確かに」


ガーナ「そうだ。『アルファ』に対して彼女の能力は効かないのでは?」


エリーゼ「なるほど。言われてみれば可能性はありえますね」


ガーナ「私と老人の命が関わっているからな、味方であってもボディーガードはつけたい……。割りと切実にな……」


エリーゼ「お気に入りにされてますものね……ご愁傷さまです」


ガーナ「他人事みたいな言い方をするな」


エリーゼ「私は心の底から関わりたくありませんので……」


ガーナ「酷い……」

【アイラヴ祭】不穏な進捗

目白「…………」ブツブツ


常務「む……おはよう、目白。今帰りか……」


目白「…ントラ……ベントラ……スペースピーポゥ……」


常務「おい、目白。聞こえてないのか?」


目白「ヒイイイイィィィィィ!!!!!!!!あ、常務……お憑かれ様……です……」


常務「お、おう……朝四時の廊下でやられるとさすがの私でも困る反応だ……」


目白「……なんでもないわ……うん……この人は大丈夫だから……」


常務「(誰と話しているんだこいつは……)」


目白「珍しくお早いのですね……常務も屋上で交信ですか……?」


常務「いや、やり残しが少しあってな。ちょうど良い、軽くお前の方の進捗も報告してくれないか。本の少し受け答えする程度で構わん」 


目白「えぇ……わかりました……良いですよ……」


常務「すまないな、帰りがけに。蘭のプロデュースはどうだ?」


目白「上手くいってますよ……ランさんは素質があるのか喚びやすくて……」


常務「喚ぶ……?」


目白「私の手持ちの水晶も全部染まりましたし……今は特に貯まってますから……」


常務「……ソロデビューの舞台は決まったのか?」


目白「申請はしておりますので相手様次第です……。ランさんも毎晩相手の子を意識して森でたくさん打ってますので心配はいりません……」


常務「意味はよくわからんがとりあえず準備は出来てるということか……。相手、というと共演の予定だな?手の空いたアイドル、誰か残っていたか……?」


目白「お暇な方がいるではありませんか……。うふふ……まだハッキリと決着がついていないんでしょう……?」


常務「お前まさか………………いや、なるほどな……確かに悪くないな……くくく……わかった、手配してやる。その代わり、次は警備を固めた上での全国配信だ。不正はさせんぞ」


目白「ありがとうございます……ランさんもお喜びになります……」

 

 


常務「楽しいことになりそうだ。初めてだよ、あいつに再戦を申し出た奴は……」

『ユグドラシル』の言い伝え

「ところで、ジェリー婦人とはどういった関係だ」


「なんです、藪から棒に」


「いや、知り合いのようにもとれる話し方だったのでな。同じく、グノーメアは人間と共存する精霊の都の一つだろう」


「えぇ、元は私たちも一つの国ですからね」


「精霊史は部外者に厳しくてな、あまり資料も寄贈されない。戦後は特に警戒も強く、我が時代は受け入れられることは無かった。平和になりつつある今こそ、彼らの文化を知りたいのだ。これは王としてではなく、個人的な探求心なのだが……」


「私の知っている範囲でしたらいつでもお答えしましたのに」


「時代が時代だ。若い頃の私ならば、その内容次第では危険因子とみなし早期に潰すこともありえた。過激派が何かしようものならお前にも訪ねたが、彼らは復讐心に取り込まれるほど弱者では無かった。唯一、遥か昔からシルフィールとは親睦があったが故に、義理を守る必要があったのだ」


「まぁ、ご安心ください。そこまで重大なことではありませんよ。先祖達が精霊と共存を始めたのは、一つの国の内乱による分裂が始まりです。その国は、世界樹を信仰する大いなる聖都『ユグドラシル』」


「ふむ……?ユグドラシルといえば、精霊作家の『C・C・プディング(キャラメル・カスタード・プディング。ペンネーム)』による長編小説、『腕輪物語』の架空の国ではなかったか?」


「あれは、史実を元にしたファンタジー小説ですよ。高齢の精霊達的には結構懐かしいシーンとかあるらしく、それもあってベストセラーです。子に伝えたい本ナンバーワンですね」


「若者向けの流行小説に出てくる魔法の国が実在していたとは初耳だな。もはや伝承のレベルか」


「太古の話ですからね、私も長老達が子供に聴かせるおとぎ話のような形でしか知りませんでした。ユグドラシルには火、水、土、風の四属性を全て保有する、森羅万象の象徴だったと聞きます。ただ、信仰を続けるにあたり、加護として授かる属性にばらつきが生じ、『我こそが一番の加護を授かった精霊だ』と主張する四人の祖が現れたのです」


「力の奪い合いか。人間も特別な力、例えば強大な兵器などを前にすると、あるものは他者に使われることを恐れるが故に、あるものは他を服従せんがために、欲と恐怖によって醜く争い合うものだ。愚かだと、本人達すら理解していてもな」


「一説によりますと、ユグドラシルに宿るとされた大きな竜が、世界を護るために四人の守護者を選定する目的で自身の力を四分割したとも言われていますが……残念ながら、争いの結果世界樹は枯れてしまい、直前に残された種を各地に植えることになりました。大いなる意思によって人間の住む四つの土地に植えるよう啓示を受けた四人は、それぞれ民を募って別れたそうです」


「ふむ。その土地の選定に何か共通点は存在するのか?」


「信仰心ですね。当時の人間達にも信仰はありました。とはいっても、生きていく為に豊穣の祈りを捧げたり、山の怒りを沈めたりするために神殿を建てたりと、神々への信仰ですね。世界樹の根の張っていたところでもあったそうな。私たち人間側も、神の遣いとしてやってきた精霊が起こす数々の奇跡を喜び、快く受け入れたと」


「なるほど。また興味深い言い伝えだな。戦争で随分荒らされてしまったが、未だ健在なのは素晴らしいことだ」


「四人の精霊長も一度の過ちを心底悔やみ、ユグドラシルが枯れたあとは受け継いだ種を植え、いつの日かまた一つの世界樹に育つまでと代々伝えていったのです。風は私の国でもある『シルフィール』、土はジェリー婦人の故郷『グノーメア』、他にも、火の国『サラマンド』や水の村『ウィン・ディーネ』と、それぞれ四方に別れていますね。ジェリーとは親戚同士の腐れ縁です」


「グノーメアとシルフィールは城側に近いが、サラマンドとウィン・ディーネはかなり遠いな。これらにも知り合いはいるのか?」


「いえ、どちらも癖の強い国でしたから。子供の頃と、ショコラ様が即位された後に外交官として訪ねたことは何度かありますが、今でもあんまり行きたくはないです。特にサラマンド」


「ふむ、差し支えなければ」


「声がうるさいんですよ。全力で挨拶する文化があるようで暑苦しいです。火山も近くて肌にも良くありませんし……。あと、ウィン・ディーネ村の人たちは凄く心配性で、よそ者が来るというだけで男女問わずすぐ怯えて影に隠れてしまい、何故か無駄に罪悪感がありますね……」


「それは色々と凄いな……。シルフィールの民も自由気まますぎて困ったもんだが」


「のびのびしてて良いじゃないですか。戦闘になると好戦的ですが……。それを言い始めたらグノーメアも大概ですよ」


「働きすぎで死者がでるくらい真面目だな。仕事熱心といえば聞こえは良いが、休みを与えるとかえってストレスになる難しい民達だ……」


「なんでも、去年のグノーメアの子供達が憧れる有名人第一位はショコラ様だそうですよ」


「あんまりあれを真似されては困るのだが……」


「参考になりませんからね……」


「今度サラマンドに顔を出しに行こう。案内を頼む」


「えぇー……なんでまた。エルギスさんとかで良いじゃないですか」


「いや、実はサラマンドの精霊には聞きたいことがある。レーヴァテインは恐らく彼らと関わりがあるのではないだろうかと思うのだが」


「まぁ、そういうことならお供しますよ。確かに、その剣には随分禍々しい加護を感じますし」


「危険因子の可能性も大いにある。あまり考えたくはないが、他にもこういった『世界を壊す兵器』があるかもしれん。悪意に満ちた輩に見つかる前に回収したい」


「今屋上でお金数えてる人とかですか?」


「俺が先に見つけたら、真っ先に王の旦那に売りやす。安心してくだせぇ」


「だからお前に見つかるわけにいかんと言ってるのだ……」


「旦那は金払いが良いですからねぇ……くっく、確かに、領収しやした」


「昨日も『仕事』してもらったんですか?あんまり彼を頼るとろくなことありませんよ……」


「いやその、賭けポーカーでだな……」


「……」


「まぁ、金の心配はない。ちょっとギャング転がしとけばすぐ貯まるからな。次は負けん」


「ちょっと用心棒さんを雇ってきます」


「おい待てわかった、わかった!!もうやらんから!!この通りだ!!」
「ただの悪ふざけでさぁ!!冗談に『兵器』持ち込まれちゃたまったもんじゃねぇですぜ外交官の姐さん!!」


「(今度からこの作戦で行こう)」

ジェリー・ムース・バーバロア嬢

エリーゼ「公園にお菓子をばらまく貴族が現れた?」


兵士「はっ、馬車で駆けつけては、大量のお菓子をばらまき、高笑いして去っていくそうです」


エリーゼ「それは、危ないわね。一部に毒でもまぜられたら大変だものね」


兵士「そ、それは残酷であります……!なんて悪魔的発想!!思ってもいませんでした!!」


エリーゼ「……だから侵入者一人に攻め入れられるでしょう、あなたたち……。少しは頭使いなさい」


兵士「は、はっ!すいませんでした!!」


エリーゼ「とにかく向かうわ、それはどこの公園?」

 

***

 

エリーゼ「ここね、怪しい人は……と、あれは……!」


ジェリー「オーッホッホッホ!!さぁ皆さんお拾いなさい!!ガムとチョコレートですわぁ!!オーッホッホッホ!!」


エリーゼ「誰かと思ったら、ちょっとジェリーさん!?何をされているのかしら!?」


ジェリー「オーッホッホッホ!!ごめんあそばせ、エリーゼさん。見ての通り、支給品を庶民の皆様にお分けして差し上げておりますの。邪魔しないでくださる?」


エリーゼ「そういうわけにもいかないわ。こんな国民の警戒心を下げるようなことは私が認めません。今すぐ配るのをやめなさい!!」


ジェリー「な、なんですの突然!?法律上の問題はありませんことよ!?ちゃんと確認しましたわ!?」


エリーゼ「配り方ってもんがあるでしょう!貴女のせいで国民を縛る法律が増えたらどうするおつもり!?罰則はなくても、倫理的にアウトよ!とにかく、馬車を降りなさい!!」


ジェリー「納得がいきませんわ!!わたくし、皆様に感謝されることはあっても、迷惑をかけることはしていませんわよ!!恵まれない国民たちに愛のお菓子配りですわ!!」


エリーゼ「子供じゃないんだから……いい?あなたのは国民の救済ではなくて、『餌付け』よ。そうやって国民をいたずらにたぶらかしてるとね、そのうち国民は貴女に甘えっぱなしになって、自分で何もしなくなる。一日だけならまだしも、継続的にやられては国の将来性にも影響が出てしまうわ。それに、悪い人が貴女を模倣して毒入りのお菓子をばらまいたり、どさくさに紛れて貴女の配るものの中に一つでも何か良くないものを混入させたりしたら、どうするんです?」


ジェリー「ど、毒……!?え、エリーゼさん、なんて恐ろしい犯罪を思い付くんですの……。サイコの発想ですわ……」


エリーゼ「貴女ね……。はぁ……つまり、ことと次第によっては問題が起きかねない方法をしているの。すぐにやめないとしょっぴきますわよ?」


ジェリー「わ、わたくしはただ、『もしお金持ちになったら、貧乏な子を助けたい』っていう幼少期よりの夢を叶えたかっただけですの……。人助けが犯罪になるだなんてこれっぽっちも考えていなかったのですわ……」


エリーゼ「まぁ、戦前は貧しい国の生まれで、戦後、地下鉱脈発見による莫大な富で爵位を得たバーバロア家の事情もわからないわけではないわ。思想事態は淑女として尊敬すべき正しい事よ。ですから、人助けするにもちゃんと手順を踏みなさい」


ジェリー「どうすればいいんですの?わたくし、お金は毎日三食程のカルボナーラをいただける位手元にあれば充分ですわ。ドレスなら自分で編みますもの」


エリーゼ「そうね……お金の使い道がわからなければ、今ある孤児院に寄付するとか、学校に教科書を買うとか、そうすれば恵まれない子にもちゃんと届きますわよ」


ジェリー「ほんとうですの!?あ、でも……今配っていたお菓子は、施設に入っていない子達に向けて行っていたのですわ。私は、今苦しい子達にむけて届けたいんですの……」


エリーゼ「慢性的な孤児院不足は我が国の悩みの種でもありますからね……。どうにかしてあげたい気持ちは我が国王も持って活動しているわ」


ジェリー「そうですの!!『お菓子を配るのがダメなら孤児院を建てれば良いじゃない』ですわ!!」


エリーゼ「そうねそれなら……って、貴女ちょっと、それは流石に寄付しすぎじゃ……」


ジェリー「構いませんことよ!!わたくし、貧しい子の為ならなんだってしますもの!!孤児院の設立はどれくらいかかるのかしら?20億ドレスタニアドルくらいで充分かしら……」


エリーゼ「我が王宮より遥かに大きな城が建つわよそれは……200万ドレスタニアドルくらいでも大層立派な孤児院ができますから、他は活動費に回しなさい……」


ジェリー「となると次はどこに建てるか、ですわね……。子供たちが遊べて、空気も美味しく、ホスピタルの近い場所が好ましいですわ。何匹か羊や鶏も飼って、命を育てながら楽しく過ごしていけるような……」


エリーゼ「貴女ったら、本当に献身的なのね。どうしてそこまでして尽くそうとするの?」


ジェリー「……戦争の記憶が胸に残っているから、ですわ。貴女方シルフィールの民は戦死が主でしたでしょうけど、私の国『グノーメア』は『餓死』が普通でしたの」


エリーゼ「……そう。ねぇ、ジェリーさん。貴女には貴女にしかできない事が沢山あるわ。でも、貴女に出来ないことが貴女を苦しめたときは、私や王にご相談下さいね。私たちにとっては、貴女も『救われるべき国民』なのですからね」


ジェリー「エリーゼさん……。えぇ、わかりましたわ。ご迷惑をお掛けしたことを、再度改めてお詫びいたします」


エリーゼ「良いのよ。孤児院の完成、楽しみにお待ちしてます」

 

***


ガーナ「なるほど。それであの大きな建造物を建築中という訳か」


エリーゼ「えぇ、久々に有意義な建造物ですから、仕事の際に度々立ち寄ってしまいます」


ガーナ「しかし、探してみれば随分と多いな、孤児の数は……なぜ今まで把握しきれなかったのかが気になるが……」


エリーゼ「彼らの主な生活方法は、スリや窃盗だそうです。兵士や我々から逃げてたんじゃないでしょうか?」


ガーナ「平和になっていくように思えても、表面上の話だけなのかも知れないな。バーバロア嬢はどうなさっている?」


エリーゼ「未だに孤児を集めてお菓子を配っています。前みたいに大々的に行っているのではなく、一人一人に手渡して歩いているみたいですわね」


ガーナ「立派なことだ。食堂の使用を許可するとお伝えしろ」


エリーゼ「はい。ありがとうございます」


ガーナ「孤児院ができたら伝えたい者が何名かいるのだが……また、複雑な気持ちだな、これは」


エリーゼ「どなたをお呼びしたいのです?」


ガーナ「セレア、解剖鬼、グリム殿、ハサマ様」


エリーゼ「一度に呼ぶのは難しいですね……」


ガーナ「思想は同じ筈だが、立場ややり方、環境が違う。国との戦争の縮図そのものだ。こればかりは致し方あるまい」


エリーゼ「少しずつでもわかりあえたら素敵なことですけどもね」


ガーナ「この孤児院には、どこかそういう啓示を感じさせるものがあるな」


エリーゼ「ショコラ様もさぞお喜びになることかと思われます」


ガーナ「あぁ、ようやくあいつらしい国になってきたようだ」


エリーゼ「本当に……」

【アイラヴ祭】普通という『個性』

紫電「それじゃ、またあとでな」


タオナン「ひとこ、気を付けなさいよ。あたし達もうプロなんだから!変な人についてっちゃダメよ!?」


紫電「気が早すぎだぜ!?まだ世間に出てないってのに」


ひとこ「あはは、うん、気を付けるね。行ってきます!」

 

 

 

 


紫電「……とは言ったけど、やっぱ心配だなひーちゃん……」


タオナン「何も小学生ってわけじゃないんだし、おでかけくらいで心配しなくたっていーでしょ」


紫電「いや、気のせいだと良いんだけどさ、その……ひーちゃんってもしかして、自分が目立ちにくいこと、気にしてるんじゃないかってさ……」


タオナン「……やっぱ紫電もそう思う?」


紫電「タオも?」


タオナン「自分らしい歌詞にって烈火が言ったとき、ひとこ、若干表情が曇ったのよね。あの子って結構、考え続けちゃうタイプじゃない?思考の輪から抜け出せないっていうか……」


紫電「前回、烈火さんの精霊ライブの後もさ、俺も落ち込んだけど、ひーちゃん程じゃなかったよ。繊細なんだよな、ひーちゃん……」


タオナン「あたし達が能天気すぎるっていうのもあるかもしれないけどね」


紫電「自覚はあったんだな……」


タオナン「でも、あの子は繊細だけど、逃げたりはしないじゃない。きっと解決してくるわよ」


紫電「そうだよな。俺たちはいつも通りにしてないと、かえって悩ませちゃうもんな」


タオナン「そうね。自然で行くわよ、自然で」


紫電「自然……自然……」

 

 

テイチョス「……??(タオナンが珍しく掃除をしている横で紫電が何故かジェンガをしている……何かあったのだろうか)」

 

 

***

 


ひとこ「心配させちゃったかな……はは、悪い癖だよね。すぐ顔に出ちゃうんだもんなぁ……」


『ファンが聴きたいのは、うまい歌じゃなく《個性》。自分らしさを歌詞にすること。特に……いっこちゃんはね』


ひとこ「烈火さんはずっとわかってる。まだ、私は何にもなれてなくて、何かになるのが怖いんだ……。でも、デビューっていうのは『アイドルになる』ってことだから……。私も何かにならなきゃいけない……」


『天帝はみんな、《この分野において誰にも負けない》という何かをもっておる』


『負けん気なら誰にだって負けないわ!!』


『俺は鬼だから、どんな無茶だってついてくぜ』


『この歌の続きを、私はいつか歌いたい』


『僕にも夢があるんだ。決めていたことだから』

 


━━ひとこは、なんでアイドルになったの?━━

 


ひとこ「……っ」


ひとこ「(二人の足を引っ張るだけかもしれない……。ただアイドルになってみたかったって、ただ、天帝を近くで観たかったからって、生半可な気持ちでここまで運良くやってきて……。私、馬鹿だ……。後悔したって、もう退けない……)」


ひとこ「……ぐすっ」

 


ひじき「あらあら、たまに外の空気を吸いに来てみれば、良いことあるものねぇ。道に迷ったのかしら?」


ひとこ「……!!あ、あなたは……!?」


ひじき「あら、あなた、レンくんと一緒にいたひとこちゃんじゃない。どうしたの?こんなところで独り泣いちゃって」


ひとこ「ひ、ひじきさん……!?あ、あのっ、これはその……」


ひじき「ほら隠さないの。気にしなくていいわ、作ってる笑顔なんかよりずっと素敵な顔なんだからぁ。とりあえず、上がんなさい?」


ひとこ「え、あの、ここに住んでるんですか……?」


ひじき「そうよ。凄いでしょう?」


ひとこ「(お、おんぼろのアパートだ……)」

 


***

 

ひじき「何か飲む?お酒はダメな年齢よねぇ……あら、大変、一番新しいジュースが賞味期限4か月前だわぁ……」


ひとこ「あ、おかまいなく……(少女漫画の上にカップ麺の容器……爪切りと綿棒……マスカラ……?)」


ひじき「こぶ茶しかないけど、ごめんなさいね。多分大丈夫だから、多分」


ひとこ「す、スゴく、変わった生活されてますね……」


ひじき「女性なんてみんなこんなものよぉ。見た目ばっか綺麗でも仕方ないわ。ありのまま生きたら、トップアイドルなんて言われててもファンたちと何も変わりない。どうでもいいものねぇ、私生活なんて」


ひとこ「で、でも、もし何かでこんなところ見られでもしたらまたスキャンダルになっちゃうんじゃ……」


ひじき「わたし、隠してないわよぉ?普通に配信してるし、部屋の写真何枚もブログに載せてるもの。ファンも知ってるわよ、良く怒られるけどもね、掃除しろダメ女って」


ひとこ「えぇ!!……なんてメンタル……」


ひじき「そーれーよーりっ、何か悩んでるんじゃないのぉ?隠してないで吐いちゃいなさいよ。気になって仕方ないわ」


ひとこ「そ、そんな、ひじきさんに迷惑かけるわけには……」


ひじき「迷惑どころか、楽しみで呼んだのよ。蜘蛛に捕まった蝶々らしく、観念しなさいな」


ひとこ「……その、私……今度ユニットの曲でデビューすることになったんです」


ひじき「あら、凄いじゃないその若さで。余程期待されてるのねぇ」


ひとこ「でも、三人組の中で、私だけが影が薄いんです。個性もなくて、でも、その曲の歌詞を自分らしいものに変えなくちゃならないんです……」


ひじき「(烈火が作曲してるというのは知っているけれど、また酷な課題を出しちゃうんだからぁ、あの子ったら……)」


ひとこ「私の個性ってなんでしょうか……私に個性なんてあるんでしょうか……私は……」


ひじき「個性って、どういうものかしらね。ひとこちゃんはどんな子が『個性がある人』だって思うの?」


ひとこ「えっ……そのっ……例えば……特徴的で覚えやすくて……」


ひじき「ふんふん……」


ひとこ「一言で言えばコレっていう、何かがあって……」


ひじき「なるほど?」


ひとこ「みんなから注目されてるような……そんな人です」


ひじき「じゃあ、ひとこちゃんは自分の事を一言で言えばなんなのかしら」


ひとこ「わ、私ですか……?えっと……『普通』っていうか……」


ひじき「それなら、試しにちょっと電話してみましょうか」


ひとこ「電話……?誰にですか?」


ひじき「あなたの『ファン』達に、ね」ピポパ


ガチャ


烈火『しのっち?どったのいきなり。お金は無いよ?』


ひじき「ごきげんよう烈火。ちょっと聞きたいのですけどぉ」


烈火『なぁにぃ?お金は無いよ?』


ひじき「あの新人アイドルの、『フツーの子』いるじゃない?なんて名前だったかしらぁ……」


烈火『ひとこの事?ま、まさかしのっち!あたしのいっこちゃんにまでタカろうってんじゃ』プツ


ひじき「危なかったわねぇ」


ひとこ「あ、あの……一体……(お金……?)」


ひじき「まだわからないかしらね。それなら次は……」ピポパ


ガチャ


常務『なんだひじき。給料は一昨日払ったばかりだろう』


ひじき「常務さん、お疲れ様です。一つお聞きしたいのですけどぉ」


常務『先に言っておくが前借り制度は一昨年に廃止している。なんだ?』


ひじき「最近のぉ、あの『フツーの子』いるじゃないですかぁ。」


常務『霜月ひとこのことか。あまり他アイドルの情報をお前には言いたくないんだがな。それより貴様、この事務所宛の大量のピザの請求書は一体なん』プツ


ひじき「間一髪だったわねぇ」


ひとこ「(請求書……?)」


ひじき「もう、鈍いわねぇ。片っ端からかけるわよ?」ピポパ


ガチャ


レン『普通?ひとこの事かなぁ。ところで、この前の打ち上げの代金が君だけ1000円足りないと思うんだけど』プツ


こはね『フツー……多分ひとこ……ちゃんと名前で呼んであげてほしいの……私にも気持ちわかるから……あと……毎回お財布もちゃんと忘れず持ってきてほ』プツ


セレア『ひとこをフツーと呼ぶでない!気にしてるかも知れないのじゃ!!それと、わらわのグッズ転売してるのっておぬ』プツ


ひじき「どう?わかった?」


ひとこ「フツーと言うだけで……私だってみんなすぐ気づいて……」


ひじき「そう。『普通といえばひとこ』って、みんなはすぐにあなたを思い浮かべるわ。『普通』があなたの『個性』なんだもの」


ひとこ「普通が個性……考えもしませんでした……でも、それって良いことなんでしょうか……普通って……」


ひじき「順序がぎゃくなのよ、ひとこちゃん。人って言うのはね、『覚えたい』と思うから『覚える』の。普通っていうのはただの『あだ名』よ。あなたはその前から魅力的で、魅力的だから注目される。そのあなたの魅力に名前をつけるとしたら、『普通』という名前が付くだけよ。あなたが普通なんじゃない。『普通があなた』なのよ。まだ難しいかしらね……」


ひとこ「普通が、私……普通という魅力……あの、ひじきさん……私は、普通のままのアイドルで良いんでしょうか……」


ひじき「良いのよ。むしろ、あの二人とずっといるのに普通でいられるなんて、逆に普通じゃないわ。凄いことなんだから。そのままが一番素敵。でも、頑張んなきゃダメよ。普通でもね」


ひとこ「はい……!ありがとうございます……なんだか、胸が軽くなった気持ちです!!」


ひじき「(薄いものね)」


ひとこ「あの、……また悩んだら相談してもいいですか……?」


ひじき「良いわよぉ。お菓子持ってきてくれたらね」


ひとこ「はい!!」

 


***

 

 

ひとこ「ただいま!!」


紫電「はうっ!!」ガラガラ


タオナン「やだ、紫電!!そこ拭いたばかりなのに埃たてないでよ!!今ワックスかけてんのよ!?」


ひとこ「……ふたりとも何やってるの?」


紫電「な、何って、いつも通りジェンガだぜ!?なな、何も心配してないぜ!ひーちゃんは安心していい!!」


タオナン「そ、掃除よ!!文句あんの!?いたって変わりない日常じゃない!!気楽にくつろぎなさいよ!!」


ひとこ「……??」


テイチョス「なるほど、分析が完了した。恐らく二人は落ち込んでいるひとこに気を遣ってあえて負担にならないよういつも通り過ごそうとしているが、『無意識』を意識したことにより本来小脳で行動していた原理を改めて疑ってしまい、『いつも通りとは何か』を思考した結果、各々の考える『いつも通りという状態』を『再構築』し、全くいつも通りでない行動をとってしまっている、というわけだろう」


タオナン「な、テイチョス!?馬鹿!!なんてデリカシーがないアルファなの!?」


紫電ジェンガはみんないつもやってるもんじゃないのか!?し、知らなかった……」


テイチョス「私の判断によると、タオナン、君たちの行動は85%を上回る確率で逆効果だ。まだサンドバッグを叩く方がいつもの君らしく見える筈だが……」


タオナン「な、なんですってー!?」


ひとこ「……ぷっ」


紫電「ひーちゃん、これにはわけがあって……あ!!」ガラガラ


ひとこ「あっはは!!なにそれ、変なのー!!ははは!!」


タオナン「わ、笑わなくたっていいじゃない!!なし、今日のは無し!!」


紫電「……はは、やっぱひーちゃんがいて、これがいつも通りだよな」


タオナン「……まぁ、そうね、むしろ、なんかこっちが安心したわ……。なんでこの私が掃除なんかしなきゃなんないのよ!」


ひとこ「ねぇ、みんな。私って『普通』かな?」


タオナン「ひとこ?」


紫電「ひーちゃん……」


ひとこ「ひじきさんが言ってたんだ。『普通』が私の個性なんだって」


紫電「……うーん、俺はひーちゃんを普通だとか思ったことはないけど……でも」


タオナン「うん、とりあえず今日でわかったことが一つあるわね」


テイチョス「そうだな、君たちは……」

 

 

 

『三人一緒が『普通』だってこと!!』